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私と冒険者と日常  作者: アイリス卿
王都ベルンイン編
29/47

第29話 家族

「ワシが何故、この姿なのか、わかるか‥‥?」

「わかりません‥‥」

「そうだろう‥‥アラン、精霊が見えるだろう?」

「はい、見えます、今も‥‥」


 精霊が見える、それはセイラさんが教えてくれたことだった。


「ワシは今年で160歳になる‥‥160年間ほとんどがこの姿だ。」

「160‥‥?!」

「そうなのだ、驚くのも無理はない。この王国の代替わりを3回見てきている。それだけ長生きをしているのだ。」

「‥‥わぁ‥‥」


 月並みな感想、それしか湧いてこない。


「お前の身体‥‥半分は人間で、半分は妖精なのだよ‥‥アラン。」

「‥‥はっ‥‥?」

「ワシも元は妖精でな。人の姿になることも出来る。どれ‥‥」

「あっ‥‥」


 一瞬、背中を預けていた存在がポっといなくなり、気づいた時には誰かが居た。


「わぁ‥‥」


 そこには綺麗な顔立ちをしている男性が居た。

 どことなく、落ち着いた雰囲気と、私と同じ銀髪で、青い目を持っている男性。


「ワシだよ‥‥アラン。」

「‥‥‥‥冗談ですよね?」

「本当だアラン‥‥」


 抱き止められていた腕から離れて、まじまじと顔を見て、何かの夢ではないかと疑うが、真実らしい。


「あの‥‥ホントに私のお爺ちゃんなんですか‥‥? 誰かと間違えてたり‥‥」

「そんな訳なかろう‥‥孫を見間違えるほど、老いぼれちゃいないよ。さぁ、膝においで。話の続きをしよう。」


 あぐらをかき、膝に来るようにとんとんと叩く。

 言われるがまま、背中を向けて座り、抱き止められるように、腕を回される。


「どこから話そうか‥‥話したいことがたくさんありすぎて困るな‥‥」

「私は何が何だか分からないです‥‥色々ありすぎて‥‥」

「済まないな‥‥だが聞いて欲しい、爺ちゃんに付き合ってくれ‥‥」


 どこか切なそうに言われてしまえば、聞くしかない。例え頭が追い付かないとしても。


「お前の婆ちゃん‥‥ワシの妻にはもう会ったか‥‥?」

「‥‥‥‥??」

「セイラだよ‥‥アラン。」

「‥‥‥‥え!?」


 セイラさんには当の昔に会って居た、私が説明をすると‥‥


「そうか‥‥やはり気にしていたのだな‥‥」

「気にしていたって‥‥何を‥‥?」

「ワシと‥‥セイラの子供、お前の母親は、妖精の血を引く者にしては異端だった‥‥ワシたちと同じ力が使えなかったのだ。当時はそのことで荒れに荒れていたのだよ‥‥」

「‥‥‥‥お母さんが‥‥居るんですか?」

「あぁ‥‥‥‥居るとも、父親も居るとも‥‥」


 頭が回らなくても、その一言で、涙が出て来た。


「私にも‥‥本当のお母さんとお父さんが‥‥居るんですか‥‥?」

「居るとも‥‥‥‥居るともさ‥‥‥‥」

「‥‥よかった‥‥‥‥」


 よかった、その言葉を言うのがやっとだった。

 泣いて居る私を後ろから抱きしめてくれる私のお爺ちゃんという人の温もりが、言われてみれば懐かしさを感じる‥‥


「ワシたちは必死に、守ろうとした‥‥だが、妖精の王はワシらを一族から追放し、お前達親子を離れ離れにしてしまった‥‥‥‥必死の思いで、何とかお前だけでもと、セイラと血眼になり探し、見つけて保護した。だが、その時はワシらも異端の一部として追われていたのだ。その時に、セイラと話し、お前をここの孤児院に預けて‥‥ワシらは機を待ったのだ‥‥」

「‥‥‥‥」


「妖精の長は己の過ちに気付き、ワシらを異端として扱うことがなくなったのがつい最近の出来事でな‥‥ようやく会いに行く事が出来ると思った矢先‥‥お前を目にしたとき、男に言い寄られていた‥‥あの時は済まなかった、カッとなってしまってな‥‥」

「‥‥あっ、いいんです、傍から見ればそう見えてたのかもって‥‥思ってましたから‥‥」


「‥‥お前の両親についてなんだがな‥‥力が使えず、妖精の血を引く者としては異端と話しただろう‥‥? 力が使えないせいで、娘はお前を守れなかった‥‥そしてワシらに託し、一旦は逃げることに専念したのだ‥‥お前の父親は人間だが、誠実で、良い男なんだ‥‥セイラと、ワシとで、近いうちに会いに行こう‥‥今はお前の心の準備と、整理が出来ていない状況だから‥‥少し休んでからな。」


 そっか‥‥会いにいけるんだ‥‥


「アラン‥‥?」


 孤児院のお母さん、そして私のお母さん‥‥どちらも私にとってはお母さんだ‥‥お母さんが二人も居るんだ‥‥お父さんも‥‥お爺ちゃんも‥‥お婆ちゃんも‥‥


「‥‥‥‥眠ってしまったか‥‥守ってやれなくて‥‥済まなかった。今度こそ絶対にお前を守る‥‥」


 私にも‥‥ちゃんと家族が居るんだ。

 お爺ちゃんの言葉を聞きながら、どこか懐かしい温もりが、私を眠りの世界へと誘っていった。



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