第27話 混乱
正直、料理の味はわからなかった。
私はそれなりに作ったりもするし、食べたりもする。
だけど‥‥見た事もない料理を食べても、味なんか頭に入ってこなかった。
「食事は済んだか?」
「はい‥‥ありがとうございます。」
理由はもう一つある、メイドの女性達と、ジーナさんがずっと居るからだ。
ジーナさんはこちらをジっと見て居たし‥‥メイドさん達もこちらを見て居た。こう見られて居たら入ってくるものも入ってこない、緊張してしまう。
「では風呂と着替えを済ませよう。後は頼む。済み次第報告を‥‥」
「畏まりましたジーナ様。アラン様‥‥? こちらへ‥‥」
メイドさん達についていき、見た事もないような大きなお風呂まで連れて来られた、私はそこで驚くことになる。
「あ‥‥あの‥‥何を‥‥?」
数人係で私の服を脱がせようとしてくるのだ。
「お召し物を脱いでいただかないと‥‥湯へ入ることが‥‥」
「あ、あの大丈夫ですから‥‥自分で脱げますから‥‥!!」
言葉で抵抗しても無駄だった、相手はメイドさんという仕事を何年も続けている人達で、私が喋って居る間にはもうすでに、私を守る服なんてものは失くなっていた。
「お体を清めさせていただきます。」
もはや言葉を言っても無駄だと思い、お願いしますとだけ言って、されるがままになっていた。
「では湯の方へ‥‥」
丸いすべすべとした大きな容器に、お湯を張って居る印象を受けるが、正面には窓がついていて、ここから見える景色、ベルンイン王国の街並みを見る事が出来るようになっている。
いつかシリウスと見た丘の上からも綺麗だったが、王宮から見える街並みも、魅入ってしまうほどの眺めだった。
ボーっとしていると、いつの間にかメイドさん達は私の後ろで凛とした姿勢のまま、手を前で組み、私を見下ろしていた。
私がそれに気づいて、上がろうとすると‥‥
「ごゆっくりどうぞ」
そう言われてしまい、上がれなかった‥‥見られながらだと落ち着かない‥‥あぁ‥‥カールさん達の所に帰りたい‥‥カレンちゃんとお風呂に入ってゆったりしたい‥‥
「あ、あの‥‥もう逆上せそうなので‥‥」
「畏まりました。」
私が耐えられなくなり、上がると、これもまた数人係で綺麗な真っ白なタオルで身体を拭かれる。
もう何が何だがわからない、混乱が混乱を呼んで、眩暈がした。
「大丈夫ですか? アラン様。」
「い、いえ‥‥馴れてないので‥‥びっくりしちゃって‥‥」
迷惑をかけるわけにはいかず、何とか持ち直して、脱衣場へと戻ってくると‥‥
「こちらの衣類をお付けください。」
見た事もない下着と、見た事もない衣装が、私を待っていた。




