最終話 ~the first half~
コンサートの前日。
まだ行こうか迷っていた。
でも、優さまは私と愛美を仲直りさせてくれた人だ。
「絶対来い」
そう言われたら、信じた方がいいと思った。
『愛美、明日コンサート行くよね?』
「…梨子ごめん」
『何?』
「なんか頭痛くて、熱計ったら38℃あった」
『えっ?じゃあ、コンサート行けないじゃん!』
「ごめん。でも、一人でも言って!」
『行けないよ…』
「何言ってんの?優さまが絶対来いって言ってるんだから、何か考えがあるに決まってるじゃん。行ってあげなさい」
『…分かった。でも、帰りたくなったらすぐ帰る』
「うん」
コンサート当日。
愛美の熱は37,2℃に下がっていたが、調子が悪いようなので、やっぱり一人で行くことにした。
コンサート会場は、前回と同じくたくさんの人で溢れていた。
今日はちゃんとメガネを持ってきた。
優さまにもらったチケットなので、特等席と思いきや、アリーナ席でもなければ、ステージからやや遠めの席だった。
ただ、前方はステージから一直線の通路だったので、視界はよかった。
周囲のファンは恭ピーとか優さまとか書いたギラギラしたうちわを持っている。
何も持っていない私は逆に目立った。
コンサートが始まった。
ライトを浴びながら妖艶に舞う藤崎君はまるで別人に思えた。
優さまは投げキッスまでしていた。
ファンはキャーキャー叫び、ドームは熱気に包まれた。
やがて、kiss-j全員がゴンドラに乗り、ファンに手を伸ばしタッチしていた。
私の席の方には全く届かず、藤崎君と他のファンが触れあっていることに少し嫉妬を抱いた。
葛城君のソロが始まった。
これ以上、藤崎君がファンと触れあうのを見たくなかった。
一応、優さまに
『やっぱり、もう帰る』とメールを入れて、
退場した。
ドーム内の売店の向かいにある出口へ向かっていた時、関係者立ち入り禁止の通路の脇から、誰かに腕をつかまれた。
『ちょっと!』
そのまま、近くの部屋にひっぱられ、ドアに押し付けられた。
『何するの!』
見ると、警備員だった。
警備員は深くかぶったぼうしを取った。
『優さま!』
警備員に変装した優さまだった。
「しっ。バレたらヤバイから手短に話す。葛城の次は恭介のソロだ。恭介は自分で作詞作曲した。お前のためだ」
『えっ?』
「だから、その曲聞くまでは帰るな!分かったら席に戻れ」
そう言って優さまは帰って行った。
いろいろ聞きたいことはあったけど、素直に席に戻った。
もう葛城のソロは終わっていて、藤崎が一人でステージに立っていた。
「今からの曲はある人のために、俺が自分で作詞作曲しました。
聞いてください。Last Love」
歌が始まった。
つづく。




