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『異世界狂騒録』~兄妹揃って異界に飛ばされたので好き勝手に生きる~  作者: 御星海星
幕間劇

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102/173

~~ユニーク5000人突破&100話突破&PV25000突破記念~~

過去一長くなった。(3000字ループ?知らんなぁ)

 閉じていた瞼をペチペチと叩かれる。

 鬱陶しく思って目を開けてみれば、自室のベッドに寝転ぶ俺の顔を覗き込むアヤメの姿。


「……………何かあったのか?」


 せっかくの迷宮帰りの休暇を満喫していた時間を邪魔した罪は重い。


「………お兄ちゃん、眠れなくなったんじゃなかったっけ?」

「長年の習慣ってヤツだ」


 実際、眠れなくなっても其処にベッドがあれば寝っ転がって目を閉じてしまうのだから、業が深い。

 それでも眠れないのは辟易するが。

 窓の外を見ればちょうど朝日が昇るところ。

 こうなってから、夜が明けるのがやたら遅くなった。

 というか。


「何か用事があったんじゃないのか?」


 流石になんの用もなく俺を起こすことは無いだろうと思い、尋ねてみる。


「………………ねぇ、お兄ちゃん。今日が何の日かわかる?」


 唐突な詰問。

 俺の生存本能が「ミスったら死ぬ」と、声高に叫んでいる。

 よくよく考え、悩み、頭の中で選択肢を並べ、取り捨て選択(トラッシュバック)を繰り返して──────────────


「………………この世界に来てから一年が経った?」

「…………」


 黙りこくるアヤメ。

 アカン、ミスったっぽい。

 イヤ、まだ挽回のチャンスはあるはず!


「爺ちゃんの命日」

「…………」

「父さん母さんの命日」

「…………」

「お向かいの田中さんが全国区のテレビ番組に出演した日」

「…………」

「あ、アレだろ?!俺とアヤメが初めて会っ」


 殴り飛ばされた。

 右ストレートで。






















「って言う事があったんだ。何か心当たりがあったら教えて欲しい」


 ブチギレながら「仕事してくる」と言って部屋を出ていったアヤメ。

 早急に対策を取るべく、俺は女性陣に事情を説明していた。


「知るか」

「僕に聞かれてもねぇ………」

「私も、お二人に会うまでの事はそれほど知りませんし………………」 


 頼みの綱の女性陣には一瞬で斬り捨てられた。

 終わったかもしれない。


「いや、本当に。何か手掛かりだけでもいいから」

「レン、アヤメの誕生日はいつ?」


…………………ヤッバイ。

 完全に見落としていた。


「………………………死んで悔い改めるべき」

「無茶言うんじゃねぇ」


 不死者に向かって酷な事を。

 そしてどうしよう。


「あの~、レンさん?今からでも誕生日会をすればいいんじゃないでしょうか?」

「それだ!!」


 パーティーの準備をするべく街に出た。













「さて、と。何から買うか……………………」


 市場に並んだ商品を眺める。

 ピクルス、キャベツに玉葱、大蒜。

 フランスパンモドキと複数の香辛料。

 塩胡椒に霜降り肉………………でこそないが特大サイズの猪(多分魔物)肉を5枚ほど買う。

 更に発見したサワークリームモドキも購入。

 ついでに瓶詰のスープストックも人数分。

 上等な赤ワインも3本ほど。

 檸檬にバター、鉄でできた厚めの大皿も購入。

 ジャガイモにブロッコリー、ニンジン。こんなものか?

 蜂蜜漬けの瓶詰めリンゴに小麦粉。

 卵とキュウリも買っておく。

 何故か売っていたパーティー用の三角帽子とクラッカーも入手。

 結構カネがかかるがアヤメのご機嫌取りのためと割り切る。


「後は作るだけか………………」


 意外に重くなった買い物袋を引っ提げて、自室に戻った。














 室内に放置して温めておいたバターにレモンの絞り汁を加えてよく練り合わせ、威力を抑えた【氷棺】で凍らせる。

 贅沢な気もするが、これで暫くは融けずに持つだろう。

 今の時刻はちょうどおやつ時。

 アヤメが帰ってくる前に仕上げないといけない。

 リリアナ曰く、「夕方あたりには戻る」らしいから、あまり時間が無さそうだ。

 ジャガイモを適当に洗い、包丁で皮を剝いていく。

 ブロッコリーは軽く洗って済ませる。

 ニンジンも洗って皮を剥き、鍋に水を汲み火にかけて沸騰させる。

 レタスは直前で千切るとして、次はどうしたものか。

 取り敢えず生地から作るか。

 たっぷりの粉とほぼ等量のバター。

 ボウルに小麦粉を適量振るい、残りのバターを………もう全部使い切るか。

 サイコロカットにして潔く放り込む。

 木べらでバターと粉を擦り混ぜながらダマにして、冷えた水を少しだけ入れる。

 ヘラで混ぜ、練り過ぎないように気を付けながら、ひとまとめにする。

 四角く形を整えて、冷蔵庫に放り込んだ。

 今のうちに鉄皿を火にかけて温める。

 鍋が沸いたタイミングで野菜類を投入し、火を通す。

 少しだけ塩を加えて放置。

 吹きこぼれる寸前で火を止め、鍋から引き上げる。

 まだ湯気が立っている野菜を手早く切っていく。

 ニンジンとブロッコリーを取り分け、ジャガイモを包丁の腹で潰す。

 前に市場で発掘してきたマヨネーズモドキをボウルに投下して、ジャガイモを加える。

 後は……………………


「あのー、レンさん。何か手伝いましょうか?」


 肩を叩かれて振り返れば、おずおずと尋ねるリリアナの姿。

 ちょうど良いな。


「悪い、コレ(キュウリ)切っておいてくれ」

「分かりました。これでいいんです、よ………ねぇっ?!?!」

「痛ってぇ?!」


 ゴチン、と鈍い音がして、目の前に火花が散った。

 一拍ほど遅れて、サクリといい音がして俺の肩口に包丁の刃が突き刺さる。

 何事かと振り返ってみれば、部屋の端の方で縮こまるリリアナ。

 床に放り出されたキュウリ。

……………………もしかしなくても。

「ホレ」


 リリアナの目の前にキュウリを差し出す。

 「フシャアアァァッ!!」と、猫丸出しの奇声を上げて後ずさるリリアナ。

 四つん這いになり、尻尾をピンと伸ばしたまま俺を真っ直ぐに睨んでいる。


「………………リリアナ。別の作業を頼めるか?」

「……………………はい」


 床に落ちたキュウリを拾って水で洗い、輪切りにする。

 水気をきり、塩を振ってよく揉んでボウルに突っ込み、冷蔵庫に入れる。

 ………………少しばかり早い気もするが、別に問題無いだろうと思い、オーブンに火を入れる。

 冷蔵庫から生地を取り出し、粉を振って1cm程の厚さに延ばし、三つ折りにして更に延ばす。

 同じ工程を5,6回繰り返し、円形に整える。

 パイ皿に油を塗って生地を乗せ、蜂蜜漬けのリンゴをタップリと。

 薄く延ばした生地を被せて、卵黄を塗り、パイをオーブンに入れる。

 ニンジンとブロッコリーを温め直し、塩を振る。

 フランスパンを切り分け、パン籠に盛り、ピクルスと玉葱を刻んでサワークリームと混ぜ合わせる。

 寸胴鍋を取り出し、スープストックを入れて温めておく。

 フライパンに油を引いて火をつけ、大蒜を刻んで投下。

 いい香りが漂い出した辺りで猪肉を焼き始める。

 片面が焼けたところで引っ繰り返し、塩胡椒を振ってこんがり焼く。


「リリアナ。ポテトサラダの盛り付け頼む」

「分かりました」


 ワイングラスを用意して、机に皿を並べて、サラダを盛っていくリリアナ。

 手伝ってくれる人がいると楽だな。

 スープを深皿に注ぎ、木の皿の上に熱した鉄皿を置き、熱々の肉と付け合わせの野菜、固めておいたレモンバターを乗せる。

 小振りの壷にサワークリームを入れ、テーブルの中央に。

 ナイフとフォーク、スプーンを並べ、スープを運ぶ。


「レン、準備終わった?」

「出来れば僕もご相伴に与りたいな~、なんて」


 何食わぬ顔で乱入してきたギンカとオネットさん。

 二人に三角帽子とクラッカーを手渡す。

 悪そうな顔でほくそ笑む二人。

 豪勢な夕食の準備を終えたあたりで…………………


「ただいま~………リリアナちゃん……何かいい匂いしない?」

「お帰り、アヤメ」

「お兄ちゃん?どうしたの?」

「いいからこっち来い」



 戸惑うアヤメの手を引いて奥に連れ込み、そのまま上座の席に着かせる。

 状況を把握出来ていないアヤメに三角帽子を被せる。

 示し合わせたように全員で三角帽子を頭に乗せて………………


「「「「ハッピーバースデー!!!」」」」


 パンッ!とクラッカーが鳴り響き、紙吹雪が飛び散る。

 キョトンとするアヤメ。


「え、えぇっと、お兄ちゃん?」

「誕生日おめでとう、アヤメ」

「……………ありがとう」

「ねぇレン、早く食べよう?」

「……………………おい」


 急かすギンカに呆れつつも、手を合わせて。


「いただきます」


 ナイフとフォークを手に取り、肉を切り取って口に運ぶ。

 ………………うん、存外に上手く焼けたな。

  口内に広がった肉汁と脂、旨味の塊を飲み込み、茹でたニンジンをフォークで突き刺して齧る。 

 優しい甘みを堪能しつつ、スプーンでスープを掬って飲む。

 コンソメのような深く濃厚な味わい。

 バゲットにサワークリームを塗って食べる。

 サッパリとしたソースとザクザクの食感を楽しみながらポテサラを口の中に放り込む。

 安定の美味しさ。

 鉄板の上の肉汁をバゲットで絡めとり、噛み締める。

 少々お行儀が悪いが咎める者も無し。

 隣を見れば、サワークリームを口の端にくっつけたまま食事を続けるアヤメ。

 コイツらしいな。

 結構大変だったが頑張った甲斐があった気がする。


「………………レン、おかわり」


 そんな事を言われて向こうを見れば、早々に自分の分を食べ終えたギンカ。

 作った奴としてはうれしい限りなのだが……………………


「ねぇよ」

「…………………つまらない冗談はやめて?」

「材料費嵩むんだよ。…………………後でデザート出してやるから我慢してくれ」

「本当?!」


 ガタッと音を立てて身を乗り出すギンカ。

 大人しくしなさい。

 そして慌ててバゲットを掻きこもうとして喉を詰まらせるアヤメ。

 若干ヒヤッとしたが、自力でワインを流し込んで事無きを得ていた。


「お兄ちゃん、デザート持って来てくれる?」

「まだ食べ終わってない人がいるだろ」


 俺はもう食べ終わったが。

 そう言いながら周りを見渡そうとして……………全員が完食していることに気付いた。

 いや、うん。

 マジか。

 結構な量があったと思うんだがな。


「……………わかった、持ってくる」


 席を立ってオーブンを開き、パイ皿を取り出す。

 正直不安だったが、少なくともまともな見た目をしている。

 テーブルに皿を持っていき、包丁で切り分け、三角に切り取った熱々のパイを小皿に取り分ける。


「お兄ちゃんってパイ焼けたっけ?」

「意外にどうにかなったな。流石にホールケーキは無理だがコレくらいならどうにかなる」


 パイを乗せた小皿をアヤメの前に差し出す。

 嬉々としてパイを口に運ぶアヤメ。

 そのまま、にへらと気の抜けた顔になった。

 上手く行っていたようで何より。

 ……………………そうだ。


「アヤメ、今朝はゴメンな」

「ほへ?」

「いや、誕生日忘れててさ」


 自分の妹の誕生日を忘れるとか、真面目に兄失格な気がする。


「ああ、別にいいよ?私もやり過ぎたし」


 あっさり許された。

 なんでや。

 そして何かに気付いたように、あくどい顔をするアヤメ。


「あぁ、でも。出来たらお高いお菓子でも奢って欲しいなって」

「許して下さい、何でもしますから」


 おどけたように低頭しながら言う俺。

 とてもいい笑顔で笑うアヤメ。

 呑み、ふざけ、はしゃぎ、莫迦騒ぎの中、夜は明けていき───────────────




スターゲイジーパイ

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