疲れとブライアンと財布と
みんなが好きなあいつが帰ってくる。
ゾンビラッシュからおよそ2ヶ月。
俺達は、致命的な問題に直面していた。
家事と仕事の両立が不可能なことに、ようやく気がついたのである。
化け物と斬り合い、打ち合い、ブッパなして、ズタボロの状態で家に帰って飯を作って………そんな重労働を毎日続けられる訳がない。
というか、最初の二週間で割と限界だった。
「ねえお兄ちゃん?」
「………どうしたアヤメ?」
ベッドに転がる俺とアヤメ。
動く気力もない。
せっかくの風呂に入る余裕もないから、湿らせた布で体を拭くぐらいしか出来ない。
日々強くなる化け物。
いつの間にか増えてるトラップ。
怒りに任せて階層ごと吹き飛ばそうとするアヤメ。
ポーションを飲む度に脳裏を過ぎるアビスウォーカー。
事故と人災と天災に揉まれ、後ろからのフレンドリーファイアを、残機ゼロの生身パルクールで回避する日々。
このままだと、本気で致命的なミスが起こりかねない。
むしろ消し炭になる。
「流石にこの状況はマズいんじゃない?」
「でもどうするよ」
どうしようもない。
お手伝いさんでも雇って家事を任せるのも考えたが、高すぎた。
そもそもの数が少ないうえに、メイドや執事として貴族が囲むため、出会いすらロクにない。
後は奴隷ぐらいのものだが………………
「「奴隷商の知り合いなんかいないし………」」
忘却と喧噪の淵から、高速で飛来するイケオジ。
「「ブライアン!!!」」
いたわ、奴隷商。
疲れた体で夜の町に出ようとして限界到達。
今日と明日はゆっくり休んで、明後日ブライアンの店を訪ねることにした。
「というわけでいい感じの奴隷ありますか?」
「何がというわけなのかわかりませんし、いい感じといわれてもよく伝わりませんが………お久しぶりです。レンさん、アヤメさん」
懐かしのブライアンとの再会。
事情を説明する。
奴隷商をしているとのことなので相談に来たのだが…………
「家事のできる奴隷、ですか………生憎と当商会は戦闘奴隷が主な商品ですので、一般奴隷はあまりおいてないのですよ」
申し訳なさそうに言うブライアン。
使えねぇぞブライアン。
情けないぞブライアン。
「高くついてもよろしいのなら一つだけありますが」
あるのかよブライアン。
アンタいい奴だよブライアン。
輝いて見えるぜブライアン。
「高いってどれくらいのお値段に………」
「大金貨4枚はしますな」
………確かに高いな。
所持金が殆ど吹っ飛ぶぞ。
流石にコレは買えない。
ブライアンさんに渡された、情報の書かれた羊皮紙を熱心に見るアヤメ。
買わないよ?お金がなくなるから。
「申し訳無いのですがほかの同業のか「買います!!」……は?」
「買います!」
堂々と言うアヤメ。
「ちょっとお前、なに言って「お兄ちゃんは黙ってて!」……………わかった」
アヤメ様逆ギレ。
これは逆らわない方がいいな。
「これで足りますよね?」
俺の財布から淀みなく大金貨4枚を取り出すアヤメ。
って待て俺の財布?
俺の財布!?
「アヤメそれ俺の財布」
「確かに受け取りました。ではこちらの書類にサインを」
渡された書類に俺の名前を書き込むアヤメ。
俺の名前?
俺の名前!?
「待て、なんで俺の名前を」
「お兄ちゃんの方がこういうの得意でしょ。早く帰るよ!」
「また明日、ご来店ください。その時にお引渡しますので」
やや速足のアヤメに引き摺られて、ブライアンさんの店を出た。
……………解せぬ。
スーパーブライアンタイム




