第22話 朝チュン
「‥‥‥‥んっ‥‥」
小鳥達の鳴き声で目が覚めた私は、うっすらと目を開けると‥‥そこにはシリウスの寝顔があった。
孤児院の子供達の世話をしているときの朝、眠っている子供達のあどけない寝顔を思い出す。
今のシリウスみたいに、唇をプクっと突き出して、スースーと寝息を立てているのだ。
たまに涎を垂らしながら、だらしくなく口を開けて眠っている子も居たっけ‥‥お腹を出して、可愛かったな。
「‥‥‥‥? お腹に変な感触‥‥」
何かお腹に当たる物がある、堅い‥‥なんだろう? というか、シリウスに腕枕をしてもらいながら、片方の腕で抱きしめられる形となっている事から、昨日、私達は一緒に眠ったんだろうか。
初めて飲んだお酒が美味しくて、ほろ酔いという状態と酔っぱらってしまった状態を経験したことまでは思い出せるけど、なんでこうなっているのかはわからない、でも目覚めがスッキリしているから、良い事だったんだろうな。
「シリウス‥‥? 起きて。」
抱きしめられている腕は力強い訳ではないけど、何となく抜け出したくないと思って、彼を起こすことにした。
「ねぇ、シリウス。」
「‥‥ん」
「朝よ。起きて。」
「‥‥あぁ‥‥」
彼はものすごく眠そうな顔で、目は半開きの状態。
頭がボーってしているのか、私の顔をよく見て、目を開けては瞑って、開けては瞑ってを繰り返している。
「ねぇ‥‥起きて。」
「‥‥あぁ‥‥起きるよ。」
シリウスはようやく起きる気になったのか、身体を起こし、頭を掻いている。
私の視線はというと‥‥
「‥‥‥‥」
彼のズボンの一部分が大きくなっている。
私も頭がいまいち起きていないからか、それを理解するのにかなりの時間を要した。
「‥‥? どうしたアラン‥‥‥‥っ!!」
「あっ‥‥えと‥‥」
私の視線に気づき、向いている方向に目を落としたシリウスは事の重大さに気付いたのか、慌てて私に見られない様に背中を向けた。
「あ、いやこれは、すまん、どうしようもないんだ。」
「え‥‥え‥‥う、うん。あの、ごめん。」
「いや、こちらこそすまん‥‥」
シリウスは耳が少し赤くなっていた。
「お、男の人だもんね、仕方ないよね。」
「‥‥そ、そうだ。」
「えっと‥‥苦しくない?」
「‥‥苦しいが、馴れてる。」
「そ、そう‥‥」
なんだろう、気まずいというか‥‥何とも言えない雰囲気が流れていく。
「あ、あの私、顔洗ってくるね‥‥?」
「あぁ‥‥俺もあとで行くよ。」
「う、うん。」
彼の顔を、恥ずかしくて見れず、その場から逃げる様に私は洗面台へと向かった。
そこでは先にミューラさんが起きていて、身支度をしていた。
「おはようございます、ミューラさん」
「おはようアランちゃん、顔赤いけど、どうしたの?」
「え、えと‥‥その‥‥」
「‥‥‥‥どうしたの??」
「起きたら‥‥目の前にシリウスが居て‥‥えと‥‥恥ずかしくて‥‥」
「‥‥‥‥シリウス君‥‥?? ‥‥っ!?」
ミューラさんがびっくりした様子で、私の両肩を掴んで、すごい形相をしていた。
「何かされたの!?」
「え? あ、いやその何もされてないですけど、どうやら昨日は一緒に眠っちゃったらしくて‥‥」
「一緒に眠った!?」
「はい‥‥昨日お酒を飲んでみたくてお願いしたんです、酔ってたから‥‥あんまり覚えてないんですけど‥‥」
「‥‥それで!? 何もされてないのよね!?」
「え、えぇ何も‥‥どうしたんですか?」
「い、いえ何でもないわ、ちょっと私、シリウス君の所に行ってくるね? どこに居るの?」
「貸してくださった私の寝ているお部屋に居ると思いますけど‥‥」
「そう‥‥朝ごはんはもうできてるから、先に食べててね」
「あ、はい、ありがとうございます」
小走りでシリウスの元に向かったミューラさん、その後聞こえて来たのは‥‥
「ね、義姉さん? ど、どうしt‥‥」
「シリウス君!! 何もしてないのよね!?」
その後、小1時間ほど、2人は戻ってこなかった。




