粘体と密林と龍と
遅くなってすまない!(ゆうた動画見て遅くなったわけではない。決して)
鬱蒼と茂った森の中、木霊する悲鳴と飛び散るカラフルな粘液。
「ああぁぁ!?無理無理無理無理無理里無理無理!!!」
「おい待て怯むな逃げるな!!」
「アッハハハハハ!!!」
「待てアヤメ!もう少し狙って撃てうおおおぉぉぉ!?」
「あっちぃぃいいい!?」
逃げるギンカに乱射するアヤメ。
前後両方から迫りくる粘液塊と火炎弾をほぼ同時に捌くアヴィンさんと、直撃する俺。
「フレンドリーファイヤ上等!!」
馬鹿なことを言うアヤメ。
燃え盛る木々。
吹き飛び延焼するスライムたち。
何だろう地獄絵図。
「ギンカ、お前も戦え!」
「嫌無理キモイ断る!私とは相性が悪すぎる、みんなで対処して!!」
頭を抱えてしゃがみ込むギンカ。
使えねぇ。
こっちに来たスライム複数匹を十字大槍で貫き絡めとり放り投げる。
宙を舞うスライムが途中で炎弾に撃たれ爆散する。
やはり相手が多いときは長物が便利だ。
楽に削れる。
とはいえ俺も物理主体。
故に相性自体は悪いのだが…‥‥‥‥‥‥…
「めんどくせぇ、なぁ!!」
苛立ちのままに槍を叩きつけるが飛び散るだけでろくなダメージにならない。
厄介すぎる。
「ハハハハハハハハハハハハハッ!どうしたのかな?!逃げずにかかってきなよぉ!!!」
叫ぶアヤメ。
逃げ惑うスライム。
こっちが悪役みたいな気分になってきた。
魔王軍だけども。
というか。
「いい加減働けよギンカ!」
「ムリ嫌怖い苦手みんな頑張って!」
「ギンカぁああぁぁ!?」
こいつやりやがった。
そうしてる間にスライムを殲滅していくアヤメ。
もうあいつ一人でいいんじゃないかな。
弾幕を潜り抜けてアヤメの後ろに移動、これで一安心。
「ふう‥‥‥‥‥これで一安心だな」
いつの間にか隣りにいたアヴィンさん。
「なんでここにいるんですか。早く前に出てください。役目でしょ」
「なにを言ってるのかよくわからないが誤爆が怖すぎる」
「なるほど」
よくわかった。
そして消し炭になるスライム。
燃え盛る密林。
これどうしよう。
「おいアヤメ!もう大丈夫だ!!」
「ハハハハハハハ!!」
ダメだ聞いちゃいねぇ。
このままだと森が全焼するんじゃ。
轟ッと音を立てて、大気が消し飛んだ。
『ふみゃあああぁぁ?!』と素っ頓狂な悲鳴を上げて吹き飛ぶアヤメ。
一気に掻き消される炎。
消し飛ぶスライム。
空を見上げれば─────────積乱雲に幾重にも円環を刻みつけて飛ぶナニカ。
大気を引き裂き、音の壁を蹴散らし、噴煙を残し天空を駆ける赫灼の星。
3対の翼から爆炎を吹き飛翔する龍の似姿。
「────────何なんです、アレ」
「これは珍しいな。〔スピード狂〕だぞ、アレ」
「何ですか。その物騒な名前」
「SSSランク‥‥‥‥‥討伐不可能領域。創世のころからずっと飛び続けてる真正の怪物だよ」
「何ですか、討伐不能領域」
「例えば無限の再生能力だったり、また或いは全攻撃無効の装甲だったり……‥‥‥‥…あいつみたいに捉えられない速度だったりと倒すことのできない厄災のことだ。まぁ、あいつの場合はずっと飛んでるだけだから特に害はないな」
「何です、その化け物どもは」
「気にすんな、遭遇しなければ問題ない」
そんなことを言うアヴィンさん。
遭遇したら死ぬんですね、分かります。
「ああ、もう!何なのあれ!!次会ったらぶっ殺してやる!!!」
無茶なことを言うアヤメ。
「もうやだ‥‥‥‥‥‥‥‥お家に帰るぅ‥‥‥‥‥…」
いつになく弱気なギンカ。
これ以上の厄介ごとが起こる前に魔王城に帰還した。
「アハハハハハハハハハ!」
「うおおおぉぉ!?【城砦防御】!!」
火球を連射するアヤメと、全弾防ぐアヴィンさん。
この人やっぱチートや。
「【身体強化:死霊】」
「ハアァアァァ!!!」
縦横無尽に振るわれる黒い腕を、身体強化した肉体で受け流し回避する。
不満顔のギンカ。
超速の二連撃を受け止め、弾き飛ばす。
「やっぱりゾンビは動きが気持ち悪い。死ねばいいのに」
「もう死んでるんだよ」
「うるさい滅べ!!」
言葉の暴力にもめげずに、振り下ろされた黒い腕を鉈で叩き落し、そのまま一歩踏み込んで顔面を鷲掴みにし地面にねじ伏せ。
「【御手を拝借】!」
「【牡丹】」
押しつぶす衝撃波を斬り捌き、突進。
カウンター気味の拳に顔面を吹き飛ばされるも、不死者がその程度で止まるわけない。
抱きかかえるようにして拘束しようとして、腕に薙ぎ払われた。
乱射される不可視の衝撃波を紙一重で避け、左半身を抉られる。
右腕一本、十文字槍を構え、大きく取り回し、叩きつけるように跳躍して。
「俺の勝ち、でいいよな>」
「………納得いかない。死ねばいいのに」
悪態をつくギンカ。
「うにゃああああ!!」
「【盾攻撃:弱】」
「あぐっ?!」
妙な悲鳴を上げて宙を舞うアヤメ。
「おい、いったん休憩するぞ!」
休み入った。
「あ~…‥‥…牛乳美味し~」
「フルーツ牛乳は至高」
「何言ってんだ、輸血パックが一番旨いだろ」
「風呂上りじゃあるまいし…‥‥‥…そこはコーヒー牛乳だろ」
「アヴィンさん、コーヒー牛乳は、基本風呂上りに飲むものです」
「なん、だと?」
気の抜けたセリフを吐きながら休息をとる。
休息は大事、はっきりわかんだね。
「飲み終わったら、アヤメとギンカで模擬戦するぞ」
「アヴィンは参加しないの?」
「お前らの戦い方が危なっかしすぎるんだよ」
「またまた~」
「そんなわけがない。間違いなく完璧な戦い方だった筈。異論は認めない」
そんなことを言いながら訓練場の中央に歩いていくアヤメとギンカ。
「よーいドン!」
「レディゴー」
杖を構えるアヤメに正面から突っ込むギンカ。
二人共、後退も回避もしない。
一歩も引かない両者がぶつかり…‥‥‥‥‥‥‥‥…
「ねぇ、お兄ちゃん。なんで私負けたの?」
「後衛職が近接と殴り合って勝てるわけないだろ」
倒れこむアヤメに肩で息をするギンカ。
「なんで‥‥‥‥っ。近接と互角に叩き合える!?」
「愛のなせる業、かな?」
「ふざけるな!」
確かにそれは思う。
錫杖で黒腕を打ち払って寝技に持ち込んだときは、動作が見えないほどだった。
………………単にセクハラかましただけの気もするが気のせいだろう、うん。
疲れた頭を休めるため、自室に戻った。
モソスターハソスターダブルワロス:パロフヱレフ。(原型留めてないからセーフ)




