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第六話 王都散策

森を抜けてみると、リエル王国らしき国が見えた。

入り口らしき門の近くでは多くの馬車がしきりに行き来していることから、非常に栄えた国

であることを想像させる。



「多分あれ、リエル王国でいいんだよな…」



すると、ヴェルグは答えた。



(あぁ…以前見た時とは見た目が少し違っているが、所々の特徴は合っている…あの塔を見ろ)



「ん…?」



見上げてみると、リエル王国には巨大な2本の塔がそびえ立っていた。



(あの塔は“リエルの塔”と言ってな…中は階段が螺旋状に続いていて、頂上は展望台のように

なっている。日中は人間共に解放されているが、夜になると衛兵以外は立ち入り禁止だ…)



「詳しいんだな…前ここに来たことがあるのか…?」



(あぁ…私に手を出してきたこの国の魔法師を消すために一度だけな)



「……お前がやってきたことをとやかく言うつもりはないけど、前みたいに勝手に俺の体を

乗っ取らないでくれよ?人を殺されたりして共犯になるのはごめんだからな」



(安心しろ。私は手を出されなければ何もしない主義だ。しかし、手を出されれば容赦はしない…)



「お前…俺の話聞いてたか……?」



そんな話をしながら王国の門をくぐってしばらく進むと、道なりには多くの屋台が立ち並んでいた。

王国と言うだけはあり、屋台は多くの人々で賑わっている。俺の世界で言うところの浅草の

仲見世通りと言ったところだろうか。屋台の食べ物はどれもとても美味しそうだ。



(ちょっとお腹が空いたな…)



屋敷で食べた真紅(クリムゾン)()(ボア)の肉が忘れられなかった俺は、気が付くと

同じものがないか屋台をくまなく探していた。



「お…!あれは…」



俺は屋台の中の一つに、肉のお店を発見した。屋台からは煙がモクモクと上がっている。

どうやら目の前で買った肉を焼いてくれるお店らしい。



「すみません。真紅(クリムゾン)()(ボア)の肉ってありますか?」



俺は上司へ挨拶をするようなテンションで、店主の女性に威勢よく尋ねた。

すると、店主はあきれたような表情(かお)をして聞き返した。



「あんた、真紅(クリムゾン)()(ボア)のことを知ってて言ってるのかい?」



「いえ、詳しくは知らないんですけど…」



店主は俺の返事を聞くと溜め息を一つ吐いて、語り出した。



真紅(クリムゾン)()(ボア)はねぇ、活火山の近くの温度の高い場所に生息するから、

おいそれと手が出せないんだよ…。だから道に迷って山から降りてくる個体を狙うんだけど、

そういう個体は子どもばっかりで食えたもんじゃなくてねぇ…」



「相当レアな肉ってことですか?それなら…」



「――レアどころの話じゃないさ!この肉屋の店主のアタシだって食べたことがないんだよ!

あいつら火口付近にしか生えていない上質な“烈火(れっか)魔草(まそう)”を食べて育つから、子供を捕まえて育てるにしてもお金がかかるし、なにより餌が手に入らないんだよ…」



話を遮られてしまった。店主の肉語りは止まりそうにない。



「あの…」



「――それに真紅(クリムゾン)()(ボア)は子どもでも結構狂暴でねぇ。成熟した真紅(クリムゾン)()(ボア)はもっと狂暴だろうさ…活火山みたいな過酷な環境で戦ってくれる魔法師なんているわけないし…第一お金が…」



(めんどうだなこの女…木刀で叩き斬るか?)



「――おいそれはやめろ」



俺は店主に聞こえないように小声で呟いた。ヴェルグに木刀を握らせると間違いなく肉屋の店主はミンチになる。



「――あの…店主さんのオススメでいいです!」



俺は店主に話しかけた時の倍くらいの声量で叫んだ。



「え、あぁ…すまなかったねぇ。職業柄肉のことになるとつい熱が入っちまって…」



店主は申し訳なさそうな顔をしながら(うつむ)いた。

この人には間違っても真紅(クリムゾン)()(ボア)の肉を食べたなんて言えない。



「オススメなら味で言ったらこの(レッド)()(ボア)の肉が一番だろう。まぁ真紅(クリムゾン)()(ボア)とまではいかないけどねぇ…ちょっと高いけど大丈夫かい…?」



店主は身を乗り出して、木製のショーケースの中のばら肉を指さしながら、そう言った。



「はい、大丈夫です。それを1人前でお願いします」



俺がそう答えると、店主はしゃがんでショーケースからばら肉を取り出した。



「一人前が大体200gだから、代金は銀貨10枚と銅貨5枚だよ。でも兄ちゃんは特別に銀貨10枚ね!」



時間を取らせてしまった後ろめたい気持ちがあるのだろうか。店主は眉をひそめながら笑顔でそう言った。



「ありがとうございます!」



俺はそういいながら、おもむろに金貨の入った小袋を取り出した。



(確か銀貨10枚は金貨1枚と同じってエストが言っていたな…)



「じゃあこの金貨1枚でお願いします」



「はい、丁度ね…ってこのお金…!」



店主は金貨を受け取ると、目を大きく見開いて驚きの声をあげた。



「ん?どうしました…?」



「いや、こんな昔のお金は40年ぶりくらいに見たから驚いちまって。多分1500年くらい

前に使われてたものだねぇ…一応使えるけど、こんなレアなお金、使っちまっていいのかい…?」



「あぁ…全然大丈夫ですよ。僕コレクターとかじゃないので…」



「そうかい…?じゃあ肉を焼くからちょっと待っててな?」



店主はそういうと、ショーケース横の金網でばら肉を焼きだした。

俺はその隙に小袋の中身の金貨を見てみると、驚くべき事に気付いた。

なんと金貨はさっき支払いに使ったものと全て同じものだったのだ。



(お前…その金貨はどこで手に入れた…?)



珍しくヴェルグも驚いたようだ。



「あぁ、エストに貰ったんだ。屋敷に眼鏡をかけた黒い髪の男の人居ただろ?…ってか俺の中

にいるお前なら分かると思うんだが…」



(私はお前がその木刀を握った瞬間に目を覚ました。ゆえに、それ以前の話は知らない)



「なるほどね……おっ…!」



話をしているうちに、さっきまで赤かったばら肉は、おいしそうな茶色の暗褐色に変わっていた。

肉のこんがりと焼けた匂いが俺の食欲をそそる。



「はいよ。(レッド)()(ボア)の肉200gね。近くにきたらまた寄ってよ!!」



店主は焼けたばら肉を紙のお皿に乗せると、そう言いながら笑顔で俺に手渡した。



「はい。近くに来た時はまた必ず!」



俺はそう言うと、肉屋を後にした。

物語の続きをどうしようかなぁとか考えながら原稿を書いていると色々想像が膨らんで気付くと一日終わっているという…(笑)

なので5日毎に更新していけたらいいなと思っています。

5人もブックマーク登録して頂いて本当にうれしいです…!

他の方もブックマーク,評価などをして頂けたらとても励みになるのでよろしくお願いします。

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