戦いと森と三徹と
惨徹
駄目だった。
ぜんっぜん駄目だった。
むしろ、いつもより酷かった気さえする。
戦場を駆けまわりヘイトを全てこちらに擦り付けてくるリリアナに、俺の事を全く考えずに撃ちまくってくるアヤメとギンカ。
リリアナが魔物を誘導し、ギンカが広範囲攻撃で足止め。
トリガーハッピーと化したアヤメが殲滅する、完璧な布陣。
………その対象が俺でなければ。
後ろから爆撃に巻き込まれて死ぬ雑魚敵の気分が味わえた。
そんなもの知りたくなかったよ。
「お兄ちゃんもっとしっかり敵を引き留めてよ。狙いにくかったじゃん」
「職務放棄はクソのやる事」
「レンさんこれ運ぶの手伝ってくれませんか?」
「なるほど、コレがオーバーワークか」
愚痴を吐きながら魔物(角の生えたゾウ)の死体を身体強化を使って引っ掴み持ち上げる。
そのまま肩に担ぎ歩き出す俺。
正直だいぶキツイが耐えれるのでセーフ。
全身から聞こえてくるミシリとかミチリとかいう音はきっと幻聴だろう。
「早く帰ろ?お兄ちゃん」
「早くしろ日が暮れるぞ」
「ならお前が運べよ」
「「…………………」」
途端に目を背ける二人。
大っ嫌いだ。
そもそもギンカの【手】ならこれくらい持ち運べるだろうし。
「ギンカ、お前ならこれくらい運べるだろ?」
「ムリ、疲れたからやりたくない」
そんなことを言い、わざとらしく「あ~疲れた疲れた」などと嘯くギンカ。
マッハでたまるストレス。
…………よし、わかった。
そっちがその気なら、こっちも考えがある。
「お前、飯抜きな」
「?!」
豆鉄砲に撃たれた鳩のような顔をするギンカ。
当たり前の事だろうが。
「待って言い過ぎた謝るからだから」
「一度言った言葉は取り消せないって知ってるか?」
「嘘だッ!!」
膝から崩れ落ちるギンカを傍目にキャンプに帰った。
分厚く切り取ったゾウ肉の味噌焼きに齧り付き咀嚼する。
硬いゴムのような嚙み心地。
意外に美味いな。
そして量が多いから、かなりたっぷり食える。
思う存分腹に詰め込み一息。
ふと視線を感じ前を見れば、引き気味の顔をこっちに向けるアヤメとリリアナ。
何故だ。
「……………ねぇ、なんでこの硬さのお肉をそんなスピードで食べれるの?」
「レンさん、顎を大事にしてくださいね?」
「大丈夫だろ」
ちびちびと肉を齧る二人。
肩を叩かれる感触。
振り向けば案の定涙目になりかけているギンカ。
「………ねぇ。私に慈悲は」
「ないな」
「せめて肉片ぐらい」
「ない」
ぐずりだすギンカ。
責めるような周りの目。
めんどくせぇな。
立ち上がり、収納袋からあるものを持ってくる。
丁度弁当箱と同じぐらいの大きさの金属製のボックス。
「それなに?」
「携帯食料。あるだけマシだと思え」
「あの、お肉は」
「あるわけないだろ」
「……………グスン」
半泣きのまま携帯食料を頬張るギンカ。
相当マズいのか、青褪めた顔で震えている。
「ギンカちゃん、私の分あげようか?」
「あっ、ありがとう!!」
満面の笑みを浮かべるギンカ。
現金な奴だな。
そして訪れる緊迫の時間。
「それじゃあ、お兄ちゃん夜番任せ」
「おい待て、流石にそれは不公平じゃないか?俺は二日連続で寝てないんだ。そろそろ変わってくれてもいいんじゃあないか?」
「じゃあどうやって決めるの?」
「ジャンケン一択だろ」
「ジャンケンって何ですか?」
「ん、グーとチョキとパーを出して勝負する遊び。ちなみに初心者はグーしか出してはいけないというルールがある」
「そうだったのですね!」
「おい、しれっと嘘をつくな」
「………………嘘、なんですね?」
にこやかな笑顔のリリアナ。
なのにどうしてだろう。
震えが止まらない。
「待ってリリアナ、私は嘘をついていない。きっとレンの知ってるジャンケンと私の知っているジャンケンに差異があっただけで」
「嘘をつくような悪い子にはお仕置きが必要ですよね?」
笑ってる筈なのに、何故か笑顔に見えないリリアナ。
ガクブルするギンカ。
「…………二人共じゃれてないで早く決めよう?」
心底退屈そうに言うアヤメ。
四人で向かい合って拳を構え───────────────
「「「「ジャンケンポン!!!」」」」
グー、グー、グー、チョキ。
俺の負け。
「はぁ?!えっ、ちょ負け……ええェェ!!」
「ドンマイお兄ちゃん!」
「ざまぁ見ろ」
「その、なんかすいません」
「ホアアアアァァアアァァアァァァ?!」
発狂する俺と、テントに消えていく三人。
そして夜が明け………
地獄みたいな森林ブートキャンプ最終日。
爽やかな朝日が死ぬほど忌々しい。
うず高く積み上げられた魔物の死体の山の上に鎮座する俺を照らす朝焼けの光。
これで3徹、アヤメの入学費を稼ぐために全力でバイトした時以来か。
溜息を吐き、椅子代わりにしてた兎の死体に腕を突き立て噴き出してきた血を啜る。
旨いな、徹夜明けの体に鮮血が染み渡る。
「お兄ちゃん何してるの?」
「朝飯食べてるの」
テントから出てきたアヤメに返事を返し、血の滴る肉を喰らう。
ただやはりどうしても輸血パックの方が美味しく感じるのは何でなのだろうか。
「レンさん、この惨状は一体?」
「血生臭い。さっさとデオドラントしてこい」
「夜通し戦ってたんだよ、これくらい寧ろ普通だわ」
一晩中テントを魔物から守ってこの言われようは、割に合わないと思うんだ。
黙ってテントを解体し収納にぶち込み、リリアナに背負わせる。
「あの、なんで私がこれを」
「お前しか適任がいないんだよ」
ロリ体系の巨人に、貧弱体力のメイド、不安定要素の魔術師一人。
まともに荷物を運べる奴が一人しかいないんだ。
「ねぇ、今なにか物凄い風評被害を受けた気がするんだけど」
「不当な評価の匂いがした」
勘のいいガキ二人に背を向け、森の外へ向かって歩き出した。
遅い来る魔物をあしらい投げ飛ばし叩き潰し塵殺していく。
戦列を組み、必死に走り森を抜け………
「帰って来たばかりで申し訳ないけどもう一度行ってきてくれるかな?」
「嘘だ」
カップラが美味いんじゃ~
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