story No.13
通勤や帰宅中は何人もの記者に話しかけられた。
「いつから交際してるんですか?」
「結婚の話はありますか?」
無視してもしつこい人ばかりだった。
家に着くと、愛美も疲れきっていた。
「何なのよ!?あの記者!邪魔くさいわね!プライベートに介入すんなっつーの!」
藤崎君が引っ越す朝、見送りたいとメールしたのに、いつ写真とられてもおかしくない。と断られてしまった。
結局、しばらく会えないまま行ってしまった。
メールや電話はしていたが、会えないということがこんなにつらいとは思わなかった…
インターネットでは恭ピーファンがブログやコミュニティサイトで私を批判した。
「鈴城杏里とお似合い」
「隣人とかあり得ない」
などなど、批判中傷が絶えなかった。
そして、藤崎君は視聴率が良かった鈴城杏里とのドラマのシーズン2が始まった。
しかし、鈴城杏里との熱愛疑惑がより視聴率をあげていたこともあり、恭ピーの一般人との熱愛発覚で視聴率は大幅に下がった。
『私のせいで…』
藤崎君に罪悪感を感じた。
もし私の存在がなかったら、大人気ドラマのシーズン2である。視聴率低迷なんてありえなかった。
藤崎君が引っ越してから1週間が経った。
そんなとき、
「梨子!これ見て!」
それは例の週刊紙だった。
見出しは
『恭ピー、二股か!?鈴城杏里との路チュー写真入手!』と書いてあった。
『二股?』
ページを開くと、
藤崎君と鈴城杏里のキス写真が載っていた。
二人とも本人に間違いなかった。
『…どういうこと?』
すぐに藤崎君に電話した。
『もしもし!藤崎君?週刊紙、』
「梨子ちゃん、ちがうよ。あれは…」
「恭介、誰と電話?」
電話のむこうから、女の人の声がした。
「今、しゃべるな!
もしもし、梨子ちゃん?あれは」
『そこに鈴城杏里さんいるの?』
「えっ、いや、あの…」
『正直に言って!』
「…うん、いる。」
『…そう。なんでもない。バイバイ』
と言って一方的に電話を切ってしまった。
「…どうしたの?梨子」
不安そうに愛美が言った。
『電話の向こうにね、鈴城杏里がいたの』
「えっ?今、恭ピーと一緒にいるってこと?
」
『…うん』
「撮影だよ、きっと。まだ仕事場にいるんなら一緒にいてもおかしくないし…」
愛美はそう言ってくれた。
でも、私にはそうは思えなかった。
藤崎君とどんどん距離が離れて行く気がした。
鈴城杏里が藤崎君を「恭介」と呼んでいたことは愛美には言えなかった。
二股疑惑で、藤崎君を追う記者はますます増えた。
もっと藤崎君に会えなくなっちゃった。
電話をした日以来、藤崎君を信じることは出来なくなっていた。
電話が鳴った。
藤崎君だった。
出ようと手に取ったが、また置いた。
出れなかった。
何を話せばいいか分からなかったし、
また鈴城杏里がそばにいるんじゃないかと怖かった。
藤崎君はやっぱりアイドルだ。
もともと住む世界が違うのだ。
私と付き合ってること自体おかしいのかもしれない…
精神的に追い詰められていた私は
そんな風に思った。
つづく。




