黒と銀と赤と
眠いんだお。(現在10時半)
素晴らしき家族愛(魔王とその側近と愛娘)を見せつけられた俺達は、『直属部隊』とやらの控室に向かっていた。
………リリアナもつれて。
『私は関係ない』とばかりに帰ろうとしたところ、魔王様から『君には部隊のケアをしてもらいたい』と言われて泣きながらついてきた。
辿り着いたドアをノックしようとして戸惑う。
………こういう時、どうやって入ったらいいかわからない。
思い出すのは、地球で爺ちゃんが見てた邦画のワンシーン。
主人公のパイロットが、精鋭部隊に入隊した時のシーン。
追憶から掘り出したソレを、鮮明に思い描き。
「本日付で『魔王軍直属強襲部隊』に配属されたレン・アガワです。以後よろしくおねg」
「死んで」
鈴の転がるような可憐な声音で言われた、物騒な一言。
網膜に映った黒い影。
轟音。
乱回転する視界。
最近こんな事多いな。
後頭部が堅いナニカにぶつかる感触。
目の前に転がってる首のない死体は誰のものか。
俺ですかそうですか。
いや、オイ、ちょっと、待て。
ヤバい、だんだん意識が薄れ……………無いな。
むしろはっきりしてるな。
「お、お兄ちゃん!?」
「え、レンさん?首が取れて、ええぇ!?」
「…………期待外れ。地龍を倒した英雄というからどれだけ強いか期待してたのに………弱すぎる。話にならない」
下手人(俺まだ生きてるけど)は銀色の髪と青い目をしていた。
整ってはいるが、人形の様な中性的な顔立ちのため、男女の判別は不可能。
身長はアヤメと同じか、それより低い程度。
手に持った凶器は幾重にも曲がり節くれだった異形の腕。
ふと、脳裏に浮かんだのはムー〇世界遺産で紹介されていた河童のミイラ。
…………あれでぶん殴られたのか。
「さて、コイツは雑魚だったし…………あなたたちはどっちから死にたい?」
アヤメとリリアナに向けて腕を構える下手人。
観察している暇はなさそうだな。
首から下に意識を集中させる。
じくじくと肉が疼き、骨が生え、内臓が復元され、皮膚で覆われる。
流石に服はついてこないが後回しだ。
壁に両足をつき、体を捻じり腕を軋ませる。
全力で壁を蹴り飛ばし突撃。
足からメキャだかゴキャだかよくわからない破砕音が聞こえてくるがお構いなし。
無防備な下手人に対し腕を振り回し─────────────
「ラアアァリイィアットオォォォ!!!」
「アグッ?!」
吹き飛ぶ下手人。
追撃する俺。
着地する前の胴体に蹴りを入れ「【お手を拝借】」。
突発的に襲い掛かってきた圧力。
一瞬だけ視界が途切れすぐに復活する。
潰れた体から無理矢理腕を生やし、全力で押しのけ後退。
起き上がってくる下手人。
「死んでない?不死者……………死臭がしないからアンデッドじゃない?………まぁ別にいいや。どうせ勝てるし」
「舐めるなよチビが。潰すぞ」
「ッ………殺す!!」
激昂して、飛び掛かってくる下手人を迎撃しようと拳を構え、突きを放つ。
「【手掴み】」
グシャリと音を立てて握り潰された右手を引き千切って前進。
上段の回し蹴りを放つが躱される。
そのままさらに前進し、渾身の貫手。
正面から殴り返され、手が拉げる音。
鈍い痛みをこらえて零距離戦を仕掛けようとして「【手刀】」。
奴が振るった手刀の軌跡をなぞるように、とっさに防御に回した両腕ごと袈裟懸けに斬られた。
ぱっくりと裂けた傷から血が噴き出るがすぐに癒着する。
便利だなこの体。
「…………高位不死者?なら死ぬまで殴る!!!」
「物騒だなぁオイ!!」
不可視の何かが振りかぶられる気配。
恐らくこちら目掛けて殺到するそれを─────────避ける。
背後で炸裂する大理石と、無数の風圧。
半歩踏み込み、身を翻し悠然と進む。
自分の後ろで床が弾ける。
息をのむ下手人。
「なんで、目に見えないものを躱せる」
「自分で考えろ」
「──────ッ、うるさい!!」
さっきから考えなしに殴ったせいで、巻き上がった諸々の破片がうっすらと手の形をとっていることに気付かないのか、それとも気付かないふりか。
さらにピッチを上げて放たれた拳を躱し、避け、いなしていく。
動きがお粗末だな。
身体能力はかなり高いがそれだけ。
喧嘩慣れした素人程度の技量の相手に、後れを取る訳も無く。
一発貰えばそのままリンチされそうだが、当たらなければどうという事は無い。
ある程度距離を詰めたところで拳を振りかぶり跳躍。
「馬鹿が!!!」
空中で身動きの取れない俺のこめかみから上を、うっすらと土煙を纏った拳が吹き飛ばす。
勝利を確信したように笑う下手人が、黒腕を振るい。
「馬鹿はお前だ」
足を大きく開き、相手の胴を挟み込む。
そのまま空中で身を捻り、下手人を床に引き摺り倒し、首に手をまわして頸動脈を絞める。
「あっ……がっ……ぎぃ……!?」
「習ってて良かった極技!!」
ジタバタ暴れる小柄な躰を押さえ付け、締め上げる。
爺ちゃんが「戦場の鎧武者はこれで決着を着ける」とか言ってたが、ホントその通りだ
「悪いがこのまま決めさせてもらうぞ!」
絡み付くようにして相手の関節を固定。
相手の頸動脈を圧迫し気絶させ。
「な、めるなあァアアアア!!!」
ドンッと空間を揺らすような衝撃と圧力。
全身が拉げ千切れ、ばらばらになる。
スプラッタ死体と化した俺を振り払い、距離をとる下手人。
「お、前は、殺す!」
「やれるもんならやってみろ!」
「アアアァアアアア!!」
雄たけびをあげ突っ込んでくる下手人。
迎撃すべく駆け出す俺。
互いに譲らろうとしないまま、二人が同時に拳を振りかぶり───────────
「そこまでだ、二人共」
中間地点で拳が静止した。
否、何かにぶつかって止められた。
腕が拉げる俺。
痛みに悶絶し倒れ伏す下手人。
「まったく……………ギンカ、すぐにケンカを売るのはお前の悪い癖だ。新入り、コイツが迷惑かけた。許してやってくれ」
「……………アヴィン、私は悪くない」
「い~や、お前が悪い。根はいいやつなんだがな………」
眼の前には、腕を組んで仁王立ちする赤髪赤目の偉丈夫。
身長2メートル半はあるな。
というか風格が違う。
明らかに強いぞこの人。
「さて、と………お前たちが『地龍を倒した英雄』でいいんだよな?ようこそ強襲部隊へ!歓迎するぜ、異世界の勇者様」
書き溜め尽きたから投稿ランダムになるかもしれん。
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