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『異世界狂騒録』~兄妹揃って異界に飛ばされたので好き勝手に生きる~  作者: 御星海星
不死と戦友と死と

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戦線と空元気と荒療治と

ダンシングダンシング

「……………おい、これどういう事だ」

「そのままの意味だよ」


 振り返れば沈痛な面持ちの魔王様。

 魔王様に、目線で続きを促す。


「前線に支援に行ったアヴィンが勇者パーティーと戦闘し死亡した。勇者パーティーは現在、展開された戦線を突破。都市部付近に接近しつつある。よって5日、予測される行軍ルートに強襲部隊の残存兵力を集結させ一気に叩く。今の所言えるのはこれぐらいだね」


 そう言い残し、足早に去っていく魔王様。

 耳鳴りがした。

 理解が追い付かない。 


「…………………ねぇ、お兄ちゃん」


 アヤメに服の袖をつままれる。


「ギンカちゃんの様子を見てきてくれる?知らせが届いてからずっと引き籠って…………………」


 ギンカか………確かに心配だな。

 病んでいなければいいが。


「わかった、行ってくる」


 頭の中がズキズキ痛む。

 ……………こういう時は、とりあえず何か働くに限る。

 現状の整理すらできないままギンカの部屋に向かった。





















 戸が閉められた部屋の前に立ち、ドアをノック。

 返事は無し。

 ノブを捻り入ろうとして動かない。

 鍵が掛かっているのか。


「………………飯、置いておくからな」


 持ってきた食事を扉の前に置いて帰った。














「ギンカさんの様子、どうでしたか?」


 おずおずと尋ねてくるリリアナ。

 やっぱり心配なんだろう。


「部屋に引きこもってた。しばらく様子を見た方がよさそうだな」

「そうですか……………」

「…………ねぇ、お兄ちゃん。私、何かした方が」

「……………少なくとも、今は何も出来ないだろうな」


 あからさまに落ち込むアヤメと、不安げな顔のリリアナ。

 俯くリリアナの肩を叩き、自室に戻る。

 こういう時に、気の利いたセリフの一つも言えない自分が恨めしい。















「という訳でギンカを何とかしよう」

「唐突だね、お兄ちゃん」

「急すぎないですか?」


 翌日、机を囲んで席に着き意見を交わす。

 ブレインストーミング準備よし。


「天の岩戸でもすればいいんじゃないかな?リリアナちゃんに天野鈿女役でもして貰ってさ」

「落ち込んでる奴の前で騒いでも逆効果だろ。それに、リリアナにアマノウズメ役をさせるのはアウトだ」


 音速で破綻した否定しない会議(ブレインストーミング)

 仕方ないか。

 ……………まぁ、リリアナ扮するアマノウズメノミコトは、少しばかり見てみたい気もするが。


「あの、アマノウズメ?って何ですか?」

「全裸ダンス?」

「ええぇ!?」

「語弊が酷すぎるぞ。………あまり間違ってもいないが」

「えええぇぇ!?」


 困惑するリリアナを放置してさらに話し合う。

 紛々糾々する会議。

 その結果………………


「…………これがアイデア一覧ってことでいいよな?」


 羊皮紙に箇条書きにされ、纏められたアイデア。


「其一、放置。下手に刺激するよりマシだと思いたい。其二、天岩戸作戦。上手く出てこなければリリアナが無駄に恥を掻いて終わるのでリスク大。其三、冒険者の伝統に則り、蹴破る(キック・オープン)。確実に出てくるが、その後使い物になるかは未知数。其四、N〇R。寝込みを襲って〇〇〇から○○してさらに○○○○してうやむやにする。……………………アヤメ、後でちょっと話し合おうか?」

「なんで!?」


 ただ実際、ろくでもないアイデアばかり。

 何故だか其四がまともに見えてきた。

 ………………………わざと明るく振舞ってないとやってられないと思う気持ちも理解できるし、仕方ないか。


「もう様子見でいいんじゃない?明日になってから考えればいいんだし」


 そんなことを口にするアヤメ。

 間違ってはいないが解決もしない。

 ………………ハァ。


「今日の所はもうこれでいいか………めんどくせぇ」

「レンさん!?」

「ちょっと、お兄ちゃん!?」


 皆を放置し部屋に戻った。

























「レン君、ちょっと相談があるんだけどいいかな?」


 魔王様(上司)からの出頭命令。

 魔王からは逃げられない。

 渡り廊下を通り過ぎ、連れていかれたのは豪華な応接間。


「単刀直入に聞くけど…………娘の授業参観にどんな服着ていけばいいと思う?」

「帰りますね」

「冗談だよ!?」


 焦る魔王様。


「いや、本当にびっくりしたよ………まさか真に受けるとは……………」

「で、話って何ですか?」


 席に着き先を促す。


「あと二日しかない」

「は?」


 にっこりと笑いながら言う魔王様。

 ちょっと待てそれは聞いていない。


「連中の侵攻が予想よりハイペースでね?このままだとあと二日ほどで街に侵入される。だから君に頼みたいんだ」

「………何をですか?」

「ギンカをまともに動くようにしてやってくれ。手段は問わない」

「……………正気ですか?」


 俺が呟いた瞬間、部屋の空気が重くなった気がした。

 いつも通りの笑みを浮かべる魔王様。

 澱んで朽ちたような圧迫感と、背筋に氷柱を突き込まれたような悪寒。


「勿論、今の発言がヒトとして最低なことは重々承知の上だ。…………でもね、相手はあのアヴィンが多対一とは言えその命を落とすような相手。戦力は多い方がいい。さっきも言ったけど何をしてもいいよ。脅迫、洗脳、奴隷、薬物投与……………君の場合なら、眷属化を使ってもいい。何でもいい。責任は僕がとる。………………僕は魔王だ。この国の土地を、資源を、そして何よりもこの国に住む人達を守る義務がある。この国にとっての最良を尽くす義務がある。()()()()()()()()()()()だ」


 少しも表情を変えずに笑顔のまま言う魔王様。

 それはこの人が魔王であるが故か、それとも別の何かか。

 …………なんにせよ。


「…………分かりました、出来るだけ平和的に何とかします」


 日本人らしく曖昧に答える。

 …………………恐らくだが、この人は冗談でも脅しでもシャレでもなく、なんでもやる。

 目的を達成する為に、あらゆる手段を以て対する類の人だ。

 洗脳だろうがヤク漬けだろうが、どんな手でも、躊躇いなく使う。

 それも、俺には想像できない外法で。 

 なら、せめて。


「頼んだよ」


 頼まれた。






















「……………ねぇ、お兄ちゃん。手斧(ソレ)、何に使うの?」

「こじ開けるんだよ」

「あっ、あの、レンさん。流石に強硬手段すぎる気が」

「うるせぇ黙ってろ」

「…………酷くないですか」


 しょんぼりするリリアナをよそに、軍支給の斧を構える。


「おい、入るぞ」


 声を掛けるも返事はなく。

 ある意味予想通りの反応。


「…………よろしい、ならばクリーグだ」

「お兄ちゃん!?」


 気分はまさに少尉殿。

 手を振りかぶり、ドアに叩き付けぶち割る。

 頭の中に『修繕費』と書かれた横断幕が流れるが、振り払い室内へ。

 責任は魔王がとる。

 締め切られた厚手のカーテンに、癇癪を起こした子供が暴れたかのように、散らかされぶちまけられたクローゼット。

 ベッドの上で無様に丸まった人影から毛布を剥ぎ取る。


「……………ねぇ、入ってこないで?」

「反応おせぇよ」


 死んで腐った魚の様な、収縮した瞳孔でこちらを朧げに見つめるギンカ。

 気にせずに一方的に話す。


「明後日、対勇者パーティー戦線を作り連中の進軍を食い止め撃破する。お前も参加しろ」

「…………………」

「なんか言えよ」


 黙りこくったままのギンカ。

 イライラしてきた。


「………で………に………………」

「あ!?」

「ねぇ、なんで私がこんな目に合わないといけないの?」

「甘えんな」


 頭の辺りでナニカが切れる音が聞こえた。


「血縁全員死んで、一人で妹育てて、ジリ貧の中異世界に飛ばされて、人ですらなくなって歯ぁ食いしばって空元気撒いて生きるのと、どっちがマシだ?たった一人顔見知りが死んだだけだろうが。その程度で不幸自慢してんじゃねぇよ」

「………うるさい」

「うるさいのはどっちだ?腑抜けてたら周りの人が皆優しくしてくれると思うなよ?」

「私はそんなこと思ってなんか」

「いいから黙ってろよ!!!」


 片手で顎を掴み、押し倒し、馬乗りになった。

 喉に手を回して両手で体重をかけ、全力で首を絞める。


「っあっ、っがっ…………苦しっ………」


 惨めに悲鳴を上げ喘ぐギンカ。

 はらわたが煮えくり返る。


「死んだ人間が還ってくるような奇跡なんてねぇんだから、しゃがんで泣き喚いてないで動けよ!死んだ奴に生きてる奴が出来る弔いなんざ、その程度だろうが!!!」


 実際、俺はそう思って今までやってきて、だからこそ何もしないコイツが気に喰わない。

 何もせず、動こうともせず、ただ黙って待っているだけのコイツが。

 これまでの俺を否定するような態度が、許せない。


「何もしたくないなら、いっそ、この場でぶち殺してやるよ!!そうして欲しかったんだろ!?なぁ!!」


 万力のような膂力で、細首を絞め上げる。

 屠殺されるガチョウのような嬌声が、惨めに響く。

 顔が鬱血し、青から紫に変わり………………


「ァァアアアァアアアアァァァァ!!!」


 詠唱の形すら成さない、ただの咆哮。

 祈禱に似たソレが唸りを上げ、吹き飛ばされる俺の頭。

 漸く動いたか。


「ッ、殺す!!」

「やってみろや、甘ちゃんがよぉ!!!」


 互いに激突し、ぶつかり合い、部屋の壁を吹っ飛ばして砕き、室外に転がり出る。

 沈む太陽に照らされて、黄金色に輝く訓練場。

 夕暮れ時の河川敷とはいかないが、友情を結ぶ殴り合いをする気は無い。

 野獣の如く四肢をつき、こちらを睨みつけるギンカ。

 やっと本調子に戻ってきた模様。

 スロースターター過ぎるんだよ、この甘えん坊が。

 虚空から取り出した太刀を振り翳し、八双に構える。

 殺意を滾らせ、腕を構えるギンカに大太刀を向け、突撃し─────────

























「クッソ、いい加減、倒れろ!!」

「俺の勝ちだな」


 組み伏せ、地面に転がしたギンカを見下ろす。

 往生際悪く、ジタバタと暴れていた体が動かなくなった。


「ようやく落ち着いたか、この御転婆娘が」

「重いから退け」

「わかったよ」


 関節を極めていた腕を緩め、差し出された手を取って立ち上がらせる。


「………正直言って納得していないし、もう2,3発ぶん殴ってやりたいけど………………」

「おい」

「……………でも、ありがとう。だいぶスッキリした」


 若干頬を赤らめて、そんなことを言うギンカ。二人揃って部屋に帰った。

















「……………ねぇ、お兄ちゃん?流石にいきなり罵倒して首を絞めるようなプレイはアブノーマル過ぎると思うんだ」

「ショック療法って奴だ」

「あの、さすがにその………プレイが、過激すぎるかと」

「ちがうからな?」

「……………普通は落ち込んでる人に向かって罵倒したり首を絞めたりしない」


 痛かったし、と首に出来た手形をさすりながらジト目で言うギンカ。

 それが狙いだったんだけどな。

 6割くらい本気でキレてたけど。


「取り敢えずアヴィンの仇には地獄を見せる。手始めに玉でも潰す」

「酷いなオイ」


 …………まぁ、仇討ちは徹底的にやるべきだろう。

 四人で作戦を練りながら、当日を待った。







DA☆DA☆DA☆DA

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