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クトゥルフ神話  作者: ニャルラトホテプ
3章

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第四十一話 剣聖の死

 不安をバネに。不安を原動力に、不安を書きます。

 フィーシ達が祭りを楽しみ終わり。また日常が始まろうとする頃に、村の中、いやこの島全体が騒然とし始めた。


 剣聖様の死亡と、1つの村の被害が兵士達により伝えられていく。

 最初は誰も信じなかった。だが、兵士達の様子と恐怖は人々から平常心を奪い去り始める。


 あり得ない。あり得ないのだ。人類で最強だった剣聖様の死など。

 物が落ち、怒声が飛び、悲鳴が木霊していく。


 一部の精霊達も慌てて駆け回る。本当ならこの島にとんでもない怪物が生まれた可能性があるからだ。



 事実は変わらない。剣聖様は死に、村が一つ収奪された。


 その事実は恐怖とパニックを呼び起こす。この島の人々の心から安寧は失われていく。



 森に近隣する村の全てが撤収を開始する。

 折角の肥沃な土地と、今まで費やしてきた時間を置き去りにして。


 街では聖騎士までもが混乱していた。この状況は非常にまずいのだ。森への対策に剣聖様がいらっしゃったからこそ。聖騎士は街の防衛や治安維持に集中出来ていたのだ。


 それが崩れる。つまり、人手の足りない聖騎士は何かを失う覚悟をしなければならない。安全か治安か土地か…。


 "それに…"

 こんな事が地の大陸の聖女様に知られたら、大変な事が間違い無く起きる…。

 なんとかするのだ、嫌でも地の大陸からの援軍はこちらに来るのだから、それまで、それまでに何とかするのだ。


 聖騎士達は聖女への心をバネに混乱を抑え、出来る事を必死にやっていく。

 真の恐怖が訪れないように…。

 聖騎士の一人が筆を落としていた。


 街では情報が入り次第、領主達が必死に頭を悩ませ始めた。緩衝地帯をどこまで設けるかだ、聖騎士や兵士長や冒険者達とも協議をしなければならない。


 安寧の喪失は余裕の喪失を招く。この島全体の治安が…少しずつ…少しずつ悪くなっていくのだ。



 フィーシは…フィーシは突然の出来事と環境の変化に頭が追い付かなかった。

 レオもだ…。

 二人は明日から冒険者パーティーの人達と沢山お話ししたり、二人で色々な事を語ったり、やってみたりする予定だったのだ。


 それなのに…兵士や冒険者パーティーに囲まれながらの街付近への避難が開始された。


 僕はマギ先生を探す…いた!

 しかしフィーシは声を掛ける事は出来なかった。別に何か話さなければならないわけじゃ無い…ただ平穏を、自分の中の平穏を少し取り戻したかった。


 マギ先生までも絶望に顔を落としていた。


 一体…この島で何があったのだろう。このまま僕達はどうなってしまうのだろう。

 フィーシは自分の中で肥大化し続ける恐怖に怯えながら歩くしか無かった。



 地の大陸の聖都…土の龍様のお膝下。

 その一室では、島とは比べ物にならないくらいの喧騒が起こっていた。たった一人…聖女によって。


 土の精霊が剣聖レーベを送った後、聖女ミリアに死を伝えたのだ…。


聖女ミリア:「巫山戯るな巫山戯るなぁ!! 何故レーベが死ぬ様な事になるのだ!!」

 聖女様は敬うべき精霊にすら怒りの目を向けた。

 それは八つ当たりに過ぎないと分かってはいたが、もはや心の余裕など無くなった聖女は当たり散らす。


 あのクソ軍部の所為で…人類に…我々に…私に…どれだけの迷惑を掛けるつもりだ。

 撤退戦で聖騎士団の副団長が犠牲になっただけでも(はらわた)が煮え繰り返るというのに。

 危うく世界から敵視され世界との全面戦争に成りかけたのだぞ?!


 水龍達の怒りで地の大陸も大打撃を受けた。だが、なんとか犠牲は最小限に抑えたのだ。それなのに…!


 許しの条件も、剣聖レーベさえ居ればそこまで難しい事では無かったのだ!


聖女?ミリア:「しかも死んだ理由が…豚ぁ?! レーベは一体何をしていたのだ! 精霊はァ!何・を・していたのだ!」

 もはや口調から聖女らしさは完全に消える。


 聖女の足はもはや止まらなかった。止まれなかった。

 部屋に居た精霊は震えていた…。

 聖女です。誰が何と言おうと聖女です。余計な事を言うととんでもない事になりますが聖女です。

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