第四十三話 ミリアの慟哭
民衆が信じる聖女ミリアなんて居ない。
精霊達は…聖騎士達はそれを知っている。
身内や敵に厳しいから?それは違う。ミリアは自分にも厳しい。それらは賛美されるべき事である。
ミリアは自分を律する姿すら、外部に見せている。
だが…見せられないものがある。
ミリアは自室に戻ってから、布団に籠った。
ミリアは泣いた。ずっと我慢していた。島に船が着き、やっと会うまでの砂時計が動き出したと思っていたのに…。
もうレーベは居ない…会えない…時間も場所も離れていた。今は二度と届かない場所まで離れたのだ。
ミリア:「レーベぇ…どう…どうして…。なんで死んじゃったの…。帰って来てよ…帰って…来て…ょ…」
ミリアは声を押し殺そうと努力する。ツラいのは自分だけじゃ無い…そんな事…。
精霊達は見守っていた。
目の前の少女を、さっきまであんなに毅然とした態度を教皇に向けていた彼女を。
精霊達は少女を見るのが嫌だった。溢れ出す感情が…押し寄せて来るからだ。
でも…それでも見守るのだ。少女こそ、いや少女もまたミリアなのだ。自分達はここに居なきゃいけないのだ。
ミリアが泣いている。部屋の外まで、押し殺しきれない感情が漏れる。
聖騎士達は震える…。少女は…聖女なんかでは無い…。ただ努力し続けている少女なのだ…。
その力が強くても、他人を思い遣る心をいつも保持していても、努力し続ける事が出来ても。
聖女ミリアは人間だ。
人間なのだ…。
彼等は自分から溢れる感情が苦手だ…拭う事が出来ないから。
彼等はミリアが苦手だ…亡くなった剣聖にしか…癒せないから…。
どうしてだ…どうしてこの世界はこんなにも残酷なのだ…。良いじゃ無いか…報いてやったって。
奇跡の一つや二つ、安いものだろうが…。
彼等は恨む…世界の在り方を。どうしようも無いと知りつつ。
そして一気に溢れ出した感情は、やがて少しずつ抑えられていく。減っても無くなってもいない。
ミリアは愚痴を始める。精霊達はそれを聞くのだ。
少女ミリア:「大体…おかしいでは無いか…私達が精霊の力を貸して貰えない状況だとしても。負ける筈無いじゃないか…」
私達がどれだけの研鑽を積んだか、豚は知らないだろう。理解する事すら出来ないだろう。ほとんどの人もだ。
私達は生きるのが苦手だ、間違い無く苦手なのだ。
だがそれでも生き抜き、英雄を"越えた"などと称される者が、そんなちっぽけな力でどうこうなるわけ無いのだ。
ミリアは遥か彼方…時制すら越えた場所に想いを馳せる。
どれだけ…弱っていたのだ…。
どれ程…苦しんでいたのだ…。
レーベに精霊を見る才さえあれば…もしくは地の大陸に戻る選択をしていたら…。
聖女は笑う。そんなわけ無い。
レーベも私も、島に逃げ延びる人を見捨てられはしない。才があっても罪の意識から逃れる術は無い。
罪には罰が必要なのだ。罰してくれる誰かが必要なのだ。
私にはまだ…やる事が、やるべき事がある。
私はミリア、聖女ミリアだ。
レーベに恥じない。レーベと同じ…。
ここに居る精霊達は気が休まる事は無い。
だが彼等は、望んでこの場所に居るのだ。
彼女を手助けする為に。
世界が残酷だとしても、僕達は手を差し伸べる。差し伸べ続けてみせるのだ。
私は国語が嫌いです。"答え"が嫌いです。
"答え"はそれ以外を否定するクソです。
私が嫌いな国語は、特に義務教育の国語は今は変わりましたか…?




