蝙蝠と空とボスと
クソッ……!!短すぎるッッ!!!
「これで4徹、記録更新だな。くそったれがッ!!」
「何言ってるのお兄ちゃん?」
「早く行こう、休みたい」
暢気な会話を交わし軍の竜車に乗り込む。
向かう先は懐かしき地龍の迷宮近辺の林道。
魔王様曰く、「ただの蝙蝠駆除」らしいが……………………
「嫌な予感がするなぁ」
「そう?楽な仕事でしょ?」
「蝙蝠ならただの雑魚。魔物でもすばしっこい雑魚。つまり問題は無い」
「フラグを立てるな」
竜車に揺られながら現場に向かった。
空に広がる黒い影。
ギィギィと甲高い不快音を奏でるそれらの群れ。
緑色の甲殻に覆われ、一対の翼と鋭い針の生えた尾を持つそれは俗に言う飛竜。
「どこが蝙蝠だ」
「蝙蝠じゃん」
「これは蝙蝠。異論は認めない」
死んだ目のチビッ子コンビ。
どうやらアヤメとギンカの二人には、コレが蝙蝠に見えるらしい。
………もう既に帰りたい。
そして上空からばら撒かれる火の玉。
上からの射撃という、どこぞの空の王者を彷彿とさせる行動。
閃光玉ないかな。
「アヤメ、撃ち落とせるか?」
「ゴメン、狙っても当たらないと思う。ギンカちゃんは?」
「ムリ、射程が足りない。当たっても殺せない」
「クソが!!」
遠距離攻撃が当たらない状況で空を飛ぶ魔物を群れで相手するという、クソみたいなシチュエーション。
閃くイメージ。
唸るは金色に輝く灰色の脳細胞。
「………ギンカ、俺をあの高さまで投げれるか?」
「なるほど、エサになると」
「いや、撃墜しまくる」
「………とうとう気が狂った?」
憐れむような目で俺を見るギンカ。
まともな提案だと思ったのだが………
「いいから、早く頼む」
「わかった、一応報告書には名誉の戦死って書いておくから」
「死なないからな?!」
「【ぶん投げる】!!!」
不可視の手に掴まれ、投擲される。
風圧の中、虚空から槍を出し振りかぶり、射程圏内に入ったワイバーンの側頭部に横刃を埋める。
ぐらりと傾く背中に着地し身体強化。
顎門から放たれた火炎球が着弾する前に跳躍し離脱。
近くのワイバーンの片翼をすれ違いざまに切断し、空歩を発動、真下目掛けて槍を突き降ろし脊椎を破壊。
足場にして助走をつけ眼前の一体に躍りかかる。
頭の上に飛び乗り、槍を大きく回して首を斬り落とす。
石突を打ち下ろし、棒高跳びの要領で跳び回転の勢いを乗せて振り下ろし、頭部を打ち砕く。
仲間の惨状に翼を翻し、逃げ出そうとした奴の背中に飛び移り、槍を太刀に変化させ力を溜めて。
「【螺鈿蓮彫り:飛円】!!」
広範囲に炸裂する斬撃をばら撒く。
次々と撃墜されるワイバーン。
空中に描かれる赤い血の爆発。
汚ねぇ花火だ。
そして腹が減った。
ぶっつけ本番で使うもんじゃないな。
踏み台にしていたワイバーンの翼を一息に割断し離脱、わざと残しておいたラスト一頭に、空歩で接近して──────吹き飛んだ。
爆発の勢いに巻き込まれ、地上へ落下する俺を睥睨する巨影。
大体のシルエットは似通っているが、今まで蹴散らしてきた連中とは明らかに格が違う。
周りの取り巻きをはるかに上回る巨体や、額に生えた3本角。
夜の暗がりにも似た黒紫色から判断して、恐らくは群れのボス。
状況把握を終え、身を翻し、適当な木の枝につま先立ちで着地(着木?)し、渾身の力を込めて跳ぶ。
大太刀を肩に担ぐように構え、薙ぎ払うも空振り。
ニヤツくワイバーン。
クソうぜぇ。
空歩を発動し向きを変え再跳躍、すれ違いながら足の爪を切り取る。
俺の脇腹から内臓がはみ出た。
交差時に狩られたか。
刀じゃ分が悪いか。
遺憾ながら槍に変更し、近くの個体を足場にし空中で待機。
視界の端に映るのは、編隊を組みこちらに飛来するワイバーンの群れ。
面倒になってきたな。
ボス一体に雑魚のおまけ付きは、きつ過ぎる。
「早いこと片付けるか」
独り言を零し、槍を大きく振るい正眼に構え突撃。
下から悲痛な悲鳴が聞こえるのは気のせいだろう。
空歩を使い急加速を掛ける。
ボスの首を手で掴み、片腕で槍を逆手に持ち額に穂先をぶっ刺す。
高周波じみた悲鳴を上げるワイバーン。
即死はしないか。
ならば。
「【柘榴】!」
突き立てた刃から無数の赤黒い弾丸が迸り、飛竜の脳髄をグチャグチャに掻き混ぜ、頭蓋を吹き飛ばす。
大きく揺れて落下するワイバーンの死体に乗って地上に帰還。
上空で喚く雑魚の群れ。
この後あれを片付けるのか………………めんどくさいが仕事だし仕方ない。
体勢を立て直し突き進もうとして、直下から膨れ上がるプレッシャー。
空歩で逃げようとするも時すでに遅し。
紅い光が炸裂し俺の横を通り過ぎた。
一瞬のうちにして炭化する雑魚たち。
良かった、アヤメにも俺を狙わない程度の良識が。
「…………チクショウ」
緩やかに弧を描くように旋回する極光が俺に迫っていた。
「なぁ、あのタイミングで撃つ必要あったのか?」
「長引きそうだったからつい」
「お前なぁ………………」
草原に倒れ伏した俺と覗き込むアヤメ。
気が付いたら草原で倒れていて死ぬほどビビった。
恐らくは灰になって、風に飛ばされてここに来たのだろう。
災難にもほどがある。
「ねぇ今どんな気持ち?どんな気持ち?」
「頼むから煽るのやめろ」
「君が泣くまでやめない」
「ふざけるな」
「早く帰るよ?リリアナちゃんがご飯作ってくれてるから」
いつになく急かしてくるアヤメに引っ張られて帰還した。
動画?きっ君ガナニヲイッテイルカワカラナイヨ
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