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スライムだけに使える最強チート!  作者: 六傘ヒロシ
第1章 紺碧の神子降誕編
17/42

16:勇者選抜武闘大会

前回のあらすじ

ギルドで大金を手に入れ、ルンルンの私たちに緊急事態発生!

広場に行ってみると……。


【ルインズの町、噴水広場】


 ガヤガヤ。

 広場の周りに人だかりが出来ている。

 その向こうに、巨大な馬車がデンと止まっていた。

 馬車の周りには、甲冑(かっちゅう)を身にまとった屈強な兵士たち。


「なになに? なんかのイベント?」


 人混みの中から首を伸ばしていると、


「ほら、さっさと歩け!」


 ゾロゾロ。

 兵士に叱咤されて、私と同じ年頃の女の子たちが続々と馬車に乗せられていく。

 彼女たちの顔には見覚えがあった。

 私と同じ宿に泊まって、代わり番こにデートをしていた百合ハーレム少女たちだ。

 そんな彼女たちが、どうして馬車に?


「マリア!」


 人混みの中から、1人の住人が飛び出した。

 馬車に乗せられようとしているマリアの父親のだろうか。

 しかし、


「ええい、下がれ下がれ!!」

 ガシャンガシャン!


 兵士たちは、持っていた槍をクロスさせてマリアの父親をガード。

 

「お父さん!」

「うう、マリア!」


 無理やり馬車に乗せられるマリアに父親は涙を流す。

 そんな理不尽な状況を呆然と見つめる住民たち。


「ちょっと、みんなをどこに連れていく気よ!」


 見かねたエスカが、少女たちの元へ駆け寄ろうとする。

 だが、


「エスカ、やめるんだ!」


 ストップをかけたのは、町長でエスカの父でもあるヤスタカ。


「父さん、なんで止めるの!?」

「エスカや、わかっておくれ……これも、町を守るためなんだ」

「どういうことなの?」

「それは……」


 ヤスタカが口ごもった、その時。


「そこでコソコソ何をしている!」


 凛とした声が響き、1人の兵士がこちらへ歩いてきた。

 他の兵士たちとは色違いの赤いマントを羽織っている。


「あんたねぇ! 女の子たちを馬車に乗せてどうするつも……むぐ!?」


 赤マントに食ってかかるエスカの口をヤスタカが抑えた。


「申し訳ありません隊長殿! 口の利き方を知らない娘でして……!」

「むぐむぐ……た、隊長?」


「いかにも!」


 そう言うと赤マントの兵士は、ヘルメットでも脱ぐように兜を外した。


「うおおおおおお!」


 住民たちの、もっぱら男たちから歓声が上がった。

 鎧の中にいたのは少女だった。

 それもかなりの美人の!


 年の頃は17、8だろうか。

 透き通るような金色のロングヘアを後ろでキュッと結びポニーテール。

 ざんばらの前髪にキュッとつり上がった眉。

 野性味溢れるブルーの瞳の片方を眼帯で隠している。

 小さな口からはチラリと覗く八重歯。


 そんな少女は、胸を張って高々に言った。


「私はメンブレン王国近衛騎士団一番隊隊長、フレア=クライネリッシュである。この度は週末に開催される勇者選抜武闘大会の参加者を募るために、このルインズへ来た!」


「メンブレン王国……? 勇者選抜武闘大会?」


 初めて聞く言葉に首をかしげる私。

 すると、


「フン……そんなことも知らないとは、貴様どこの田舎者だ?」


 フレアと名乗った金髪の赤マントは、あからさまにバカにしたような態度。

 ヤスタカがフォローを入れる。


「この方は、最近この町に来たばかりで……あまり世間のことをご存知ないのです。でもご安心ください、悪い人ではありません。ただ、ちょっと女の子をみると、すぐに胸を揉んだり、アーンを要求したりするだけです」

「ただの変態ではないか! まぁいい……ついでだし、説明してやろう」


 フレアは、得意げな態度で話し始めた。

 彼女の話を要約すると、こうだ。


 メンブレン王国は、東の大陸の中央に位置し、大陸のあらゆる政治的実権を握っている大国。

 そんなメンブレン王国は東の大陸の支配を企む魔王、ジョゴラムを倒すために年に一度、勇者を派遣しているという。

 魔王を倒した勇者には、莫大な賞金、メンブレン王国の高級住宅街の永住権、姫との結婚などなど様々な報酬が与えられるのだそうだ。

 なので多くの人々が勇者に憧れるのだが、誰もが誰も勇者になれるというわけではない。

 年に一度開催される勇者選抜武闘大会で優勝した者だけが勇者と認められ、旅に出ることができるのだ。

 その大会も、誰でも出場できるというわけではなく、国王軍が東の大陸にある市町村に従者を派遣し、その地域で活躍している強者たちの中のほんの一握りがスカウトされ、晴れて大会の予選に出場できるというわけ。



「どうだ? わかったか?」


 話を終えたフレアは、やりきった感満載のドヤ顔。


「はぁ……あの、一ついい?」


 私は、手をあげて質問。


「なんだ?」

「ということはアナタたちは、そのなんちゃら大会の出場者をスカウトしに来たわけだよね?」

「そうだが?」

「それなのにどうして、女の子たちが馬車に乗せられてるわけ? 言っちゃ悪いけど、あの娘たち強そうに見えないよ?」

「ふふふ、田舎者にしてはなかなか鋭いな。実は大会に出場できるのは、ステータスBランク以上の者だけだ。残念ながら、この町のギルドに登録されている住民たちのステータスは、すべてDランク以下! つまり、この町に大会に出場できる権利を持つ者はゼロということだ。そういう場合はどうするかというと、町娘たちをチアガールとして大会へ派遣するのだ。この町の少女は美人ぞろいだから、むさ苦しい大会に華を添えてくれるだろう」


 フレアが、馬車に乗り込む少女たちを見ながら満足げに言った。

 すると突然、ヤスタカが会話に割り込んでくる。


「いやはや、町長としても若い娘たちを王国へ派遣するのは不本意ですが、大会が終了したらまた戻ってくることですし、中には王国へ行ってパフェやランドを楽しみにしている子もいますから互いにWin−Winです」

 

 なるほど。

 ていうか、じゃあさっきマリアの父親が飛び出したのはなんだったんだ?

 マリアは、大会が終わったら帰ってくるんでしょ?

 短い間でも娘と別れるのが嫌だったの?

 それとも、娘がチアガールの格好するのが許せなかった?

 どんだけ親バカなのさ!


 などと考えている私をよそに、ヤスタカは続ける。


「逆にですね、娘たちを派遣しなかった場合、町には罰金が課せられます。ここは、従うしかないのですよ」

「その通りだ、ヤスタカ殿。そして、このままではルインズには莫大な罰金が課せられるだろう!」


 そう言うと、フレアはヤスタカをギロリ。


「えええええ、なぜですか! 言われた通り、女の子たちを馬車に乗せているじゃないですか!」

「馬鹿者! あれをよく見ろ!」


 フレアは、馬車に並ぶ少女たちの列の最後尾を指差した。

 きちんと整列した美少女たち。

 その最後尾にいたのは、私を紺碧の神子と勘違いした黒い布を身にまとった老婆だった。


 確か……グランマ!


「ヤスタカ殿、なんでチアガールの列に婆さんが並んでるんだ!?」

「え? ダメですか?」

「当たり前だろ! 年齢オーバーすぎるわ!」

「でも、事前にもらった勅命(ちょくめい)書には年齢のことは書いてありませんでしたよ!?」

「書いてなくても常識的に考えたらわかるだろ! あんな婆さんにチアガールとか無理だ!」

「心配しなくても大丈夫です! グランマはちょっとやそっと踊ったくらいじゃ死にません!」

「それを見た観客の心臓が止まるわ! とにかくあの婆さんは、チェンジ! おい、誰か婆さんを列から外せ……あ、でもくれぐれも彼女のプライドを傷つけないようにな。さて、ヤスタカ殿……」

「は、はい!」

「婆さんが抜けたせいで、メンバーに1人空きが出た。代わりの若くて可愛い娘を!」

「ひいいい、勘弁してください! この町には、もうそんな娘はいません!」

「何を寝ぼけたことを言っている、そこにいるではないか!」


 そう言うと、フレアは私の方をチラリ。


 え? え? え?

 なになに? 私にチアガールをやれってこと?

 そ、そりゃあ、今の私は超絶美人なわけだから?

 そんな私が、きわどい衣装でお尻をフリフリしながら踊ったらもうあれよ。

 老若男女、鼻血ブシャーで失神。武闘大会に血の雨が降ることマストなわけで?

 まぁ超絶美人といえども中身は24歳だから、この歳になって人前で踊るというのは恥ずかしさもあるんだけど?

 それでも、兵隊さんがどうしてもって言うなら、うーんまぁ考えてあげないこともないかな~?


 という面倒臭い感じで、もみあげをクルクルしながらモジモジする私。

 するとフレアは、そんな私を無視してガシッ!!

 隣にいたエスカの手を取った。


「君、ぜひチアガールとして大会で踊ってくれ!!」


エスカがチアガールに!?

うおおおおおおおおおお、やったぜ!!

読んでいただきありがとうございました!

次回更新は、明後日の19時ごろになります。

ブクマとか色々ありがとうございます。ポイントが増えるとワーイ、嬉しいですね!

評価感想などなどお気軽にどうぞ〜!!

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