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『異世界狂騒録』~兄妹揃って異界に飛ばされたので好き勝手に生きる~  作者: 御星海星
異国と軍と迷宮と

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蜥蜴と戦闘とお叱りと

もっと早く書きたい

 地龍の迷宮第37階層。

 金銀鉄にミスリルといった希少金属が採取できる、大規模な鉱床地帯。

 バジリスクなどのモンスターに石化された探索兵がたまに転がっているらしいのだが…………


「うわっ、また石像じゃん」

「これで9つ目か…………おっさんの話だともっと少ないらしいんだが……………」


 おっさんから聞いた限りでは、2つ3つあれば多い方とのことだったが………


「バジリスクとやらがいるんじゃないの?」

「この辺りには余り出ないんじゃなかったか?」


 Cランクモンスター、バジリスク。

 様々な鉱物を喰らい、自身の体表に纏い、鎧状に連なる鱗を形成する全長10メートル近い化け物蜥蜴。

 視界に入ったものを石に変え腹を満たすそうだが。


「金属の鱗か……………刻めるのか?」

「いやいやいやいや、何言ってるのお兄ちゃん!?流石にその発想はキモ」

「来るぞ!!」

「ふみゅうああああ!?!?」


 何かを言いかけていたアヤメの首根っこを引っ掴み後退。

 一瞬の後、側面の壁が爆ぜ俺達のいた辺りが吹き飛んだ。

 土煙の中に見え隠れする灰色に鈍く光る体表。

 太く強靭な爪。

 ぬらぬらと紫色に光を放つ鋸状の尻尾。

 そして暗闇でなお赤黒く輝く両眼。


「こいつがバジリスクか!タイミング良すぎるだろ!!」

「どうするお兄ちゃん!?逃げる?逃げるよねぇ!?逃げよ!?」


 パニック状態なのか、やたら弱腰のアヤメ。

 だが。


「どうするもこうするも、戦うしかないだろ」


 コチラを油断なく睥睨するその姿からして、俺たちを見逃してくれる気は無さそうだ。

 そうであるのなら、こいつを殺して生きて帰るのみ。


「おかしい!その考えは明らかにまずいからってあぁ!?」

「勝負だ、クソトカゲ!!」


 喚くアヤメを放置して、不意討ちのように放たれた赤い光線を前方に回避。

 その勢いで抜刀し、斬りつけるも………………


「ツッ!?」


 紅い火花とともに弾かれる、渾身の一太刀。

 ならば。


「ゼァッ!!」


 首の鱗の隙間を狙って突きこんだ切っ先。

 溢れ出た返り血が視野を塞ぐが、お構いなし。

 カウンターとばかりに放たれた光線を、身を捻りながら避ける。


「お兄ちゃんそれ!大丈夫なの!?」

「…………大丈夫だ」


 アヤメの悲鳴に目をやれば、くすんだ灰色に変色して砕け落ちる篭手。

 こうはなりたくないな。


「ッ、オォ!!」


 紫色にぬめりながら、擦り上げられた尾を躱す。

 ふと見ると、触れた地面が煙を上げて溶けていた。

 ……………毒の類か。


「シェアァァ!!」


 眼前を通り過ぎた尾に、全力で刃を振り下ろす。

 一刀のもとに切断された尾が、慣性の法則に従って迷宮の壁に突き刺さる。

 惨めにもんどりうって倒れるバジリスク。

 距離を詰め、八双に構え。


「【乱れ牡丹】」


 バジリスクの前脚に、爆ぜる斬撃を連続で叩き込む。

 半ばから千切れる前脚。

 だが。


「……………再生してる?」


 突き刺したはずの首と切り裂いたはずの脚が、軋むような音を立てて塞がっていく。

 嫌らしくニチャリと嗤うバジリスク。

 絶句する俺達。


「マジかよ…………」

「お兄ちゃん。ここは逃げたほうが」

「……………斬り放題じゃねぇか」

「…………お兄ちゃん?」


 先の手ごたえは、割れながら会心のものだった。

 鱗を、皮を、肉を裂き、骨を抉る、その心地よさ。

 それが、奴の再生が続く限り、永遠に味わえる。

 素晴らしい。

 実に、実に素晴らしい。

 後退りするバジリスク。

 困惑するアヤメ。

 この衝動のままに切り刻もうとして…………あっ逃げた。


「待てオラッ、逃がすわきゃねえだろうがよぉ!!!」


 壁を掘り進み逃亡を目論むバジリスクの脚を、2本ほど纏めて切り落とす。

 叫ぶバジリスク。

 転げ回る奴に刀を構え………………およそ15分後、蹂躙は終了した。


















「うわあああん!お兄ちゃんが、お兄ちゃんがぁあ!!」

「はいはい、蜥蜴はもう倒したから。泣かなくていいから」


 泣き叫ぶアヤメをあやそうとするが、上手くいかない。


「ぴにゃあああああ!!!」

「……………どうすっかなぁ………」

「ヒグッ、ヒグッ……………うぅ」

「ようやく泣き止んだか………アヤメ。これ通したらいいと思う?」

「……………フーンだ」


 むくれるアヤメ。

 仕方が無いので背中に背負い、落ちていた鉱石は背嚢に入れておく。


「……………………お兄ちゃん?」


 アヤメから漂うプレッシャー。

 どうやら、酷くご機嫌斜めなようで。



「宿に帰ったらお話があります」

「……………分かりました」


 静かに怒るアヤメ様に戦々恐々としつつ、戦利品を担いで迷宮を後にした。















「バジリスクの買取ですか?確か、鉱石の採取依頼では?」


 困り顔の職員さんに事情を説明する。


「依頼中の遭遇ですか。分かりました。そちらの台においてください」


 職員さんに促されて、石の台の上にバジリスクの亡骸を置く。

 斬りすぎたせいで元の目方の半分も無いが、それでもかなり大きい。


「随分ぼろぼろですね。これなら……合わせて大金貨一枚と大銀貨一枚、銀貨2枚です」


 意外に高いな。


「こちらで全てになります。お確かめください」


 袋に入って渡された大金を持って宿に帰った。









 






「…………………………で、なにか言い分は?」

「本当に、申し訳御座いませんでした」


 宿の部屋で俺は、ベッドに腰掛けるアヤメ様に土下座していた。


「………………ねぇ。なんで私がこんなに怒ってるかちゃんと理解してる?お兄ちゃんが死にかけたからだよ」

「………………と、言うと?」


 見当違いの理由に呆然とする俺。


「そう、石化したのが篭手だったから良かったけど、生身ならに死んでる」

「あんなレーザーに当たる訳無いだろ」

「違う。傷つくような事しないでって言ってるの」


 困惑する俺。

 わけがわからん。


「この世界で血縁は二人だけ。たった二人だけの兄妹。だから私は死にたくないし、お兄ちゃんにも死んでほしくない」

「………………………」

「ねぇ、お兄ちゃん。私たち、今まで二人で何とかやってきたけど、一人なら今頃墓の中に入ってると思うの。そうだよね?」

「…………多分な」

「私たちは、一人じゃ何もできない。だから、お互い以上に、自分を大切にすること。分かった?」

「………………ああ、わかったよ」


 泣き出しそうな顔をしたアヤメに俺はこう返すしかなかった。


















 ………………………………致命的な嘘を抱えたまま。










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