第6話 やっぱり罪人じゃないかっ!!
ロリコン、それは、敵
「ハァハァ‥‥で‥‥? どういうことなんだシリウス。」
「‥‥説明した通りだ、彼女は俺がたまたま野宿していた所で見つけたんだ。」
最初2人は取っ組み合いをしていたが、疲れたのだろう‥‥シリウスが私と出会った事を説明し、ようやく細身の男性は落ち着いたのだ。
「はい、その時に助けて頂いたんです‥‥家では暴力を振るわれていて‥‥耐えられなくなって逃げだした所を‥‥」
「そうなのか‥‥よし、ちょっとアランちゃんの家を教えてくれ、ぶっ殺してくるから」
いきなり物騒な事を言うシリウスと一緒に最近まで旅をしていたこの男性、名前はアーロン・スタークと言うらしい、焚火を起こすまで辺りは薄暗く月明りだけでは姿を完全に見ることは出来なかったがようやくしっかりとこの目で見る事が出来た。茶髪で女である私も綺麗だと思うほどの美形だった。シリウスは黒髪でアーロンさんほどではなくても整った顔立ちをした素敵な男性だ。
「いえ‥‥そこまでして頂かなくても‥‥お酒を飲まなければ暴力などを一切振ってきませんでしたから‥‥」
「だからって酒を飲んだくらいでアランちゃんみたいな可愛い子に手を挙げる男なんて許せねぇ。シリウスがやらねぇなら俺がやってやる!!」
私の話を聞いてくれたアーロンさんは激しく怒り私がオジサンに感じていた怒りを代わりに表してくれているかのように思えたのだ、誰かに分かってもらえただけでも嬉しいのに怒ってくれるなんて‥‥今まで耐えてきてよかった‥‥なんて思えたのだ。
「落ち着けアーロン、俺だってやってやりたいが‥‥アランが止めるんだ、それだけで十分だって、そんな事をしたら俺が罪人になってしまうと‥‥」
「お前はすでに罪人だと思うけどなぁ!! こんな小さい子をテメェっ‥‥!!」
「えっちょっとシリウス‥‥」
何故か再びアーロンさんに火をつけてしまったシリウスは罪人だと言われて私の裏に隠れてしまった。
「ち、違うんだ‥‥これには訳が‥‥」
「その子の裏に隠れるんじゃねぇ!! 殴れねぇだろうがっ!!」
「二人とも落ち着いてください‥‥」
私を中心に後ろと前で騒がしい二人は一向に落ち着く様子が無くて、少し疲れて来た。
「聞けばお前‥‥アランちゃんは15歳だって‥‥? お前は幾つだあぁん!? いくら結婚出来る年齢でもなぁ‥‥いくらなんでも小さすぎるとは思わねぇか!?」
「そ、それは思ったが‥‥でもなぁ‥‥!?」
「そんなに小さいですかね‥‥私」
アーロンさんは事あるごとに私を小さいという、背も胸も‥‥あまり大きくはない、だけどそんなに言わなくてもいいじゃないか‥‥それにシリウスもそう思って居たらしく否定はせずただ弱々しく反抗する程度だった。
「そんな小さいアランがいいと俺は思うっ‥‥」
「ほら見ろやっぱり罪人じゃないかっ!!」
「‥‥小さいっ‥‥」
シリウスは褒めたつもりだろうが今の私にはなんとも思わない、寧ろ怒りが湧いてきてしまうのだ。第一私を挟んで大声を出さないで欲しい、そしてシリウス‥‥後ろに隠れないでほしい。
「アランちゃんは確かに花の様に綺麗で可愛らしい‥‥彼女の銀髪は見ているだけで癒されるし、顔に至っては月夜に照らされてさながら妖精だと思ったくらいだ、だけどなぁシリウス‥‥お前勘違いしてるぞ? アランちゃんはお前の事なんて好いちゃいねぇんだぞ! 勢いに任せて押し倒そうとしたテメェの事だ‥‥んなこともわかっちゃいねぇんだろ!!」
ここぞとばかりに私の事を褒めちぎるアーロンさんの言う事は正直当たっていた、シリウスには感謝しているけど‥‥その、私自身が恋というものをわかっていないのもあって正直戸惑っている。男性に抱きしめられた事なんて一回もないし‥‥
「大体お前は勘違いばっかりしやがって‥‥!! アランちゃんがお前の嫁になる訳ねぇだろ!!」
「かはっ‥‥!?」
私が物思いにふけっていたら後ろに隠れていたシリウスが倒れ込んでいた、一体どうしたのだろう‥‥? このまま私がどうこうしたってこの二人は収まらないと思うので先に眠らせてもらう事にした。途中眠くなってきた所を騒がしく喋る二人の声は朝まで続いたようだ。
ロリコン、それは、友