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『異世界狂騒録』~兄妹揃って異界に飛ばされたので好き勝手に生きる~  作者: 御星海星
仲間と魔王と栄転と

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馬鹿と腕と血と

もっと面白く書きたい。

 カトブレパスの死体に腰掛け考える。

 自分の体に起こったのは、吸血鬼化などという明らかな異常事態(イレギュラー)

 だというのに危機感は感じない。 

 ……………いや、恐らくはそれも含めての異常事態なのだろう。


「それに、ッと!!」


 カトブレパスの腹に腕を突き立てる。

 間欠泉のように溢れ出す、生温かい血液。

 ふわりと鼻腔をくすぐる、甘い香り。

 旨そうではあるが、リリアナの血の香りの方が上等だった。

 ………………鮮血を食料と認識している段階で、真っ当な思考は残っていない気がする。

 何の前触れも無く、唐突に鳴り響く爆音。

 かなり広い範囲を巻き込んで火柱が立つ。

 やりよったなあいつ。


「終わった~、お兄ちゃん?」


 林の奥から、若干煤けたアヤメが出て来た。


「ああ、ついさっき終わらせたばかりだ。そっちはどうだった?」


 この『レクリエーション』の目的は、恐らく各自の苦手とする、相性の悪いモンスターと戦わせることでそれを克服、あるいは弱点に気づかせること。

 俺は首をへし折ったが、アレの正しい攻略法は恐らく『体格差の大きい相手にどう致命傷を負わせるか』というものだろう。

 アヤメの場合は『動きが速く小さい相手をどう倒すか』だと思うのだが…………………


「いや、それがね?あいつらやたら動きが速いうえに無駄に勘がいいから避けられるんだよね」

「それで?」

「…………………私って火属性耐性が強いんだよね」


 …………………まさか。


「大量に魔力を込めて、広範囲を吹き飛ばすフリをするでしょ?避けれない範囲と耐えれない威力の攻撃が来そうなら、普通は元凶を絶つでしょ?」

「…………冗談だよな?」

「焦ったゴリラが飛び掛かってきたタイミングで()()()()()()魔法を撃つ。私は余裕で耐えれたし、あいつらはちゃんと炭になった。ほら問題ないったあぁ!?」


 アヤメにデコピンをかます。


「馬鹿かお前は、当てが外れたら死んでるぞ」

「ううぅ、お父さんにもぶたれたことないのに!!!」

「……………もう2度と同じことはしないように」

「…………………わかりました 」


 不貞腐れるアヤメ。

 少しきつい言い方になったかもしれないが、コイツの身に何も無くて良かった。

 ……………………さてと。


「ギンカ、あいつ…………遅いな」

「ホントだよ。お兄ちゃんが遅かったら、そのままクンカクンカハスハスペロペロしようと思ったのに」

「あいつなんだかんだ強いから、何なら一番早いと思………今、なんて?」

「抱き締めて押し倒して〝ピ――――――――〟して〝ピ――――〟で〝ピ――――〟ううん、〝ピ――――〟もありかも。…………〝ピ――〟系もいいよね」

「…………………父さん母さん爺ちゃん。俺、育て方間違えたみたいだ」


 というか本当に。


「あいつ遅すぎ」













 ドン、と音がして。


 林が爆ぜた。

 

 大量に巻き上げられた雪煙を引き裂いて、見え隠れする無数の腕。


 それらに貫かれた水色の球体、いや違う。

 直接生えているのか。

 兎も角。


「アレは、マズいな」


 よく見れば、腕に引き摺り込まれて、球体が消滅していた。

 不可思議で、受け入れがたい光景だった。

 物体が内側に引っ張られる現象。

 そして圧倒的なプレッシャー。

 何時ぞやの、白鯨との邂逅時に感じたモノにも似た怖気。  

 紛れもない死の気配。

 林が叩き潰される。

 無数の手が獲物を探すかのように蠢く中、一瞬だけ見えた惨状。

 全身から無数の手を生やしたギンカ。

 服を破り、眼孔を塞ぎ、銀糸のような髪の隙間から伸びた手。

 のたうち回るムカデの群れを思わせる呪詛が、世界を侵食していく。


「なぁ、アレ、制御できてると思うか?」

「思えないね」

「………………ヤバいんじゃないか?」

「ヤバいね」

「助けてくるわ」

「馬鹿なの!?」

「勝算はちゃんとあるから、先に帰ってアヴィンさんに連絡頼む。お前より俺の方が頑丈だしな」


 ゾンビ舐めんな、と不敵に笑って見せる。

 ジト目のアヤメ。


「……………お兄ちゃん」

「おう、どうかしたか?」

「………また死んだら殺す」


 ……………アヤメらしいな。

 愛が重い。





























「さてと、…………どうやって助けるかな」


 アヤメに対して大口を叩いたことへの後悔はあるが、実際勝算はある。

 ある、が。

 間違いなくギンカがブチギレる。

 あまり気も進まないし。

 かといって、ほかに方法も思いつかない。

 俺が天才なら、こういう時に完璧な代替案A~Dを思いつくのだろうが、俺は凡人だし仕方ない。

 仕方ないのだ。

 自分にそう言い聞かせて、クラウチングスタートの構えをとる。

 腹をくくり突撃を開始。

 撥ねられたようにこちらに殺到する、黒く干からびた腕。

 今回は速度が最優先、躱せる分は躱し、無理なものは腕か頭で受け止め、無理矢理引き千切り更に進む。

 垣間見えたギンカの体を鷲掴みにする腕。

 再生したての俺の目に映るそれは、宿主を殺そうとする寄生虫のようで。

 目が合った。

 助けを求める目。

 頷き返しラストスパート。

 ガクンと衝撃が走り、つんのめりかけた。

 視界を巡らせれば俺の足を握る手。

 回り込まれたか。

 舌打ち一つ、自分の頸へ手を回し、引き千切り、全力で投擲。

 揺らぐ視界。

 空中で体を生やしギンカの前に着地。

 背後からの貫手に心臓を抉られるが、どうせ関係ない。


「………………っ……ぁ………けて………」

「分かった!!」


 擦れて薄れた、確かな悲鳴。

 今からすることへの罪悪感を押さえつけ──────頸筋に噛み付く。

 傷から流れ出した赤い雫を呑み込み、血を啜る。


「あ……っ………はな………」


 ジタバタと藻掻く体を抑え込み、血を飲み続ける。

 パキョ、と卵の殻を割るような音がして視界が潰れる。

 問題はない。

 たちどころに頭蓋が復元され、若干の空腹。

 すぐに腹が満ちる。

 下半身を引き千切られた。

 すぐに復元され僅かな空腹。

 問題はない。

 引き倒し、馬乗りになり、牙を突き立てる。

 コレが俺の考えた作戦。

 肉体を壊され再生するときに養分を消費する。

 ならば血を吸い続ければ無限に再生できる。

 神の権能が暴走したとして、行使者が気絶しても使えるわけではないはずだ。

 暴れる躰を抱き締め、血を啜り続け。



























 貧血で気絶したギンカと、腐り落ちる黒腕。

 血塗れで倒れこむ全裸の俺。

 無限に再生する服が欲しい。

 何故か急に瞼が重くなり…………………










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