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私と冒険者と日常  作者: アイリス卿
王都ベルンイン編
28/47

第28話 突然

「ほう。」

「あ、あの‥‥ジっとみられると‥‥」


 私が纏う服は、いつも来ていたシリウスの買ってくれた可愛らしいものではなく、背中が見える大胆な青いドレス。

 ヒールは高く、見上げる高さだったジーナさんが少しだけ見やすい。


「金の意匠と、その真ん中にあてがわれた青い宝石、そしてドレスを身にまとったアラン、ソナタは美しい。」

「うぅ‥‥」


 ストレートなジーナさんの物言いは嬉しいけれど、恥ずかしい。

 

「では行こうか、作法などは要らない、普通にしていてほしい。」

「は、はい‥‥」


 私の知って居る普通がどこか遠くに連れていかれてしまい、せっかくお風呂に入った所で、緊張が高まるばかり、汗が噴き出そう。


「国王様、アランが到着致しました。」

「あぁ。入れ。」


 扉が開けられ、中には武器を持った人達が柱の傍にズラ―っと並んでいた。

 粗相の1つでもしてしまえば、即刻‥‥牢屋に連れていかれてしまいそう。

 おずおずと歩き、王様の前に到着する。


「ソナタがアランだな?」

「はい‥‥」

「ふむ、聞いていた通り、美しい娘だ。」

「ありがとうございます‥‥」


 国王様は、楽にしてくれ、そう言って、座って居る立派な椅子に腰をかけて肘をつく。


「此度はすまんな、大変驚いただろう。まずは謝罪させてくれ。すまなかった‥‥」

「そ、そんな! 王様が謝ることなんて‥‥」


 誰にでも頭を下げるという訳ではなさそうな王様は、あっさりと頭を下げて謝罪をしてくれる。

 逆に申し訳なさがこみあげてきて。顔をあげてください、そう伝えるのが精いっぱいだ。


「それでは本題に入ろう。」

「はい‥‥」

 

 私をここに呼んだ理由をこれから話すとのことだ。

 どんなことでも、真摯に受け止めよう。


「実はな‥‥」

「はい‥‥」


 息を飲み、次の言葉を待つ。


「ベルンイン王国の象徴であり、崇拝する、青い目のライオン。彼が‥‥ソナタに会いたいと言ってな。こんな騒ぎになってしまった。」

「‥‥へっ!?」

「今日、もうすぐ祭りが行われるが、その前にここで会って行って欲しいのだ。」

「は、はぁ‥‥」


「この王宮には庭園がある、そこで待つとのことだ。すぐ向かってくれ。」

「はい‥‥」

「ジーナ。案内せよ。」

「ハッ!」


 青い目のライオンが、私に会いたい‥‥? 何故?

 そんな事を考えつつ、王様にお礼を言って、ジーナさんについていく。

 

「ここだ、私はここにいるから、終わったら声を掛けてくれ。」

「はい‥‥」


 連れて来られた庭園は、手入れが入念にかつ頻繁に行われているためか、どこにも色褪せた花は無く、色鮮やかで、初めて見る噴水の近くにもふんだんに花と緑が萌えている。

 近くまで来ると、コポコポと流れる水と、静かな音だけが聞こえてきて、慌ただしかったさっきまでの事を忘れさせてくれるような気がした。


「久しぶりじゃの‥‥アラン。」

「‥‥?!」


 やっと落ち着く事が出来て、まったりとしていた私、静かになった心臓は一瞬にして先ほどみたいにバクバクと逆戻りだ。


「驚かせてすまんの‥‥」

「は、はい‥‥この間は‥‥すみませんでした。」

「良いのだ。こちらこそ済まなかった。年甲斐も無く大きな声をあげたわい‥‥」


 お年寄り独特な言葉遣いと、ゆっくりとしたペース。

 何だか少し安心した。


「まぁ‥‥その、なんだ。座って話をしよう。」

「はい‥‥」


 庭園の中には柔らかい芝生が、均一な高さに切り揃えられていて、こちらの手入れもぬかりが無かった。

 お年寄りのライオンは、芝生のほうに行き、猫の様に、後ろ脚を投げ出し、前足をきっちりと揃えて、お腹を地に置いて座った。


「その‥‥私、こんな服装だから‥‥」

「良いんだアラン‥‥ここに来ておくれ‥‥。」


 尻尾でトントンと、自分の前に座るように促される。

 良いと言われたからドレスのまま、ヒールを脱いで、ライオンの所に腰かけた。


「寄りかかってくれないか‥‥?」


 向き合う形で最初は座って居たが、お年寄りのライオンは自分に寄りかかってくれという‥‥


「でも‥‥」

「いいんだ、寄りかかってほしい‥‥」

「‥‥はい。」


 言われるがまま、おずおずと背中をお年寄りライオンの横腹に預ける。


「あぁ‥‥懐かしい、懐かしいのぉ‥‥」

「懐かしい‥‥?」

「前にもお前をこうしてワシに寄りかからせ、眠らせたこともある‥‥大きくなったなぁ‥‥」

「‥‥そうなんですか‥‥? ごめんなさい、覚えてなくて‥‥」


 不思議な事を言うお年寄りライオン。小さい頃の事らしいから、私には身に覚えがない。


「良いのだ‥‥またこうしてお前に会えた事、お前を見ることが出来た。これほど嬉しくなったのはお前が生まれた時以来だ‥‥」

「‥‥え? 私が生まれた時に?」

「そうだ‥‥ワシにとってはつい昨日のような気もする、だが確かに長い時間が経ち、大きくなったお前を見て、歳を取ったと実感する。」


 お年寄りライオンは目を瞑り、昔の事を思い出すように話を続けた。


「幾つになる? アラン。」

「15です‥‥」

「15‥‥15か‥‥父と母に会えずに‥‥ずっと1人で育ったのだな‥‥」

「‥‥一人ではありませんでした、孤児院で育ててもらったんです‥‥お母さんって呼んでた人が居るんです、優しくて、本当に母の様だと思って、一緒に暮らして居ました。でも、途中からオジサンに引き取られて‥‥今に至ります。」

「そうか‥‥」


 お年寄りライオンは尻尾で私を撫でる、柔らかくて気持ちいい。


「ワシは‥‥お前にずっと会いたかった。」

「‥‥あの、どうしてなんですか?」

「‥‥ワシはお前の祖父なのだ。爺ちゃんだ。孫よ。」

「‥‥はい?」


 何を言ってるんだろう?


「順を追って話そうか孫よ‥‥時間はある。」

「‥‥‥‥??」


 これから話される内容が、まさかと思って居たことなんて、思わなかった。

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