モツと肉とキノコと
待たせすぎたかもしれません。
「死ねやオラァアァァッ!!」
「【叩き殺す】!」
「≪始原の種火≫≪転じて劫火≫≪古き微風≫≪色付きて風穴≫≪併せ造りし≫≪斬り裂く陽光≫─────【緋色の斬閃】!」
「なんで私がここにいるんでしょうか?」
「知らんなぁ!!」
ふざけた会話を交わしつつ、後ろから飛び掛かってきた猿を太刀で切り捨て、前方から雷を纏って突撃してきた狼を叩き伏せる。
側面から突っ込んでくる火達磨の猪。
即座に太刀を十字槍に切り替え、すれ違いざまに横刃で頸動脈を搔き切り絶命させる。
上からの殺気。
俺に突き刺さる無数の羽。
見上げれば空を旋回する猛禽類。
「≪始原の種火≫≪転じて劫火≫≪創世の土塊≫≪移ろいて黒曜≫≪併せ造りし≫≪熔鋼の楼≫──────────【炎鉄の塔】!!」
地面が赤熱しせり上がり、鳥を焼き鳥に形態変化させていく。
こんがりと肉の焼けるいい匂い。
「肉が喰いたいな」
「唐突ですねってぴにゃあああぁぁああぁぁぁ?!?!」
響く悲鳴。
振り向けば、巨大な鳥に肩を掴まれてお持ち帰りされるリリアナ。
マズイな。
「逃がすかッ、よぉ!!」
槍を鉈に変えて総身を捻じるように構え全力で投擲。
弧を描くようにして鳥の頭に突き刺さる鉈。
やってやったぜ。
「うにゃあぁああぁぁ?!落ちっ、落ちるううぅううぅ!!」
空中から落下するリリアナ。
やっちまったぜ。
地面にぶつかるギリギリの位置で受け止める。
ぐったりして倒れ込むリリアナを傍目に戦闘継続。
突如爆発する俺の後ろ。
前方に吹っ飛ばされる。
ヤマアラシの頭に氷を纏った突きを叩き込み、爆砕。
もんどりうって倒れ込むヤマアラシの後ろから飛び出してくる土竜を微塵切りにし、すぐ側にいた蛇の脳天を貫き、刃を返し首を刎ねる。
痙攣する蛇の体を踏み台に躍りかかってきた熊の腕を、鉈でいなしがら空きの胴に腕を抉り込む。
そのまま掌を引き抜き腸をぶち撒けて抹殺。
「内臓攻撃は基本だ覚えとけ!!」
そして俺の腹をぶち抜きく鹿の角。
いきなり実践するなよ。
頭を引っ掴み、地面に叩きつけ、ぐったりした鹿を真昼間から元気に活動してやがる蝙蝠にぶん投げ、撃墜する。
これ少し楽しいな。
「【螺鈿蓮彫り】!」
群がる魔物を一気に吹き飛ばし、正面のゴリラを蹴り飛ばす。
足が折れる音がしたが気にしてはいけない。
後方から聞こえてくる悲鳴と爆発音。
あいつら楽しそうにしてるな。
木々を薙ぎ倒して突撃してきた特大サイズの水牛の首を一撃で斬り落とし、戦闘が終了した。
ある程度魔物を倒して安全地帯を確保したところでテントを張る。
金属パイプを連結し、天幕に通してペグで地面に固定する。
………………たった一人で。
後ろを見れば、さぼるアヤメに眠るギンカ。
震えているリリアナ。
まぁ、仕方ないか。
出来るだけ奇麗に殺した猪を木の枝に吊るし、血抜きをする。
四肢に切れ込みを入れ、皮を剝ぎ、内臓を取り出して皮の上に置く。
昼間に見つけておいた川で切り分けた肉を処理し持ち帰る。
古き良き錐揉み式とド根性で火種を作り、薪に着火。
火がある程度大きくなってきたところで石を投入し、加熱されるのを待つ。
その間に素手で穴を掘り、大きめの葉を数枚敷き肉をのせ、こっそり持ってきた味噌を塗り、葉で覆い準備完了。
いい感じに焼けた石を乗せ穴を埋める。
肉が焼けるのを待つ間にもう一品。
水洗いした内臓をヤマアラシの針で串刺しにして、焚き火の周りに突き刺し焼肉にする。
栄養が偏りそうだが致し方あるまい。
自分自身に暗示をかけ出来上がるまで待機。
余った生肉を葉で包んで凍らせて保存。
日がとっぷりと暮れたあたりで、いい匂いが漂い出した。
…………………もうそろそろ食べ頃か。
「焼き肉?」
ひょっこりと顔を出すギンカ。
飯のタイミングで起きてくるとは………………
「ご飯出来た?」
こちらに近寄ってくるアヤメ。
お前もか。
「働かざるもの食うべからずって知ってるか?」
「お肉硬くない?」
「同感。食べにくい」
「そうですか?普通に美味しいと思いますが………」
もう既に食べ始めてた。
そしていつの間にかこっちに来て食べているリリアナ。
まぁ別にいいが。
大人しく串焼きのモツをほおばる。
マズイな。
臭いし硬いし旨くない。
食えないほどではないが進んで食べたいとも思わない味がする。
一息に咀嚼し呑み込み腹に詰め込む。
「それじゃあお兄ちゃん、寝ずの番ヨロシク!!」
「ん、任せた」
「頼みますね」
「おい待てお前ら」
俺を置いてそそくさとテントの中に消えていく皆。
焚き火のそばで一人寂しく夜を越した。
早朝、霧の漂う森の中一人佇む俺。
きっと死んで腐った魚のような目をしているのだろう。
「おはようお兄ちゃん!早起きだね!!」
「寝てねぇんだよ」
「なんで寝なかったのお兄ちゃん?」
「……………お前が寝るなって言ったんだろ」
「私そんなこと言ったっけ?」
酷いよ酷すぎるよ。
こんなのあんまりだよ。
「朝から五月蠅い。寝ている人のことを考えられないの?」
「おはようございます。皆さん早起きですね」
テントから這い出てくるギンカとリリアナ。
「徹夜した奴にそれを言うのか?」
「どうせ死んでるなら大丈夫」
「レンさんなら問題ないかと」
俺の心配はしないんですね分かります。
まぁ流石にこれから戦闘とか「じゃあこれから魔物ボコしに行くよ?」………………酷くない?
「おい待て俺にも休息をとらせろ。今から魔物退治はただのじごk」
「グズグズするな」
首根っこを引っ掴まれ連行される俺。終わらない決死行が幕を開けた。
「うるせえ黙ってろ!!!」
洗練された体術を駆使して襲い掛かって来る舞茸を、思うように動かない体で迎撃する。
後ろから放たれた火炎放射を炙られながら回避。
バーベキューにされるキノコを放置し突貫。
人面樹から射出された枝を斧で叩き斬る。
返す一撃で幹をぶち割り伐採、頭上から落ちてきた蠢く蔦を引き千切り、後ろから飛んできた蒼い焔の槍をギリギリで避け、辺りの触手ごと衝撃波に叩き潰される。
やりやがったなあいつら。
散弾の様にばら撒かれた人間の頭サイズのドングリを弾き伐採。
毒霧を噴射する松茸(紫色)を斬り裂き、化け物サイズの山菜を刈り倒す。
空中をホバリングしてくる背中にキノコが生えたカニを斧で撃墜し後退し【付術:氷爪】。
立体起動する野菜を凍らせながら微塵切りにする。
両足に衝撃。
下を見れば足にぶっ刺さった木の根。
無理矢理足を引き千切り、バックステップ。
弾道軌道を描いて紅い火の玉が飛び爆発しクレーターができる。
それに巻き込まれて撃墜される俺。
そこに追い打ちを掛けるように叩き込まれる不可視の鉄拳。
「撃つのなら前衛を巻き込むな」
「フレンドリーファイヤは正義!!!」
「冗談じゃねぇ」
そして弾幕の中ちゃっかりと魔物の死体を回収するリリアナ。
何気に逞しいな。
更に数の減らない魔物たち。
これジリ貧ってやつだろ?俺知ってるんだ。
「どいて皆!!デカいのいくよ!!!詠唱簡略──────【緋槍:爆轟】!!!」
「ちょっまt」
いきなり放たれた紅く燃え盛る火炎の槍が俺を貫通して魔物の群れに突き刺さり、爆発した。
ワイキノコ嫌いなんよ。。




