第8話 旅の道中
「美味い‥‥!!」
「ありがとうございますっ、アーロンさん」
アーロン・スタークという細身の美形なシリウスの友人に出会い、現在の私達が出会ったあの木から2週間をかけてベルンイン王国に向かって旅をしている。シリウスとアーロンさんは仲が良くてよく喋って居て私は二人の話を聞いてるのが好きでよく耳を澄ませている。
「にしても何回食っても本当にアランちゃんの料理は飽きないし美味いな‥‥俺が今まで食ってたモノは何だったんだ‥‥」
「あぁ‥‥アーロンの言う通りだ。」
2人は私が手早く作ったハニーラビットのサンドを食べながら、話を盛り上げている。
「美人で料理は美味い‥‥余の女達が羨ましがる要素が多すぎるだろう」
「そうだな‥‥その通りだ」
アーロンさんは私を褒めてくれる、嬉しいけれどどんな反応したらいいのかわからないがそこに気を留めずに、次々と話題を出していくアーロンさんは喋るのが好きな様で、どれもみな面白い。私は自分の料理を美味しいと言ってくれる人がもう一人増えてさらに嬉しかったが、最近ではシリウスがアーロンさんの言う‥‥男の顔をするものだから正直怖くてビクビクしていたけど彼のお陰で今は平気だ。
順調な今の旅はもうすぐ王国へ着く事で終わりになってしまうが、これはいい思い出になると確信した。別れは寂しいけれどまた会えると思うとそれほど寂しさを感じないのだ。
「あと2~3日でベルンインに着くなぁ‥‥日数的には結構経っているのに体感的にはほんの数日にしか思えない。これもアランちゃんのお陰かもしれないな」
「いえ‥‥私はそんな、アーロンさんやシリウスが楽しくお喋りをしてくれるからだと思いますよ?」
私はこの旅の最中に出来た思い出に返りながら、2人の優しい男性に出会えた事とセイラさんという綺麗な銀髪の女性に出会えた幸運と、逃げ出してよかったというあの時の私の決断に感謝をした。
「ハハッ、アランちゃんはベルンインについたら何をするんだい? こんな話をしてなんだがアランちゃんは王国で料亭を開けるほどだと思うぞ? 正直こんなに美味いメシを作れるなんて思ってなかったくらいだし、もしかしたら城に呼ばれるかもしれないなっ!」
「そんな私なんて‥‥」
「それは俺も思って居たぞ、アラン、君ならやれるさ」
シリウスはアーロンさんと一緒に旅をするようになってからめっきり私に近づかなくなった、心地の良い低い声で私を怖がらせないようにしてくれている彼には感謝してもしきれない、助けてくれた事と何も持っていない私にお金を使って服をくれたこと。なんなら旅の道中でお小遣いとしてお金をくれる程だ、本人曰く、料理代、らしい。
「お二人はどうするんですか?王国についたら」
「うん? そうだなぁ‥‥俺は元々ベルンイン王国の人間だししばらくは居るつもりだ、シリウスはどうするんだ?」
「俺はすぐさまベルンインで買う物を買ったら北に行くよ、お袋と親父が帰ってこいってうるさいんだ。」
シリウスは旅を続けて帰るそうだ、私はどうしようか‥‥正直な話で孤児院に帰るということも選択肢にある、一旦顔を出しておいた方がいいのかもしれない。
「まぁなんにせよあと少しの間よろしくなっ!」
「あぁ」
「はいっ」
もうすぐ懐かしい所へ帰れる、そう思うとウキウキした。