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私と冒険者と日常  作者: アイリス卿
王都ベルンイン編
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第19話 再会

「アラン、起きろ。」

「ん‥‥‥‥」


 シリウスの背中は広くて、おんぶをしてもらっていると必ずと言っていい程眠ってしまう、今日も眠ってしまった‥‥


「おかえりぃ! ご飯出来てるよアランちゃん!」


 ミューラさんが私達を見てパァっと咲いたような笑顔を見せてくれる、夕ご飯の支度を全てしてくれたようだ、今日は甘えることにしよう、変わりに洗い物はしっかりしないと‥‥シリウスが私を背中から降ろすと、カレンちゃんが私に抱き付いてきた。


「アランお姉ちゃんだいじょーぶ?」

「うんっ、大丈夫だよ、カレンちゃんのお陰で元気になったよ。ありがとう。」


 膝をついてカレンちゃんを抱きしめると、胸に顔を埋めて来るカレンちゃん、可愛くて頭を撫でていると、えへへっ、と喜んでくれた。するとテーブルの方からカールさんが‥‥


「おかえりアランさん、手を洗って食事にしよう、シリウスも‥‥」

「あぁ‥‥兄貴。」

「ご心配をおかけしてごめんなさい、お見苦しい所も‥‥」

「良いんだ、さぁほら、席に着きなさい。」


 カールさんに続いてアーロンさんが、シリウスに近付いて、何やら伝えていた。

 私はカレンちゃんの手を取って手を洗いに行き、テーブルに着いた。

 今日、アーロンさんとシリウスは外で飲みに行くらしい、なので今日は4人での夕ご飯だ。


「それじゃあ、頂きます。」

「頂こう。」

「いっぱい食べてね~!」

「いただきまーす!」


 今日のメニューは夕方に焼き上げるという王国で人気のパン、生地はほんのりと甘くて、バターをつけて食べるととても美味しい。

 さらに、おかずはロールキャベツだ。ベルンイン王国の黒いキャベツに巻かれた牛肉は、程いい柔らかさと肉汁で、キャベツの柔らかさと塩が利きいくらでも食べてしまえそうだ。

 スープにもキャベツが使われているが、今日はウインナーとジャガイモ、ニンジンタマネギが使われていて具沢山のポトフとなっている。


「美味しいです、ミューラさん。」

「そぉ? ありがとー! まだまだあるから食べて食べて~♪」


 お言葉に甘えて、お腹が空いていた私はスープをお代わりした、カレンちゃんもスープをおかわりして、美味しい♪ と言いながら頬っぺた一杯に詰め込んで食べて居る。

 カールさんは優しく目を細めながら私達を見て、美味しいかい? と聞いてきてくれる。


「はい、とても美味しいです!」

「いっぱい食べて、元気を出しなさい、明日はミューラについて畑に行ってくるといい、手伝ってあげてくれ」

「はい!」


 ミューラさんもカールさんと同じで、優しそうな笑顔で、私を見つめてくれていた。

 食事を終えて、今日のお礼として、洗い物を任せてもらい洗って行くと、玄関が開く音がして、シリウスとアーロンさんが帰宅したことに気付いた。


「おかえりなさい2人とも‥‥って結構飲んだの‥‥?」

「あぁ‥‥ちょっとな」

「ただいまぁ~アランちゃんのエプロン姿‥‥可愛いねぇ!」


 アーロンさんはベロンベロンに酔っ払い、ソファーに寝転がるとそのまま眠ってしまった。

 ミューラさんは馴れているのか、眠りこけるアーロンさんに布団をかけ、カールさんは水の入った瓶とコップを机に置き、再びテーブル席でお酒を飲み始める。


「手伝うよ、アラン。」

「ありがと、シリウス。」


 シリウスからほんのりお酒の匂いが漂ってくる、私が洗った物を慣れた手つきで拭いていくシリウス、私達を見ていたミューラさんが、なんだか夫婦みたいね? と言って、私は少し恥ずかしくなって、やめてくださいと言った。

 シリウスは、ハハッと笑い、手を止めずに拭いていく。


「アランさん、洗い物が終わったら少しお酒の相手をしてくれないか? シリウスもな。」

「あ、はい、今行きますー」


 洗い物を終えて、カールさんの晩酌の相手をしている時、ミューラさんが‥‥


「あのね、アランちゃん?」

「はい? なんですか?」


 少し口ごもるミューラさんを待っていると、カールさんが先に口を開いた。


「アランさん、私達の娘にならないか?」

「‥‥‥‥はい?」

「カール!! 私が言おうと思ってたのに!!」


 カールさんが言った言葉を頭の中で反復していると‥‥


「アランさん、私達はね?もう一人子供が欲しいんだ、ミューラはもう子供を授かることが出来ない身体になってしまっていて、カレンも大きくなったら弟か妹を‥‥兄弟を欲しがるようになる、ミューラはそのことでひどく落ち込んでしまっていたし、つい最近からようやく元気になってきたんだ。」

「‥‥ごめんねアランちゃん、カールの言う通りで、私の身体はもう‥‥子供を宿してあげる事が出来ないの。あぁ、でも勘違いしないでね? 誰でもいいって訳じゃないのよ? アランちゃんならカレンの良いお姉ちゃんになってくれると思って‥‥」


「カレンはね、今日、ミューラと一緒に出掛けたアランさんの事を、お姉ちゃんが出来たみたいと喜んでいたんだ。あの子はミューラが落ち込んでいる姿を見ていて、何か出来ないかと子供らしいことを一切せず、ミューラの傍で畑の手伝いや、元気づけようとしてくれるいい子なんだ、外で他の子供達が遊んでいるとき、羨ましそうにしている所を私は知って居る、ミューラもそれに気づいていて、遊んでおいでと言っても、ママの傍を離れたくないと言ってな‥‥無邪気に笑いはしても、やはり子供が外で遊んで、家に帰ってきてご飯を食べて、時々ママや私の手伝いをしてくれる子になってほしい‥‥昨日は久しぶりにカレンが無邪気に遊んでいる所を見たよ、それをさせてあげられるのは私達ではなく、アランさん、君なんだ。」

「でも‥‥私は‥‥」


 私は今、身寄りがなくて、家も無ければお金もない、15歳になった私は成人として生きていかなければならなくて、お母さんや、オジサン、シリウスに甘えてばかりだった。

 

「色々と気にしてしまう事は多いと思う。君は私の見て来た15歳の子とは思えない程、心が成熟しているけど、それでもやはり、子供に見えてしまうし、不安が多いだろう。」

「アランちゃん、貴女には安心できる家と、家族が必要だと思う。だから、その‥‥よく考えてからでいいの、前向きに見ていてほしいな。」


 カールご夫妻は優しい。本当のお父さんとお母さんだったらいいなって思えるくらい。

 カレンちゃんも可愛い、妹として大切にしていきたいと思うくらい。

 シリウスを見てみると、シリウスは真剣な顔をしていた。


「‥‥‥‥」

「シリウス‥‥」

「俺は、今日、疑問に思った事がある。聞いてくれるか? 義姉さん、兄貴。」


 シリウスは深呼吸をして、私達に伝えた。


「孤児院での事を思い出してた。言い方は悪いが、アランのお母さんはちゃんといると思う。」

「‥‥え?」

「どういうことだ? シリウス。」

「まず、アランがセイラという女性の名前とペンダントを彼女に見せた時、あの慌てようは普通じゃない。きっとアランに関わる何かがあるんだ。アーロンとさっき飲んでいる時、アーロンが言って居た事なんだが、セイラという女性とアランとの共通点が二つある。」


 私とセイラさんとの共通点‥‥?


「まず一つは、精霊という存在が見える事、アラン、今目の前に精霊は居るか?」

「うん、居るよ? ヒラヒラと漂ってる蝶々のような‥‥シリウスは見えないの?」

「あぁ、見えない、兄貴達も見えないだろう? おかしいとは思わないか? 俺がアランから聞いたセイラという女性の発言は、確か‥‥君にも見えるんだな? そう言って居たよな?」

「うん、そう‥‥貴女にも見えるのね、って言ってたよ。」


 確かに、同じものが見えてる、言われて初めて気づいた。


「そしてもう一つ、綺麗なその青い目だ。」

「目‥‥?」

「そう、青い目は珍しいんだよ。セイラという女性の君の目はね。俺も色んな大陸に行って様々な人たちにあったが、アラン以外に見た事がない。」

「‥‥そうなの??」

「あぁ、アラン、他にも自分と共通している所がないか、思い出してみてくれないか?」

「えぇ‥‥? うーん‥‥」


 私とセイラさんが似ているとこ‥‥? あとは髪ぐらいしかないと思うんだけど‥‥


「髪の毛くらいかなぁ‥‥? 私と同じ色だったよ?」

「‥‥‥‥アラン、セイラという女性に、もう一度会いたいか?」

「‥‥うん、会いたい。ペンダントのお礼をちゃんと言いたいかな?」

「‥‥‥‥俺が君を守る、だから、会いに行かないか?」


 え‥‥今、なんて‥‥?


「シリウス‥‥お前‥‥」

「兄貴、これは俺の感情でもなんでもない、大切なアランの為になることだと俺は思ってる。わかってくれ」

「‥‥カール、シリウス君の言いたい事、わかるよ。アランちゃんの為になると私も思う。」

「‥‥‥‥」


 カールさんは腕組をして、目を瞑った。

 

「アラン、決めるのは君だ」

「‥‥‥‥ちょっと考えさせて。」


 私は貸してもらっているお部屋に行き、ベッドに身を投げた。

 枕に顔を埋めると、お日様の匂いがして、ポカポカとしている。


「‥‥セイラさん‥‥」


 セイラさんと会った時のこと、よく覚えてる。

 初めて会ったのに初めてじゃない感覚はしていた、懐かしい‥‥それが一番最初に出て来たのだ。


「会いたいな‥‥」


 ペンダントを握りしめて、セイラさんの事を思い出していると‥‥部屋の中には私と精霊達しかいないのに、トタッ‥‥と物音がした。


「‥‥え!?」

「‥‥こんばんわ、アラン」


 物音のした方に首を向けると、思い描いていた人がそこに居た。


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