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私と冒険者と日常  作者: アイリス卿
王都ベルンイン編
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第5話 懐かしい記憶

 村から出て3日ほど経った旅の道中、大きい木を見つけて今夜はここで野宿することとなった私達は星が出ている夜空を見ながら少し早い思い出話をした。


「そう言えばアラン、君は小さい頃はどんな子だったんだい?」

「何?急に‥‥」


 シリウスは唐突に、小さかった頃の私を聞いてきたのだ‥‥貴方が聞いても面白くもない話だと思う‥‥退屈させてしまう気がするけど話すことにした。


「うーん‥‥私は小さい頃ベルンイン王国のハズレにある孤児院に居たの、そこで毎日お母さんと一緒に子供達のお世話とか、ごはんの準備のお手伝いをしてたかなぁ。」


 思い出してみると懐かしい記憶が蘇ってくる、たまに暇があって子供達と一緒に孤児院の近くにある小さな湖に遊びに行ったり、私が風邪をひいてしまって寝込んでいる時に子供達が山へ行って身体にいい野草や綺麗な花を取ってきてくれた事、お母さんが忙しいのに傍に居て看病してくれたこと。些細なことかもしれないけど‥‥幸せな記憶。


「ご飯の作り方とか食べられる野草とかお母さんに教えてもらった、鶏の絞め方も‥‥最初は怖かったけど食べて生きていくにはそうしていかなきゃいけないから覚えたよ。子供達も可愛かった、お姉ちゃんって言って抱き付いてくるんだよ」

「‥‥そうか」


 シリウスは私の目を真剣に見つめて来る。ジっと見られてると‥‥ソワソワしてしまう


「あの‥‥そんなに見つめられると恥ずかしい‥‥」

「‥‥すまないっ、そのっ、君が楽しそうに話すからつい」


 シリウスはたまに凄く真剣な眼差しで私を見つめてくる、顔が近くなって恥ずかしいからすぐ私が逸らしてしまうのだけど‥‥鼻息が少し荒くなったシリウスが少し怖いのも理由だ。


「シリウスは‥‥どんな子供だった?」


 数か月一緒に居るけど彼の事は全く知らなかった私は、これを機に聞いてみたのだ。


「俺は平凡な家に生まれた次男だったんだ、昔はよく兄貴と一緒に山へ遊びに行ったりしたなぁ‥‥帰りが遅くなってお袋に良く怒られてた、その時は兄貴が俺を庇って倍怒られて、あとで申し訳なさから自分のオヤツをあげたりしたよ。」

「いいお兄さんだね、私は兄弟が居なかったからそういうの羨ましいなぁ」


 弟分や妹分は孤児院に居た頃よく一緒に遊んだりしたなぁ。みんな元気かなぁ?


「そうか? 兄貴は今ベルンイン王国で近衛兵をやってるんだけど、早く結婚しろってうるさいんだよ‥‥」

「そうなんだっ、いいじゃないそんな風に言ってもらえて」


 私も良い人と結婚して子供が欲しい、幸せな毎日を送ってお婆ちゃんになりたい。


「そうでもない‥‥親父やお袋からもせっつかれてるんだ‥‥家に帰るのが嫌だよ本当に。」


 シリウスはため息を吐きながらも楽しそうに話をしてくれた。なんだか羨ましいな。


「親父もいい歳なんだが、いつまで経っても家具職人として頑張ってるよ、いい加減休んでくれてもいいんだがなぁ‥‥」

「ふふっ、シリウスに似て良い人なんだろうね、私も会ってみたいな」


 私のその言葉を聞いたシリウスは私をハッと見て、近づいてきた。


「‥‥その、アランがいいなら」

「‥‥へっ?」


 シリウスは私を抱きしめたのだ。


「えっ‥‥ちょっと‥‥」


 っ‥‥!? 急にっ‥‥なんで!?


「おーいこら‥‥人様が休んでるって言うのにやかましいんだよ」

「「へっ!?」」


 近くから声が聞こえてびっくりした。どこから聞いてたの!? それよりどこにいるの!?


「それにお前シリウスじゃねぇか‥‥しかもこんなとこで女を‥‥」

「‥‥お前まさかっ!?」


 木の後ろからガサっと音を立てながら私達に姿を見せたのは、細身の男性だった。


「めちゃくちゃ可愛くて小さいじゃないかっ‥‥!? 許せねぇ!!」


 私は抱きしめられているのを見られるのが恥ずかしくてシリウスを突き飛ばした、突き飛ばされたシリウスに細身の男性は声を大きくあげて飛びかかったのだ。


「テメェシリウスこの子をどこから攫ってきた!! どう考えてもヤベェだろうが!! 俺にもお前みたいな羨ましい事させろやぁああ!!」

「ま、待て話せばわか‥‥」

「黙れぇぇ!! これから何をしようとしていたんだぁっ!? あぁっ!? 良い事しようとしてたのかあぁ!?」

「だから待っ‥‥」


 飛び掛かった男性はシリウスの知り合いのようで、シリウスを揉みくちゃにしていた。


「お前とついこの間別れて1人気ままに王国目指して旅してたら‥‥こんなとこで女連れの誰かさんに会うなんてなぁ!!」

「だから待てって‥‥うぷっ」

「待てるかハゲェ!! 大体お前こんな小さくて色白でかわいい子をぉ‥‥!!」

「これには訳がっ‥‥」

「うぉおおおおおおおお!!許せねぇっ!!」


 2人は転がりながら取っ組み合っていた、どうやら二人は取っ組み合うほど仲がいいみたいだ、ほっといてあげよう。


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