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留守番も楽じゃない


 間違って召喚されてしまったからか、することがない。

 元の世界では仕事をしているだけで一日が終わっていたし、休みの日は掃除や録り溜めしていたドラマなどを見て過ごしていた。改めて考えると、27歳にしてかなり枯れた生活をしていた。

 とりあえずハル君やアレクセイからこの世界の事をいろいろ教えてもらい、お返しに掃除洗濯をしたりと、元の世界では考えられないほどのんびりと過ごしている。

 アレクセイは兎も角、13歳でひとり暮らしをしているハル君にはあれこれと世話をしたくなってしまう。でも年頃の男の子だし、見られたくない物があったり、他人にあちこちといじられることが嫌だったりするかもしれないので、そこら辺は気をつけている。

 時折、何をやっているのだろう、と焦る気持ちもあったけど、でも時間の進み方が同じとは限らない。こちらでは1日でも、元の世界では1年が過ぎているかもしれないし、反対に1分しか経っていないということもあり得る。

 考えてもわからないのだから、あえて考えないことにした。

 

 そんな長閑でゆったりとした生活も3日間で終わってしまった。

 ノックの音で家の扉を開けると長身のアレクセイが立っていた。黙ってさえいれば本当にいい男だなと、どうでもいいことを考えて見上げていた私は、アレクセイの「ハリーは?」という声に我に返った。

「まだ学校だよ」

 時計を見ると普段ならもう帰ってきてもいい時間だった。

「そろそろ帰ってくると思う」

「そうか」

 アレクセイは慣れた足取りで家の中に入っていった。


「何故ハリーに肩入れする?」

 紅茶を淹れた私にアレクセイは何の前触れもなく聞いてきた。

「何故って――」

「故意ではなかったがお前をこの世界に呼んだ張本人だ。恨みこそすれ好意的になれる訳がない」


 確かに最初はちょっと恨んだけれど間違いだったし、それに――。


 どう答えれば良いか考えていると、いつの間にかアレクセイが距離を詰めていた。妙な雰囲気に後ずさったけれど、すぐ壁にぶつかってしまった。

「何を考えている?」

「な、何って――」


 二人きりの室内で緊張するほど整った顔がすぐ目の前にあれば、何にも考えられないって! ハル君、早く帰ってきて!


 高まる鼓動で顔が熱くなる。

 けれど耳元で囁かれた言葉は甘くなかった。

「何を企んでいる? リアニークス」

 アレクセイの眼差しは氷のように冷たく、表情は明らかに警戒感を伴っていた。


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