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『異世界狂騒録』~兄妹揃って異界に飛ばされたので好き勝手に生きる~  作者: 御星海星
仲間と魔王と栄転と

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血と喧嘩と爆発と

遅くなってすまない!!

 腹痛で目が覚めた。

 腹が痛い。

 控えめに言って激痛。

 四肢を引き千切られても、頭を捥がれても耐えられたが、これはアウトだ。

 というか痛すぎて何もできそうにない。

 吐き気がする。此処は何処だ。


「起きた?」


 ギンカに顔を覗き込まれた。

 ちゃんと助けれたのか。

 よかった。


「悪い、寝かせてくれ」


 本当に、今日は何もできそうにない。


「……………今夜は寝かさないぞ?」

「ふざけんな」


 この場面で使うセリフじゃねえだろ。

 ヤメロ、頬をつつくな。

 ぷにぷにするな。


「お兄ちゃん起きた?」


 扉を蹴破って入ってくるアヤメ。

 叫び声が頭に響く。

 クソいてえ。


「お医者さん呼んできから安心して!」


 プルプルしながらこっちに来るご老人。

 …………………吸血鬼の診療ってどうやるんだろうな。














「食あたりですな」

「………………………はぁ?」

「何か悪いものでも食べたのでしょう。心当たりはありませんか?」


 震えながら言うお爺さん。

 特に何かを食べた記憶はない。

 強いて言うのならばギンカの血を飲んだことぐらいで…………まさかな。


「吸血鬼が血を飲んで腹を下すなんてことはないですよね?」

「ありますな」


 あるのかよ。


「神に祝福された血や高位の魔物の血を飲むと、場合によっては拒絶反応が起きます。今回のはそれでしょう。良質な血を摂ることをお勧めします。ではこれで」


 そそくさと退室するご老人。

 逃げられたような気がする。


「で、結局心当たりは何?」


 訪ねてくるギンカ。

 キラキラした瞳。

 言えない、言えるはずがない。

 お前の血がまずかったなんて。


「カトブレパスだな。小腹がすいたからつまみ食いした」

「…………………‥意外とお子様?」


 我慢。

 我慢だ、俺。

 ここでキレるわけにもいかない。


「飯食ってくる」


 腹痛と怒りをこらえ食堂に向かった。









 














 魔王城の食堂でハンバーグステーキランチとトマトジュースを平らげた俺は控室に向かっていた。

 部屋に入るなり聞こえてくる喧噪。


「何度も言っている。私は悪くない」

「思いっ切り暴走して、環境破壊して、被害拡大した挙句のセリフがそれか!?この始末書書くの俺なんだぞ!?」


 バン、と机をたたくアヴィンさん。

 崩れ落ちる、積み上げられた書類の塔。

 あたふたと書類を纏めるリリアナ。


「……………………環境破壊は楽しい」


 おい。


「でも分かった。次からは気を付ける」

「はぁ……頼むぞホントに。これ以上俺の胃に負担をかけるな」


 アヴィンさんが不憫だ。

 涙がちょちょぎれるぜ。


「あぁ、そうだ。レン、コレを渡しておく」


 そう言ったアヴィンさんに手渡されたのは……………真白の大鉈。

 刃渡り1メートル程の肉厚のソレ。

 初めて見る品だが、何故か手に馴染む。


「これは何ですか?」

「お前の太刀の成れの果てだ」

「はぁ?」

「地龍を討伐した時に、現場に落ちていた武器はそれだけ。多分だが使い手(お前)に合わせて変化したんだろう。形状変化の性質を持つ武具は扱いが難しいが、頑張って使いこなせよ」


 んな無茶な。

















 魔王城特殊教練場。

 高硬度素材と障壁で覆われた戦闘訓練用の大部屋。

 その中を乱舞する炎の群れ。

 迎撃する俺。

 片手で構えた鉈を一気に振り下ろし、手首を返して火線を薙ぎ払う。

 『うそでしょ!?』というターゲットの声。

 その方向へ向かって走り出す。

 広範囲にばら撒かれる怒首領蜂並みの弾幕を、動体視力と根性のみで回避し切り落とし、さらに加速。

 追加される弾幕。

 避ける俺。

 弾幕が途切れた一瞬の隙をついて突撃。

 焦ったように放たれる炎は、しかし掠りもしない。

 俺の後ろの床が爆ぜ、土煙が巻き起こる。

 ターゲットに王手をかけるべく、鉈を逆刃に振りかぶり──────視界の端に映る閃光。

 『やっば?!』という叫び。

 防御に振り返えろうとした俺は()()()()()爆発に吹き飛ばされた。













「マーケター」

「なに言ってんだコイツ」


 教練場の床に寝転ぶ俺。

 見下ろすアヴィンさん。


「しっかし、粉塵爆発とは考えたな。なぁ、アヤメ」


 返事がない。

 見れば放心状態のアヤメ。


「……………おい、聞いてるのか?」

「え、ああうん。勿論聞いてたよ!?鍋に入れると美味しいよね!!」

「聞いてねえよな。…………ただ実際、無駄弾に見せかけて土埃を後ろに起こして撃ちまくって着火ってのはいいアイデアだと思うぞ?」


 豆鉄砲を喰らった鳩のような顔のアヤメ。


「………………えっ」

「起こる確率の低い粉塵爆発も、火種を撃ちまくって粉塵自体を増やせばいずれ起こる。…………考えたな」

「よ、ようやく気付いたのお兄ちゃん。ま、まぁ、天才のこの私からすれば?この程度の作戦?片手間だしぃ?」

「………………ぷっ」


 ギンカが吹いた。


「………ねぇ。なんで笑ったの?」

「………………バーカ」

「へぇ~。この私に喧嘩売るんだ?」

「ちょっとお前等やめろって」

「………何か悪いの?」


 冷や汗を垂らしながらも折れないギンカ。

 馬鹿だなお前等。


「オイお前等いい加減にしやが」


 ドゴンッッと大気が爆ぜ、少女二名が同時に消えた。

 二人の中間地点から激突音。

 『のわあぁぁ?!』と情けない声を上げ青空へ消えていくアヴィンさん。

 諦めて体育座りする俺。

 馬鹿みたいな喧嘩が終わったのは夕方だった。





















 テーブルについて、リリアナの作ってくれたカレーを食べる。

 空きっ腹に染み入る香辛料の味。

 甘酢漬けのラッキョウが喰いたい。

 それよりも………………………


「なぁ、ギンカ。なんでお前がここにいる?」

「カレーが食べたくなった」

「ギンカちゃんって子供だよね」

「うるさい黙れ」


 猛烈な勢いで特盛のカレーを掻きこむギンカ。

 その小さな体によく入るものだ。

 じろりと睨まれたので、慌てて目を逸らす。


「………ねぇギンカちゃん。カレーついてるよ?」

「んぅ……?ありがとう……………」


 ギンカの唇についたカレーを、甲斐甲斐しくハンカチで拭うアヤメ。

 腹が膨れたからか、眠そうな目を擦っていたギンカが船を漕ぎ始めた。


「………お兄ちゃん。ギンカちゃんを寝かせてくるね?」

「手伝おうか?」

「ううん。一人で大丈夫だから」


 ギンカを背負って部屋を出ていくアヤメ。

 ………………結局その日、アヤメは戻って来なかった。



ばくはつはげいじゅつだ。






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― 新着の感想 ―
[気になる点] 土埃では粉塵爆発おきないですし、おきたとしても開放空間では大して威力はないですよ。
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