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クトゥルフ神話  作者: ヒヨコの小説家
3章

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第四十四話 教皇の苦悩と聖女の処刑

 教皇は溜め息をついていた。

 まったく…宗教の長なんてなるものじゃ無い…。


 誰もやりたがらない事を己を律してやり遂げねばならないからだ。


 護衛に聖騎士達を連れて王都・王城に向かうのだ。

 既に準備は整っている。何故なら我々は怠け者では無いからだ。


 準備とは必要になる前に事前に用意しておく事である。我々は其れを怠りはしない。


 そう自らに厳しく求めていくのだ。全ては人々の為、犠牲を増やさない為、安寧の為に。



 王城は大慌てだった。教皇直々に向かうという旨の文が届いたという事は彼等はすぐ到着するからだ。


 王も側近も困っていた…精霊教に刃向かう事は可能だ…だが我々はそんな手を打ちたくない。


 しかし、臣下を守れない王に誰が付いてくる?

 王はどうしたものか…と逡巡する。


 だが無意味である。そんなものは既に用意されているからだ。彼等は破壊者では無い。必要な事を為す執行者だ。落とし所も全て用意されている。


 逆に言えば、それを越える案を出さない限り彼等の要求は拒絶出来ない。精霊教は正しく規律ある宗教である。



 国王の前には国軍の幹部が並ぶ…この者達は実行者だ。研究を命じた者、首都を焼こうとした者、リザードマンを装置に用いた者だ。


 彼等が並べられた理由は明白である。書状に書いてあるのだ。

 そして、恐らく絶対に助からない者達だ。


 必死に哀願する者、家族は無関係と叫ぶ者、呆然とする者、三者三様だ。


 王は知っている。彼等は悪行がしたかったのでは無い。ただやり方を間違え、道理を踏み外し、犠牲を招いた大罪人だ。


 助けられるものなら…助けたい。だが罪があまりに重過ぎる。

 他大陸への面目もある、精霊様への贖罪もある、リザードマン達へのせめての慰霊でもある。


 どうしようもないのだ…だからこの者達の命だけで済む様にお願いするのだ。


 せめて…今までの忠に応える為に。



 教皇達は到着した。全ては手筈通りである。救命すらも。

 聖騎士達は大罪人を連れて行く。国王の願いは教皇が聞き届ける。



 処刑の執行者は聖女ミリアである。


 教区内にて、処刑が始まる。見る者が見えるように。


 一人ずつ罪状が読み上げられていく。


 一人目、この者は禁じられた研究を命じた。我々が正式に禁忌と定めた研究を。これにより多大な魂が悪戯に弄ばれ、犠牲となった。


 二人目、この者は不必要な殺生を命じた。我々の制止を無視して、愚かにも水の首都を焼こうとしたのだ。これは虐殺行為である。


 三人目、この者は人道を踏み外した。禁忌が禁忌になった理由を無視したのだ。捕虜にしたリザードマンを惨たらしく殺し、その魂まで穢そうとしたのだ。


 この三名は、精霊への敬意を忘れ、人道を踏み外し、我々に消えぬ怨恨と犠牲を強いたのだ。


 よってここに死刑を宣告する!



 大罪人の首が横一列に並ぶ様に聖騎士により抑えられる。

 大罪人の様子はそれぞれだ、罪を受け入れる者、罪があるのだと気付く者、何が悪かったのか分からないもの。


 彼等の首を、聖女ミリアが一閃する。


 苦しみは与えない。余計な恐怖すら不要だ。彼等への罰は死罪なのだ。



 目が死んでいる聖女ミリアは思うのだ。もし彼等が大罪を犯す前に気付けたのなら…と。


 だが今はもう遅いのだ。全ては起きてしまったのだから。



 聖女ミリアは触れを出す。

 "死罪により罰は為された!聖女ミリアの名において命ずる!私刑の一切は認めない!もし何らかの形で私刑を行えば、今度はその者が罪人である!"


 聖女の言葉は絶対である。

 命じた時点で罪は確定する。

 事故があって実際には首都は焼かれていない?


 何を犠牲にして何を成そうとしたのかが問題だ。

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