第18話 オレンジ色
「‥‥‥‥」
シリウスに抱えられて、彼の首に顔を埋めて、長くも短くもない間、彼の息遣いだけを聞いていた。
「‥‥アラン、着いたぞ。」
彼の言葉を聞いて、周囲に目を向けると‥‥
「兄貴の所に来ると、いつもここに来るんだ。」
視界に広がるのは、丘の上から見渡せるベルンイン王国の街並みだった。
「ここから見える王国の街並みが好きでな、もうすぐ夕方になる、夕方になるとここから見える夕日が王国を一気にオレンジ色に見せてくれるんだ。アランも気に入ってくれるくらい綺麗なんだよ」
彼が私を下ろし、後ろにある木に寄りかからせてくれた。
しばらく2人とも無言で、時間が流れて、日が暮れていく。
「‥‥わぁっ」
太陽が沈みかけていく中、ベルンイン王国はオレンジ色に染まっていき、美しく輝いていた。
夕日に照らされていく王国の街並みは、これから来る夜を知らせるように、徐々に徐々に明かりを灯させていく。
「‥‥綺麗だね。シリウス。」
「‥‥あぁ、綺麗だな。」
2人で暗くなるまで、街並みを見ていた。
シリウスは私の横に座り、手を握り、言葉を紡いだ。
「今日は色々あったな、可愛らしい服を来て、街を歩いて、色んな人が君を綺麗だとか、可愛いとかって、たくさん褒めてたな。」
「‥‥ちょっと恥ずかしかったけど、嬉しかったし楽しかった‥‥シリウスはどう?」
今日あった事を思い返す、今まで一度も経験したことのないオシャレや化粧、大切な人達と歩く街、楽しくて、恥ずかしくて‥‥
「‥‥俺も楽しかった、アランが褒められて赤くなってるのを見ると、可愛いくてな‥‥」
「‥‥ばか。」
すまん、そう言ってバツが悪そうに返事を返すシリウスは、笑ってた。
私も彼に釣られて笑ってしまう。すると、シリウスのお腹の虫が鳴って、またシリウスはすまんと言って笑った。
私もまた彼に釣られて笑ってしまったんだ。
「帰ろう、シリウス。」
「あぁ、帰ろう。」
立ち上がろうとしてよろけてしまいそうになったところを、シリウスに助けてもらい、また笑った。
今日はたくさん歩いたし、走ったから疲れたんだな、そうシリウスが言って笑った。
「そうみたい‥‥」
「ハハッ、ほら。」
シリウスがしゃがんで、背中に招待してくれた。
私は彼の背中に乗り込んで、ありがとうと耳元で言うと‥‥
「‥‥くすぐったいよ。」
彼は肩をすくめて、それでもどこか嬉しそうにしてた。




