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前篇

「理奈は、僕の手が好きなんだよね?」


 唐突に告げられた言葉に、彼女は不思議そうな表情を浮かべ、ことりと首を傾げた。

 何故突然そんなことを言われたのか、彼女は理解できていないようだった。僕は彼女が状況についていけていないのをいいことに、艶めいた笑みを浮かべながらそっと彼女の頬に掌を宛がった。


「…手だけでいいの?理奈」


 びくり、と彼女は震えた。


「僕は嫌だよ、理奈。手だけなんて、嫌だ」


 逃げようと身を引いた彼女を腕の中に閉じ込め、僕は彼女の耳元で囁いた。


「―もっと欲しがって。理奈」


 これ見よがしに左手で彼女の頬をゆっくりと撫で、彼女はそこでようやくはっとしたように顔をあげ、まじまじと僕を見た。僕は殊更に甘く笑んで、彼女に言葉をせがむ。


「…ねぇ。欲しいのは、…手だけ?」

「わ、たし、は、…」


 泣きそうな顔で、彼女は告げる。


「す、きです。…すきです、羽津さん。…すきなんです。あなたが、…すきなんです」

「僕も君が好きだよ」


 そっと唇を塞ぎ、もう一度見つめる。拒まれないことを確認すると、僕はもう一度彼女に口づけた。

 左手の薬指。鈍く光っていた銀の指輪は、今はもう無い。


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