表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界狂騒録』~兄妹揃って異界に飛ばされたので好き勝手に生きる~  作者: 御星海星
異国と軍と迷宮と

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/173

ミノと劇毒とモドキと

焼肉食べたい。

 地龍の迷宮第65階層。

 大理石の演舞場のような謎空間で俺とアヤメはかれこれ2時間近く戦い続けていた。

 必殺の威力を持って振るわれる、白銀に光り輝く大振りの戦斧。

 それを軽々と操る膂力。

 白銀に金で瀟洒な装飾を施された全身鎧。

 巨体を守る、煌めきを放つ壁盾。

 そしてそれらで全身ガッチガチに固めた─────牛頭の巨人。


「ミノタウロスがそんなガチの武装していいのかよ」


 依頼を見て回って選んだミノタウロス討伐依頼。

 身長5メートルをこえる牛頭の巨人。

 動きも遅く膂力に任せた攻撃しかしてこない雑魚。

 の筈だったのだが………………………


「ちゃっかり全身板金鎧(フルプレートアーマー)着てんじゃねぇか」


 原始的なネイティブウェポンの代わりに文明の利器振るってるし。

 何で、明らかに一級品以上の装備を使いこなしてるんだろうな。

 …………………フザケるなよ。

 まぁそれでも、本来ならちょっとよく切れる武器を持ったただのクレバーな牛頭なんだが………


「アアァアアァァッ!もぉ!!あの鎧クソうざすぎる!!!」


 アヤメの放った蒼い炎の槍が、ボヒュッと音を立てて消失する。

 ……………………またこれだ。

 俺が体勢を崩した隙にアヤメの撃ち込んだ炎弾が、コイツの鎧に弾かれたのだ。

 ムキになって連射するアヤメ。

 怯みすらしないミノタウロス。

 そして今に至る。


「ほんっと、こいつどうすっかなぁ……………」


 一応切れてはいるが、こいつがデカイせいで致命傷にはならない。

 急所への一撃だけはしっかり避けてくるし、そもそも魔法は効かない。

 …………………こいつ強くね?


「お兄ちゃん!避けて!!」

「んぁ?」


 隙だらけの俺目がけて、斧が振るわれる。

 斧の刃筋に沿って刀を走らせて弾き、そのまま腹に一撃。  

 浅く切れる鎧と舞う血飛沫。

 叫ぶミノタウロス。


「斬れなくはないが……………やはり浅いな」


 脂肪と革が分厚い上に鎧を着込んでいるせいで、肉や内臓に届かない。

 ……………ポリシーに反するが仕方ない。

 とっておきの、奥の手を使う。

 バックステップで距離を取り、懐から取り出したのは──厚ぼったい4本の小瓶。

 中に詰められた黒々とした粘性の液体。

 ミノタウロスの顔面を狙って、全力で投げつける。

 硝子が割れ、バラ撒かれる中身。

 絶叫するミノタウロスが、蹲り転げ回り苦悶と焦燥の声を上げる。


「………………………お兄ちゃん?何投げたの?凄く苦しんでるけど………………」


 ドン引きするアヤメ。

 あれ作ったのお前だろうに………………


「さぁな」


 アヤメ謹製のミートボールらしき未確認暗黒物質。

 その表面から流れ出た謎の液体。

 干からびて使えなくなったテーブルに付着していたそれを瓶に詰めておいたのだ。

 あれだけ強力な刺激物ならモンスターにも有効だと踏んだのだが……………想像を遥かに上回る効きっぷり。

 苦しむミノタウロスの首に刃を振り下ろした。











「依頼達成の証明、確かに確認いたしました」


 カウンターにミノの死体を提出する。


「それにしても……………………………この苦悶は一体……」


 引き気味に言う職員さん。

 地獄でも見たような表情だから仕方無い。


「はい。報酬の大金貨3枚です」


 少し重い麻袋を受け取って、我が家へ帰還を果たした。



 トントントンと小気味の良い音を立ててパプリカ(モドキ)を刻んでいく。

 涙を堪えて玉葱モドキをみじん切りにして鍋に。

 人参モドキのピクルス(モドキ)も刻んで醤油モドキと肉(何の肉かは知らん)を投入。

 卵(野球ボールくらいある)を溶き入れて塩胡椒で味を調節。

 探し出してきた米(これだけ原型保ってた。何故だ)を目分量で入れ雑炊に。


「出来たぞ~」

「は~いって雑炊!?」

「あれ、お前って雑炊嫌いだったっけ」

「いやそうじゃなくて、米あったんだこの世界」

「おう、見つけた時俺もビビったわ。しかもこっちでも米って呼ばれているんだよ」

「いただきま~す!………………あっつうっま。久々のお米だぁぁ」

「人の話聞けよ。…………………あ~うめ~。懐かしい味がする」


 醤油モドキと肉の脂(何の肉かは知らん)の旨味。

 そこに合わさる米の甘さ。

 なんだろう。無性に泣きたくなってきた。


「あ~、懐かしいな日本」

「言うな。余計に悲しくなるだろ」

「ねぇお兄ちゃん。こっちにも餅ってあるのかな」

「探したらあるかもな。それより味噌が欲しい。何か物足りねぇんだよなぁ」

「味噌汁飲みたい」

「取り敢えず今日はもう寝るぞ。明日からまた潜るんだから」

「は~い。おやすみお兄ちゃん」


 二階の寝室に上がっていくアヤメ。

 食器をキッチンに持っていき洗って拭いて棚に仕舞う。

 俺も自分の部屋で眠りについた。







米と焼き肉。……………………完璧ジャマイカ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ