プロローグ
初めまして!
至らないところ多々あると思いますが、よろしくお願いします!
「不採用」「不採用」「不採用」
不採用の金太郎飴みたいな状況が続いていた。
この日も、面接でダメダメだった体を引きずってアパートに帰宅する途中。
ズルッ。
たまたま道に落ちていたバナナの皮を踏んでしまい勢いよく転倒!
後頭部を強打して意識を失った。
……。
……。
「おーい、もしもーし!」
頭の奥で声がして、私は目を覚ます。
「あ、起きた。おはよう眠れる森の美女様……って、美女でもないか」
「ああん? なに失礼なこと……」
そこまで言って、私は言葉を失った。
目の前には、オフィスデスクの上で行儀悪く胡座をかいた高校生くらいの少女。
野球のユニフォームを着てヘルメットをかぶり、手には釘バットを持っている。
やんちゃそうな目つきに、V字型の口、腰まで伸びたロングヘア。
「アンタ……だれ?」
「見ての通り神様だけど?」
「いやいや、ただの野球好きの女子高生にしか見えんわ」
「ふふふ、なかなか鋭いわね。実は本当の神様が出張中で、私は臨時よ。ほら野球の格好してるから、代打の神様なんつって」
「全然うまくないんだけど?」
「ちょっと~! 死んでるやつが偉そうに意見しないでくれる~?」
「死んでるって……誰がよ」
「アンタに決まってんじゃん」
「は?」
「体、見てみ?」
「ぬあああああああ!?」
下を向いた私は、絶叫した。
私の体はツイッターによくある”白ハゲ漫画”のように、凹凸がなく全身真っ白で、服も着てなかった。
そんな真っ白な自分は、周りに暗幕が張られたような漆黒の空間の中で、椅子に座り代打の神と名乗る少女と対峙していたのだ。
「な、なにこれええええ!?」
「だから死んだだって。ほら、ちゃんと死亡履歴書もある」
代打神は机の上に置いてある紙を一枚、手に取ってヒラヒラ。
「水守真由、24歳。就職面接からの帰り道……ぷぷ」
「あ! いま、バナナの皮で滑ったくだりで笑っただろ!」
「面白い死亡動機じゃん」
「やかましい! あああああ、もう最悪!」
頭を抱える私。
頭部に髪の毛はなく卵のようにツルツルで。
「ほらほら、元気出して。死んじゃったもんは、しょうがないじゃない?」
「ねぇ……これから私どうなるの? 天国? まさか、地獄ってことないよね? 違うよ、小6の時に金子先生のマイカーのフロントガラスを割ったのは、私じゃなくて吉岡だから!」
「何言ってんの? つーか、天国とか地獄じゃなくて、転生だから」
「て、転生?」
「今の時代、ほとんど異世界転生よ。なろうとか見てみ? 石を投げれば、異世界転生に当たるから」
「何の話?」
「コホン、とにかくアンタは、これからとある世界で暮らしてもらうことになるんだけど、その前に色々カスタムができるから」
「カスタム?」
代打神が言うには、転生に伴って体のスペックを色々変更できるようだ。
そこで、私が考えたカスタマイズがこちら。
性別:女
年齢:17歳
身体的特徴:黒髪ショートの中性的王子様タイプ。
能力:最強レベルの能力値に加え、あらゆる高度な剣術、魔法を使える最強チート。別名エクストレーマ
「あと空を飛べたり、目をこらすだけであらゆる敵の弱点がわかるようなアナライズ能力が欲しい! あとは、料理の腕前限界突破でしょ? それと……」
「まだ、あるの?」
「だって、さっきの話じゃ異世界には凶暴なモンスターがわんさかいるんでしょ? それなりの準備をしとかないとね! 薬草とポーション50個追加、キャラメルラテ味で!」
「めっちゃノリノリじゃん……」
「よく考えたら私、死ぬ前はろくな日々じゃなかったんだよね。大学では友達できないし、単位足りなくて留年するし、就活は全く上手くいかずに不採用続き。もう世間から”お前なんか必要ない”って言われてるみたいだった。だから、異世界で一からやり直して有意義な人生を送りたい! 最強チートで力なきものを救い、人々から尊敬されるような人物になりたいの!」
思わず椅子から立ち上がって、拳を高々と突き上げる私。
そんな私を見て、目の前の代打神は笑顔で言った。
「アンタ……何かムカつくよね」
「……え?」
「なに華麗に自分語りしてんの。白ハゲになると自分語りしたくなるの? はっきり言って、アンタ大して苦労してないじゃん! それなのに何ちゃっかりチート能力手に入れようとしてるわけ? アンタだけじゃないわ、ここに来る連中はみんなそう! 判で押したように、チート、最強、チート、最強! ああああああ、もうホント毎日耐えられない! 神様、いつになったら帰ってくんだよ! もうさ、イライラしてきたから、アンタの最強チート能力ナシでいい?」
「……はああああ!? いいわけないでしょ! 最強チートナシでどうやって異世界で暮らしていくのさ!」
「地道にレベル上げしたら?」
「いやいや、その途中で死んだらどうすんのよ! 復活呪文も使えないんでしょ!?」
「っさいなー! アタシは毎日毎日、アンタみたいな連中の相手でうんざりしてんのよ! さっきだって、ほら”今スライムに転生するのが流行ってるんでスライムにしてくれ!”とかふざけたこというヤツが来たわ! あーいう流行りに乗っかろうとするヤツは、スライムになった瞬間、ぶっ潰してドラゴンの餌に……そうだ!!」
「え?」
「そうスライム! スライムだけに、最強チート能力が使えるってことにしよう!」
「いやいやいやいや! スライムに最強チート使っても意味ないだろ!」
「一見、意味のないようなことにこそ、物事の本質はある!」
「なにIT社長の演説みたいなこと言ってんだ!」
「あとスライムにしかチート能力使えないって、ウケるし!」
「そっちが本音か!」
「じゃあ、そういうわけで、頑張ってね水守真由ちゃん♪」
そう言うと代打神は机からヒラリと降りて、私に向かって釘バットを振り上げる。
「え? ちょ……代打神さん? なんで笑顔でバット振り上げてんの? ま、まさか……ちょ、ぎゃああああやめてえええええええ!!」
ガンッ!!
読んでいただきありがとうございました!
次回、いよいよ能力発動!!
本日中に更新します!
コメント等々お気軽にいただけると嬉しいです!!