表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ・シークレットヒーローショー  作者: 夕凪 もぐら
へなちょこマコと宇宙人との約束
46/50

ザ・シークレットヒーローショー

 


☆ ☆ ☆


 メーデー、メーデー、メーデー。


 応答せよ。こちら小さな小さな島国に取り残された小市民。名を神田川 誠。


 今も尚、うだつの上がらない生活をしている。目指す大宇宙へは遠い。


 君は宇宙人だから、離れていてもテレパシーで届くと思う。この交信を遥か彼方から君は聴いていることと思う。


 ぼくは新須賀トライアングルの頂点、劇場ビルの最上階、日本に来てからのぼくの指定席。見上げる夜空は星も観えない。見下ろすは大都会のイルミネーションは今日もきらきらして眩しかった。


 一通の手紙が届いたのは、スズと別れた数ヶ月後のことである。


 やがて宇宙そらは遥か彼方へ行った。今では歯車で動く街並みを、ビルの上から見下し、観測者を気取る。その実、誰かに視られていて、誰かに嗤われているのであろう。


「おー、いたいたー。夜風に当たると風邪引くぞー」


 ニューヨークヤンキースのキャップを斜めに被った椎名さんは、いつになく優しい顔つきでぼくに声を掛ける。


「有給貰っちゃってすいません。明日飛び立ちます」


「ああ、あたしも行きたいところだけどさ、マリー一人残して行くわけにもいかないからさ。チームメイトの晴れ舞台だってのに」


「ぼくね。来月からシフト多くしてもらいたいんですけど。色々物入りになるので」


「なんだよ。合衆国からそこそこの給料支払われてるだろ。欲張りだな」


「貯金したくて。あの日この手で人を殺めてから、ずっと死にたかった。でもちょいと生きてみたくなったんです」


「ボスに相談してみるけどさ、難しいと思うよー。新人雇うらしいし」


「新人? こんなエロDVDショップに?」


「おう。昨日、マリーが面接してた」


 いや、絶対マリーさん自分が楽する為だし。ぼくたちの負担が減るわけがない。この人、本当に鈍感だなー。赤の遺伝子ってやつは、どうも脳の方に恩恵は与えないようである。


「身体冷やすぞ。明日も早いんだろ? 眠れないならあたしの部屋に泊めてやろうか?」


「ああ、まじいらねー」


「殴るからよ」


「椎名さんに殴られたら、ぼく死んじゃいますよ」


「減らず口。本当はあたしのこと好きなくせに」


「ぼくが帰るまでに、馬場の件はよろしくです」


 夜は更けていく。明けるのが怖くて楽しみでもある。どうやら眠れそうにない。


「少しだけ、お酒付き合って貰えますか?」


「おっ、話わかるねー。お姉さん嬉しいよ。いいのあるんだ。どっちで飲む? あたしの部屋?」


 無論、ぼくの部屋はバスの中なので、椎名さんの部屋が良いな。椎名さんはぼくと違い結構なマンションに住んでいる。おかしい。一度給料明細を見せてもらいたい。同期で同じケースオフィサーの筈だ。


 そんなことに思考を巡らし訪れる椎名さんの部屋は、想像通りに乙女チックでいい匂いがした。


「おお、流石処女」


「なんか言った?」


「いいえ、なんとも」


 椎名さんに出された酒はジャパニーズ焼酎ってやつで、ぼくには馴染みがない。短い間ではあるが、ホストやってたんでシャンパンとか飲みたいものだ。


「これいいんだよ。近所のじいさまから貰ってさ」


 猫ちゃんの肉球が刺す時計の針は、夜の十時。明日は早いので一時には帰ろう。


「なんかシャロンに伝えることありますか?」


「ねーよ。シャロンはさ、仲良かったんだけどな。いつからか敵になっちまってさ」


「どういう意味?」


「別に〜。あたしが先にあんたに目つけたんだけどな」


 女ってやつはこういつも思わせぶりな言葉で男を翻弄してくる。椎名さんだって例外ではない。


 沈黙を破るように乾杯。テーブルクロスにはネズミの顔つきコースター。度数のキツイジャパニーズ焼酎をグイッとグラス半分飲み干し、焼け付く喉に咳払い。


「ワシントン久しぶりなんですよ。シャロンと会うの楽しみです」


「……抱いてやろうか?」


 神妙な顔の椎名さん。誰が抱かれるものか。


「ちょ、普通逆じゃね? 約束してたんです。シャロンと。シャロンのこと愛しているんです」


 椎名さんは「そっか」と一言ため息を漏らす。


 ずっとシャロンのことばかり考えてた数年間だった。やっと気持ちの整理がついて、会いにいける。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ