第37話 両親への道1
「久しぶりだな、アランとこうして旅をするの。」
「そうだね、シリウス。」
ベルンイン王国から旅立って1週間が経過した今日この頃、シリウスが唐突にそんなことを言い出すから、以前、2人で旅をしていたことを思い出す。
あの時はお互いに‥‥よそよそしいというか、遠慮がちだったというか、少し距離があった。
今でこそ、手を繋いで歩いているけれど、あの時の私達では考えられなかった事だと思う。
「あの時食べた君の作ったサンドは美味かった。また食べたいよ。」
「あれ気に入ったの?」
「あぁ、感動するほど美味かった、俺の大好物だよ。」
一緒に旅をするようになって食生活が改善されたシリウス、コケていた頬は膨らみと色を取り戻していったっけ。
私でも役に立てることが出来てよかったなってハッキリ思う。
「また機会があれば作るね。シリウス」
「あぁ。頼むよ。」
ニコニコしながら、彼は前を向いて笑う。
その横顔は見慣れているはずなのに‥‥あの時の夢に出て来たシリウスを思い出しちゃう。
頭がどうかしちゃったのかと思うくらい、思い出してしまう。
夢に囚われてるのかもしれない。
悪い夢ではないと思うんだけど‥‥私を離してくれない。
隣で歩く、ニコニコした彼に、私の心根がバレないように気を引き締めないとね。
「そうだアラン。もうすぐ村に着くから、今日はベッドで眠れるぞ。」
「ホント? 身体のあちこちが痛いと思ってた所なの‥‥助かる。」
どうやら今日はベッドで眠れそうだ。
どんな村なんだろう? 美味しい料理を食べられるかな?
「村の名前は、なんて言ったかな‥‥あんまり覚えてないな。」
シリウスは覚えていないらしい。ついてからのお楽しみというヤツだ。
「どれくらい休んで行くの?」
「そうだな‥‥2日くらいか? 目安はそのくらいだよ。」
「2日かぁ、じゃあ食料買うのは最後の日でいいね。」
他にも助かることがある、シリウスはとてもよく食べるので、持ち運びに適した食材や保存食が底を尽き掛けていた。
次はもっと多く持っていこうと思って居た所だし、今回は多めに買い込んでおこう。
それにしても不思議な人だとシリウスの事を思う。ミューラさん達の所でご飯を食べて居るときはおかわりなんてほとんどしないのに、私と一緒に旅をしているとモリモリおかわりをする。
食べ過ぎだよって注意をしないといつまでも食べてるくらいだから‥‥シリウスのお腹はどうなっているんだろう? 案外、ぶよぶよしてるのかもしれない。まぁ‥‥確かめようなんて思ってないよ?
「村についたらまず宿の確保だろ‥‥? それから‥‥」
顎に手を当てながら歩く彼を横目で見ながら、笑ってる顔も素敵だけど、そうやって何か考えて居る顔も嫌いじゃないんだなぁって思っちゃう私が居た。




