第八話 残された子供①
オークに攫われた幼馴染は帰って来なかった…。自分は何もせず、何も出来ず、ただ泣くだけ…昔から何も変わっていない事実が、少年の心を更に締め上げた。
仮定や希望的観測ばかりが頭の中に明滅し、夜が明けた…。せめて、せめて見回りだけは、自分の役目だけはと身体を起こし、外に出る準備をする。
食事を取らねばちゃんと役目をこなせない。まるで何日も苦しんだ様な顔で、食卓に向かう。
両親は食事の間、何も言えなかった。何を言っても傷を悪化させるだけだと考えていた。
出発前に母親が口を開いた。
母親:「今日は見回りはしなくて良いの。昨日の今日だし、大人達が見回りする事に決まったのよ。」
少年:「そっか…」
友人とこなしてきた役目すら奪われて少年の目に涙が浮かんだ。
見ていられなかった母親は部屋に戻ろうとする我が子の手を引き。新しい役目を教えた。
少し離れたところに住む、6歳の男の子の面倒を見て欲しい…と。少し変わった子で、周りも心配する様な子であると付け加えた。
二人にお弁当を持たせ、父親に道を教えてもらいながら下を向いて歩く我が子の背中を見て。友達とはしゃぎながら役目に向かう先日の姿を思い出し、母は泣いた。
父は何も言わなかったが、こんな不安定な足取りで距離が離れないのは気に掛けているからだろう。父の優しさが、友人と友人の父親の仲の良さを思い出させて頬を伝った。
自分より小さな子にこんな泣き虫な顔は見せられない。無理矢理にでも涙を抑え、拭い去って前を向いた。
村の奥側に目的の家はあった。
父が扉をノックすると、返事と共に婦人が出て来た。父と自分を見たその婦人の顔は、驚きに包まれていた。
父:「今日からお世話になります。息子のレオです。よろしくお願いします。」
父が頭を下げ、レオはそれに倣った。
婦人:「そうですか…。こちらこそよろしくお願いします。あの子はほっとくと人と関わろうとしないので…」婦人は少し困った顔をしながら、自分の息子を呼んだ。
まだ眠そうな顔をしながら、蒼い髪色をした少年が出て来た。
婦人:「息子のフィーシです。今日からお世話になります。良ければ仲良くしてくださいね。」
フィーシ:「フィーシです。よろしくおねがいします」
目の焦点が微妙に合ってないまま挨拶をし、レオが挨拶を返す前にフィーシは自分の部屋に戻っていった。
…少しの静寂が流れ、婦人が申し訳なさそうに謝った。
父とはそのまま別れ、婦人に連れられて家の中に入ったレオは最低限の事を教えてもらった。
婦人も役目で午後まで家を空ける事、火を使ったりといった危険な事はしない事。飲み水や食事の場所、フィーシの事。
フィーシの部屋に案内され、レオがノックして中に入ると、ベッドでゴロゴロしている姿が目に入った。
婦人に会釈をして、扉が閉まると。レオは挨拶をした。
レオ:「レオだよ、今日からよろしく。僕は身体を動かしたり、冒険の話をするのが好きなんだ。」
目線を合わせず、宙をぼんやり眺めながらフィーシは言葉を溢した。
フィーシ:「レオ…?ん…?ああ!泣き虫のレオ君か!」
笑いながら言うフィーシを見て、"あ、僕こいつ嫌いだ"レオは確信した。
レオの悲しみが少し薄れ、怒りが湧いてきた。
部屋で一日中泣くよりは…ね…?




