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敬語でだらだら、でもリズミカルな文体でコメディ

いきなりですが、目覚めたらロボットの身体になっていました

 いきなりですが、目覚めたらロボットの身体になっていました。

 身体全体が妙に重くて、手は明らかにアームって単語が似合いそうな形状で、足は白を基調としたセラミックっぽい質感で、おまけに胴体からはメタリックな臓器っぽいものが覗いています。僕はそれを見るなり、

 「うわぁぁぁぁ!」

 と、叫びました。

 はい。

 この状況下で叫ばなくて、一体、人生のどの場面で叫べと言うのでしょう?

 そして次の瞬間、まるでVRゲームをやっているような視界の外から「キャハハハハ! 驚いてる!驚いている!」なんてけたたましい笑い声が聞こえて来たのです。妹の笑い声です。急いで顔を向けると、案の定、そこには妹がいて、大変に愉快そうにしていました。何がそんなに愉快だってのでしょーか!?

 「サプライズ、大成功~!! もう、お兄ちゃんてば思った通りの反応をするんだから! 最高!」

 なんて、それから妹は言ってきます。

 「まさか、これ、お前がやったのか?」

 とそれを受けてボク。思わず、カタカナで“ボク”と書いてしまいましたが。妹はすこぶる機嫌が良さそうで、「うん、そうだよ」なんて言ってきます。

 「なんで、こんな事をしたぁ?!」

 「だって、お兄ちゃん。“実験を手伝って”って言ったら、“別にいいけど”ってそう答えたじゃない?」

 妹は科学工学が大好きで、最近ではロボット方面にハマっているのです。

 「だからって、何も告げずに兄をいきなりロボットに改造するヤツがいるかぁ?!」

 「だって言っちゃったら、サプライズにならないじゃない」

 「ならなくていい!」

 サプライズに拘る理由が分かりません。

 「こんな身体にされて、いったい、これからボクはどうすれば良いと言うんだ?」

 妹はそれに“うんうん”と頷きながらこう返します。

 「でも、お兄ちゃん、もう受け入れている感じじゃない? 既に一人称がカタカナの“ボク”だし」

 「それはなんとなく収まりが悪いと思っただけだ」

 それからボクは頭を抱えて「のおぉぉ!」と苦悩しました。そんなボクに向けて妹は諭すように言います。

 「あのね、お兄ちゃん。あたしはね、お兄ちゃんになら、どんな迷惑をかけても良いと思っているんだよ?」

 それっぽい雰囲気を出していますが、慰めているんでもなんでもありません。自棄気味になって叫びます。

 「思わないでくれ! 思ったとしても、せめて限度を知ってくれ!」

 いえ、自棄になりますよね? こんな状況下じゃ。むしろ、自棄になっているだけで済んでいるのが奇跡的ですらあります。そんなボクをなだめるように妹は言いました。

 「まぁ、まぁ、彼女さんもカッコいいって思ってくれているみたいだし」

 え? とボクは思います。

 そこで気が付きました。ドアの近くにはボクの彼女がいて、ボクの姿をジッと見つめていたのです。

 それを見てボクは思い出しました。

 こうなる前、ボクは彼女とデートをしていたのです。美味しくて有名なクレープ屋さんに二人で行って、一緒にそれを食べていたのですが。その時に後頭部辺りに衝撃を感じて、ボクは気を失い、気付くとロボットの身体になっていたのでした。因みにそこに行きたいと言ったのはボクの方です。ボクは実は世に言うスィーツ男子とかいうやつで、甘いものが大好きなのですが、たった一人じゃ恥ずかしいので、そうして彼女連れで行ったのです。そうすれば“女の子の方が好きなんだな”ってなって恥ずかしくないでしょう?

 ……これを知って、こんな目に遭っているボクを“ざまぁ!”とかは、どうか思わないでください。

 とにもかくにも、彼女がカタカナ表記の一人称が妥当になってしまったボクを見つめています。彼女は何を思っているのでしょう。心なしか、目と目が合ってしまったような気もします。

 しばしの沈黙。

 流れる不安。

 そして、

 「ブハハハハッ! すっごい驚きようで戸惑いよう! サプライズ大成功! もう、おかしいったらありゃしない!」

 その後で愉快そうに彼女は笑い出したのでした。

 ボクは目が点になります。

 それを見て妹が言いました。

 「うわぁ、酷い反応。お兄ちゃん、よくあんな人を彼女にしているね」

 「お前が言うな!」

 と、それにボク。すると、「チチチ……」と人差し指を振りつつ妹は返します。

 「“彼女”は選べるけど、“妹”は選べないんだよ、お兄ちゃん」

 が、それから一呼吸の間の後で、

 「あ、ごめーん。お兄ちゃんの場合、“彼女”も選べる余地はないかぁ」

 なんて続けます。心底、蔑んだ目。

 「お前な……」とボク。そんなボクをまったく気にせず妹は続けます。

 「まぁ、気に病んでも仕方ないよ、お兄ちゃん。その身体でも良い事はたくさんあるんだよ? 例えば……」

 そう言いながら、妹はボクの顔についているのだろう何かのボタンを押しました。

 「このボタンを押すと、なんとティラミスが味わえるんだよ」

 その妹の言葉通り、ボクの存在しないはずの味覚に甘い味がじわっと広がりました。甘党のボクは、もちろんティラミスが大好物だったりします。

 「うわ、本当だ。美味しい……」

 ボクはそれに感動をしました。妹はもちろん彼女にも癒され得ない今のボクが、その甘さに癒されている感じです。まぁ、現実逃避って言っちゃえばそうなのかもしれませんが、気にしない方向で。

 「因みにこっちはマカロンで、こっちはキャラメルだよ?」

 「ああ、美味しい。美味しい……」

 ボタンが押される度に、ボクは涙を流して喜びました。いえ、涙は出ませんが。

 そのうちに、

 「ティラミスとキャラメルのボタンを同時に押したらどうなるのかな? 妹ちゃん」

 なんて、彼女。

 「あっ やってみようか?」

 と、妹。

 「ようやく癒されているのに、ファミレスのドリンクバー感覚で遊ばないでくれ!」

 と、それにボク。

 ところがです。それからしばらくはそうしてスィーツの味を楽しんでいたのですが、ボクはなんだか不意に虚しくなってきてしまったのでした。こう呟きます。

 「これじゃ、ダメだ……」

 「いや、お兄ちゃん。さんざん、楽しんでおいて…」

 妹のツッコミにもボクは首を横に振りました。

 「これじゃダメなんだ……。食感がない。甘い匂いがしない。腹が膨れない。食べている感じがしない!」

 そうなのです。いくら甘い味を感じても、それはニセモノの味。本物のスィーツを食べている感覚には程遠かったのです。

 「なるほど、なるほど。参考になるわ」

 なんてそれに妹。

 「メモを取るなー!」と、ボクは言います。いや、メモを取ってたから。

 「ボクが言いたいのは、元の身体の方が良いって事なんだよ! こんな機械の身体じゃなくって!」

 それを聞くと、妹は言いました。

 「甘いわね、お兄ちゃん。あたしはクレームを単なる嫌がらせとして受け止めたりなんかしない! それをアドバイス・意見として受け入れて、更なる改善を目指す! それが物作りをする者の心意気ってもんでしょ!」

 「だから、そのポジティブさを、元の身体に戻す方に差し向けてくれってば!」

 それはボクは心からのツッコミ…… もとい、叫びでした。ところが、そうボクが言うのを聞くとボクの彼女がこんな事を言うのです。

 「もういいわ、妹ちゃん!」

 なにがいいのでしょう?

 「そろそろ、本当の事を彼に告げましょう」

 本当の事?

 ボクは戸惑います。

 「それは、どういう……」

 それから彼女はスタスタと歩き、ボクの横にあるベッドを目指しました。今まで気にしていなかったのですが、と言うか、とてもじゃないですが、そんな余裕のある状態じゃなかったのですが、そこには白いシーツがかけられてあって、誰かが横になっているようでした。

 彼女はそのシーツを取り払います。

 すると、そこにはなんと僕が横になっていたのです。ええ、漢字で“僕”と書いている時点でわかってもらえるのじゃないかとは思いますが、人間の僕です。

 「なんで……?」

 と、ボクは思わずそう漏らすように言いました。

 彼女は語り始めます。

 「あなたはわたしとクレープを食べている時に倒れて、目を覚まさない状態になってしまったのよ。その身体は、そんなあなたの為に妹ちゃんが用意したもの……」

 ボクはそれを聞いて愕然となります。

 「そんな…… ボクが倒れた? 目を覚まさない? 原因は……?」

 そう言いながら、さんざん妹に抗議をしていた事をボクは後悔しました。妹は何にも悪くないの……、

 しかしです。それを受けると、ウンウンと頷きながら、彼女はこう返すのです。

 「それなのよね…… わたしがあなたにくらわした当身が悪かったのか…」

 ハ? と、ボク。

 「え、なんで?」

 「いや、妹ちゃんが生物はあまり詳しくないって言うから、手っ取り早く気絶させちゃおうと思って」

 ハ? と再びボク。

 妹が続けます。

 「それが原因か、それともその後であたしがお兄ちゃんに打ち込んだロボットと繋げる為の電子チップが悪かったのか……」

 「妹ちゃんったら生物学に詳しくないって言うのに、いきなり脳に電子チップを打ち込むんだもん。ビックリしちゃった」

 「いや、多分、大丈夫だと思ってー!」

 なんだかキャピキャピ仲良さそうにしています……

 要するに、

 

 「結局、100%、すべて、お前らが原因かぁー!?」

 

 と、それを受けて僕はそう絶叫しました。

 

 「まぁまぁ、その姿でも日常生活は送れるんだし、わたしはそれでも別に良いし、何の問題もないじゃない。ま、不純異性交遊はできないけどね。あっ もしかしたら、不純異性交遊したいの?」

 なんて、彼女。

 「じゃ、そーゆーギミック付けようか? ユーザーの意見は聞き入れるよ!」

 と、妹。

 「だから、そっちの方向に努力するんじゃなくて、元に戻る方法を考えてくれぇぇぇぇ!」

 それを受けて、そうボクは叫びました。

 

 ……本当に勘弁して欲しいです。

 書き終えて、読み返している時に、「サディスティック19」に設定の被っている話があったと思い出しました。

 久米田康治が「さよなら絶望先生」で、ドラえもんと同じネタを書いちゃって、単行本未収録にしたなんてエピソードがありましたが、いやぁ、あるもんなんですね、こーいう事って。


 で、僕はどうしようかと悩みました。

 「商業誌でもなく低アクセスなのにそこまで拘るのも自意識過剰な気がするし、設定は似ているけど、向こうはシチュエーション・コメディなのに対し、僕のは一応はオチのあるストーリー重視だし、さぁ、どうすっか?」

 そんな時に、なろうのランキングを見てみて、ウダウダ悩んでいるのがバカバカしくなりました。

 設定が似ている作品ばっかじゃん……

 もし、設定が似ているだけで、投稿しない方が良いのだったら、なろうは成り立たないですね。

 まぁ、それを言ったら、商業誌にも設定の似ている話ってたくさんありますが。

 「巨人の星」って、その前にそっくりな「ちかいの魔球」って漫画があったらしいですよ。


 因みに、「サディスティック19」は少女漫画なのにスプラッタな話とかが出て来るちょっとアレなコメディで、僕は大好きです。そーいう系が好きな人には、おススメ。

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