プロローグ
ここは閑静な住宅街。
そこを歩いているといつの間にか不思議な通りに出ることがあります。
そこは誰もがいつでも辿り着けるではなく、本当にその場所を必要とする人の前だけに姿を現すのです。
その名は秘密通りガーベラ。
その通り沿いには、赤・ピンク・オレンジ・黄色といった色とりどりのガーベラ達が咲き誇っています。
そこには四季の変化があるのに、ガーベラはいつも変わらず陽の光を受けて微笑んでいました。
通りを歩いていくと、まばらにポツリ、ポツリと赤茶の煉瓦造りのお家が見えてきます。
さらに歩みを進めれば、小さな緑と白の小粋な仕立て屋さんがこちらを向いています。
この仕立て屋さんに看板はありません。
ガラス扉から透けて見える店内には、世界中から取り寄せた様々な材質の布地やボタン・装飾品といった
ものが大切に飾られています。
綿・麻・ビロード・シルク・サテン・ビジュー・パール・貝殻・ガラス、他にも数え切れないほど沢山の種類の材料が、素敵なお洋服に変身することを夢見ています。
ここのお店の店主は小雪さん。
透き通るように白いお肌がチャームポイントの、それはそれは綺麗な女の人です。
今日も小雪さんはお店の準備を整えてからお洋服の材料達に優しく問い掛けます。
「さて、今日はどんなお客様がいらっしゃるのかしらね?」と。