町と迷宮とアイアンクロー
なかなか進まねえ
……………気まずい。
アヤメがやらかしてしまった。
こいつのコンプレックスを刺激したアイツラが悪いのだが、流石に遺灰も残さず焼き尽くすのはやり過ぎたのだろう。
何とかしてイメージの改善をしなければ。
じっちゃんが言ってた。
人間というのは第一印象が全てでは無いと。
此処からの対応と言動によっては、まだ巻き直し。
「アイツラ、私のこと子供扱いしやがって。死んで当然だよ!!」
頬を膨らませ、私怨と怒気を露わにするアヤメ。
…………仕方ない。
取り敢えず情報を手に入れないと。
「それでブライアンさんは何故襲われていたのですか?」
ジャパニーズスマイル、イズ、ジャスティス。
にこやかな笑顔を心掛けて話しかける。
ビクッとするブライアンさん。
「お、おそらく、積荷が狙いかと。私は普段奴隷を扱っているのですが………………欲に負けて別のものに手を出した途端、これです。やはり慣れないことはするものじゃありませんね」
衝撃の事実。
ブライアン、奴隷商だった。
穏やかな親戚のおっちゃんみたいだったから意外だ。
「…………それで、お二人はどちらから?」
………やっぱりそう来るよな。
正体不明のボロボロの二人組とか、怪しさ満点すぎる。
とはいえこっちも割と訳あり──────具体的に言えば敵国から勇者召喚されて逃げてきた逃亡兵──────だしな。
素直に話していいとも思えな。
「王国から逃げてきたんです」
「……………おいアヤメ。ちょっとこっち来い」
「ん?どしたのお兄ちゃん。そんな怖い顔してって痛い!?痛いってば!アイアンクローやめて!なんか変な音してるからぁ!!」
「それで、さっきおっしゃっていた探索兵と言うのは?」
「助けてブライアンさん!?」
潤んだ目でブライアンさんを見つめるアヤメ。
「あの、その、妹さんの方は……………」
「何か?」
「いえ、なんでも」
「ブライアンさん!?}
「探索兵というのは魔王軍物資調達部隊の通称です」
「魔王軍、ですか」
「痛い痛い痛い!嫌な音してるからぁアアァ!!」
アヤメの愉快な絶叫をBGMに会話は進む。
「え、ええ。主にダンジョンでの素材や食料の回収を目的にしております。基本的に誰でも入れて、功績を積んだものには、正規軍からのオファーが来ることもあります。」
流石異世界。
ダンジョンとかあるのか。
心臓がピョンピョンする。
…………………というか。
「誰でも、ですか?」
「はい。スネに傷があろうがお構いなし。物質不足を回避するには、多少のリスクは飲み込むべきでしょう?」
「あの、見知ったばかりの人間にそんな事言っていいんですか?」
アイアンクローを振り払い、俺から距離を取るアヤメの質問に対しブライアンさんは意味ありげに微笑み。
「恩人に礼を尽くすのは、商人の基本です」
………………………どうやら、良い人と出会えたらしい。
その後、「というわけでアギャンズ商会をどうかご贔屓に」とニヤリと笑うブライアンさんに気を抜かれつつ、俺達は町へ向かった。
赤茶色の煉瓦の建物。
石畳の道。
並んだ煙突から立ち上る煙。
行き交うカリャフリャーな頭髪の人たち。
少なくとも俺は、それを表す言葉を一つしか知らない。
「「町だ」」
「街ですから」
苦笑いのブライアンさん。
微妙に恥ずかしいな。
「……………そうだ。忘れるところでした」
そう言いながらブライアンさんが渡してきた袋の中身は…………金貨?
「餞別です。この道をまっすぐ進んで左に曲がったところに『背嚢と羅針』という宿屋があります。探索兵になりたての人がよく泊まる宿として有名です。何かあったらまた連絡を」
最後まで親切なブライアンさんにお礼を言って、宿を目指した。
疲れた………………。ラノベを補給しなければ。




