第四十二話 聖女ミリアの暴走
聖女ミリアは決して子供では無い…。
聖女ミリアが聖都を歩く、教皇の居る場所へ向かって…。
警備・警護の聖騎士の顔が引き攣る。
また、始まるのだ…聖女ミリアの暴走が。
教皇は大聖堂で祈りを捧げていらっしゃった。精霊様達に全ての者達の安寧を願って祈「お祈り中、失礼します!!」聖女ミリアが入ってきた。
聖女に祈りを邪魔された教皇だが、その顔は怒りでは無く怯えに染まっていた。
また、また何かあったのかと…。教皇はミリアの顔を伺っていた。
聖女ミリア:「剣聖様が亡くなられました!精霊から聞いた話ですが、いずれ伝わってくる事でしょう」
聖騎士も教皇もギョッとしていた。そんな事を大声で話すなんて…しかし誰も注意しない。
聖女ミリア:「やはりあの軍部は解体すべきです!我々の顔に、地の大陸の顔に泥を塗っただけに飽き足らず、結果的に聖騎士団の団長と副団長を失わせたのです!」
確かに由々しき事態なのだ、元々魔力回収装置の研究を聖女が直々に止めた。禁忌として封印しようとしていたのである。
それを国軍上層部は知りながら、必要だからと引き摺り出したのだ。挙げ句に水の大陸の首都まで焼こうとした暴挙。
だがそれでも国軍が今なお残っているのは、民衆の混乱やクーデターを防ぐ為にお触れを出さなかったからだ。
だが水龍様達の怒りから生還し、復興も進み始めた今、果たしてアレを残すのは必要か…?
教皇は必要な手続きやら、新しい管理体制の設立に必要な時間を計算し始めた。
だが無意味である。
聖女ミリア:「今!すぐに!解体するべきです! また良からぬ事を水の大陸でされる前に、下らない保身に時間を捧げ始める前に。」
聖女が騒ぎ出したという事は、もはや我慢の限界に達したのだ。聖女なら一人で軍部を崩壊させる手段をいくつも取る事が出来る。
民衆からの絶大な人気。本人の実力。聖騎士団への実質指揮権を持つ。
それでも私の目の前で騒ぐ。教皇の意思を尊重する気もあるし、自己が間違っているなら諌めて欲しいからだ…。
つまり、反論が見つからない限り聖女の意見は絶対だ。
聖女ミリアは教皇の様子を見て"よろしくお願いします。"と大聖堂を後にする。
教皇は溜め息を吐く。だれか教皇を代わってくれ…心の底からそう思う。
だれも教皇なんぞやりたく無い。しかしあの聖女が万一教皇になれば誰も止められなくなるのだ…。
私が続けねばならない…。
教皇は国王への面会の許可を求める手続き。国軍の行った悪行と禁忌を暴露するお触れの準備。解体・再編成する国軍の受け入れ先の整備・運用をする手続きを始める。
人間達の宗教。精霊教。その大聖堂で教皇は再び溜め息を吐く。そして聖騎士や司教に指示を出すのだ。
精霊教にはいくつか不文律がある。
"教えは人々の為に。 教会は人々の為に。 私服を肥やすな。 正義を成せ。"
そうだ…聖女は決して子供では無い…。
ただ倫理観が高過ぎるが余り、自分すら制御が出来ずに事を成そうとする。
しかも手続きやら過程を無視してでも即座に行おうとする。
聖女は"善の薔薇"と呼ばれたりする。
その美しさ、力強さ。そして必要があれば敵味方問わず棘を刺すのだ。
聖女の邪魔を正当な理由無くしてはならない。もし正当性が無ければ彼女は容赦しないからだ。
聖女です…アレでも…。ちなみに聖女に近い人であればある程怖がりますが、嫌われては居ません。はい。




