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『異世界狂騒録』~兄妹揃って異界に飛ばされたので好き勝手に生きる~  作者: 御星海星
不死と戦友と死と

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敗北と新技と蟷螂と

遅くなったんゴ

 魔王城特殊教練場にて、鉈を振り回し飛んでくる黒い腕を叩き斬る。

 殺意高いな。


「ちっ」

「お前行儀悪いな」

「うるさいッ!!【ぶっ潰す】!」


 殺気の籠った一撃を躱し突撃、大上段に振り翳した鉈を叩き降ろすも、見事に空振り。


「これ訓練だよな?」

「イライラする。アヴィニウムが足りない」


 謎物質の不足を訴えるギンカ。

 それを俺に言われてもなぁ。


「頑張れギンカちゃん!お兄ちゃんなんかボコッちゃえっ!!」

「裏切られたッ!?」


 横から割と酷い応援をするアヤメ。

 泣きたくなってきた。


「隙あり」

「ホアアァァ!?」


 かちあげられる俺。

 真下で得物(黒く干からびた腕)を振り切ったギンカの姿。

 奇怪に節くれ、肥大化したそれが俺を押しつぶすかのように構えられ………………


「【叩き殺す】!!」


 ミンチになった。




























「私の勝ち。文句はないよね?」

「だぁああぁクッソ負けた!!」


 血だまりの中で仰向けに突っ伏し、悲鳴を上げる。

 そんな俺を奇妙なものでも見るような顔で眺めるギンカ。


「お兄ちゃんこういう時かなり悔しがるよね?」

「負けた時に敗北を認めず悔しく思わない奴は成長できない。爺さんが言ってた」

「へ~、そんなこと言ってたんだ。まぁでもお爺ちゃんらしいか」

「ちなみに自分が将棋で惨敗した時には無かった事にしようとしてた」

「マジ?」

「……………身内にしか通じない話をするのはやめてくれない?」


 ジト目のギンカ。少しばかり怖いな。

 ハイライトが消えかかってる。

 …………それ以前にギンカに負けたのってコレが初めてなんじゃ………実力の差が無くなってきている。

 早急に手を打たないと。


「…………必殺技が欲しいな」

「………馬鹿なの?」

「うるせぇ黙ってろ」

「あ゛ぁ゛ん?」

「お゛ぉ゛ん?」


 ギラリと剣呑に睨みつけてくる、蒼い瞳。


「皆さん、ご飯できましたよ?」


 もうそんな時間か。

 ふと上を見れば、天頂で燦々と輝く核融合最大出力の太陽。

 大人しく部屋に戻った。






























「今日はカレー?」


 部屋に入った途端、漂ってきた香辛料特有の香気に目を見開くギンカ。


「リリアナの故郷の郷土料理らしいぞ?」

「亡くなったお母さんがよく作ってくれて………それで………………」


 涙ぐむリリアナを放置して、そそくさと席に着き手を合わせ、おもむろにカレーを食べ始めるギンカ。

 こいつ酷いな。

 主に人間性が。


おふぃいひゃんふを(お兄ちゃんも)、ムグッ、ふぁひゃふ(早く)ふぁえなひょ(食べなよ)

「汚い」

「行儀悪いぞアヤメ」


 口に食べ物を入れたまま喋るな。

 溜息を零し食卓に着いてカレーを食べる。

 やっぱり美味いな。

 謎の安心感。

 故郷の味がする。

 だけども………………


「やっぱり福神漬けが欲しいな」

「?、何ですかそれ?」

「福神漬けってのはな……………」


 困惑するリリアナに、福神漬けがどんなものなのかを大雑把に説明する。


「そんなものはなかったと思います」


 嘘だろおい。


「私が作ろっか?」


 そんなことを言うアヤメ。


「レシピ知ってるのか?」

「トライアンドエラーで」

「やめてください本当にお願いします」


 どうしてこうなった。

 騒々しい昼食を終え、各自休暇をとった。





























 薄暗い夕暮れ時の荒野に一人佇む。

 何でも『狂乱蟷螂(クレイジーマンティス)』なる魔物が団体で来たので、近隣の住民から討伐依頼が出たそうな。

 少し離れたところでたむろするそれっぽい影。

 きっとあれだな。

 今回の任務に関しては、いつかの地龍戦で新しく覚えてから放置していた白鯨式の試運転を兼ねているのだが……………

 脳裏に手に入れていた技の一覧を思い浮かべる。


 白鯨式LV4喰剣:消耗を対価に自身の攻撃性能の一時的な強化。


 白鯨式LV5崩突:一直線上に消耗に応じて威力の上がる高火力攻撃。


 白鯨式LV6聖餐:任意の範囲に高威力攻撃。なお、範囲を絞ればその分出力も上昇する。





 うん、癖が強い。

 見ただけでわかる扱い難さ。

 『消耗』という不穏な単語。

 だがそれでも、いざというときに「ガス欠で使えません」などと言われるよりはマシだと割り切って、腹を括り意識を集中させる。

 自然と口から零れ落ちるように紡がれるのは呪詛か祝詞か。


「『荒む顎』『満ちぬ胃袋』『飽くなき貪食』『その業の一端を』『汝が眷族に授けたまえ』────【喰剣】」


 ごっそりと何かが抜けていくような感覚と共に、淡く銀白色の光を帯びる大太刀。

 全力で突っ込み蟷螂に刃を振り下ろす。

 手応え、無し。

 ごっそりと抉れた蟷螂の死体。

 攻撃性能は上がってるな。

 そして何故か後ろで、真っ二つに断ち切られて死んでいる蟷螂。

 攻撃範囲も広がっているのか。

 そしてズルズルと引き摺られるように力が抜けていく。

 これはマズいな。

 さっさと蹴りを付けないと。

 若干焦りながらカマキリーズを切り捨てる。

 今のうちに他の技も試しておこうと、【聖餐】を使おうして、ゾクリと脊椎と脳髄に氷柱を突き込まれたような悪寒。

 やめておこう。

 嫌な予感がする。


「お、ッラアアアァァ!!」


 雄叫びをあげ蟷螂を伐採し、吹き飛ばす簡単な作業。

 そして疲れが酷い。

 飛び掛かってくる蟷螂を斬り──────────危険を察知。

 全力で横に跳ぶと同時に、俺の横の地面を消し飛ばしながら放たれた、金色に煌めく光線。

 その発射先を見れば煙を上げながら倒れ伏す蟷螂。

 恐らくは、自爆覚悟の特攻技。

 お前らカメ〇メ波撃てたんか。

 空を飛んできた一匹を撃墜し、全力で体を捻じり呼吸を整え………………


「【乱れ牡丹】からのッ【螺鈿蓮彫り】!!!」


 一気に周りの蟷螂を薙ぎ切り爆殺する。

 初っ端から割と不毛の荒野っぽかった荒野がさらに酷くなっているがどうでもいい。

 袈裟切りに振るわれた鎌を刎ね飛ばし、渾身の前蹴り。

 体勢を崩した瞬間を狙って突き、一刀両断。

 背後へ裏拳を叩きこみ、カマキリを斬り上げる。

 全力で踏み込み、当身をかます。

 すり抜けながら腹を裂き、斬り返して割断。

 そのまま蟷螂を殲滅しミッションコンプリート。

 喰剣を解除し太刀を仕舞い一息。


「さて、もう帰っ?」


 視界が揺らぎ立っていられなくなる。

 膝から崩れ落ち倒れ込む。

 腹の虫の渾身の咆哮が夜の荒野に響いた。

 瞼が重くなり、そして。









1日が300時間にならないかな。

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