第三十一話 過ごし方。
おかしい。日が登って来たのに、寝た記憶がない…。
僕は、外から差し込む光を忌々しげに見ながら布団で光を隠した。
夜と同じく、息苦しくなり光を浴びた。
ティアが来るなり、彼女に呆れて笑われた。
ティア:「目の下に隈が出来てるわよ。全く…何してるんだか。夜はちゃんと寝ないと成長できないよ?」
子供に諭すように、ティアは言う。
間違いなく僕は子供だし、何回か言われたその言葉に僕は苦笑した。
偶にこうやって、色々考え過ぎて眠れなくなる時があるのだ。次の日は大抵悲惨だ…。眠いのに起きてなきゃいけないのは、拷問に近い気がする。
僕はティアに何気なく、譫言を吐いた。
フィーシ:「ティアは他人を好きになった事はある?人じゃなくても良いけど」
深い意味は無かった、自分の中の好意を自覚したから、他の人やティアはどうなのか知りたかっただけだ。
ティアは…びっくりしたように身体を動かし、落ち着いて答えた。
ティア:「あるわよ。私にも好きな相手がいる。きっと全ての精霊達も同じで、好きな相手が居るの」
ティアは、少し遠くの氷龍様や氷竜様を頭に思い浮かべ、思い出し笑いをした。
ティアはふわふわと浮かび、フィーシに春が来た事を喜んだ。きっとこの子は、これから沢山の事を知っていくのだろう。私達精霊の知る事を、私達精霊の知らない事を。
フィーシ:「そっか…皆そうなんだね。そっか…」
何を想像し、何に納得してるのかティアには分からなかった。そんなティアに、フィーシは続けた。
フィーシ:「好きな相手にどう接したら良いのかな、過ごしたら良いのかな」
ティアはその場をくるくる周りながら悩んだ。
きっとそれは、答えるのが凄く難しい質問だ。
誰かの誰かへの接し方が正解である。とは言えない。
ティア:「そうね…多分、こうしたら良いとかそういうものじゃ無い気がするかな。好きな相手と少しでも長く居られるように、毎日努力する…とかかしら」
そう、どの精霊達もずっとそうしてきたように。
私達はずっと見守ってきたのだ、大切な相手を大切な仲間達を。
フィーシは目を閉じた。浅い眠りに身を任せ、世界から意識を解き放ったのだ。
ティアは邪魔をしない様に、近くで見守っていた。
すぐに起こしに来るこの子の友人が来るまで、静かな時間の中で。
家の扉が叩かれ、少しして笑い声が中に入ってきた。
フィーシと私が居るこの部屋に向かってきている。
扉が開くと、目の下に隈が出来た友達が立っていた。
私は笑った。
レオ君は立ち尽くし、何かを考え、考えるのを放棄してベッドに横になった。フィーシと一緒に。
眠かったのだ、とてもとても眠かったのだ。今日は冒険者さん達は村に居ない。寝ても良いじゃないか、と囁きが心の中で鳴った。
だから僕は何も考えず、そのまま寝息を立て始めたのだ。
静かな部屋、朝食を食べに来ない息子。一体どうしたのかと、フィーシのお母さんは扉を開ける。
差し込む光景に、扉をそっと閉めて。音を立てない様に支度を整えて、家を出た。
ティアは、この暖かい時間が好きだ。
見ていると、なんとも言えない充足感に満たされる気がするのだ。
良いじゃないか。今日くらいは。
友達が亡くなってしまったレオ君、初めて他人を好きになったフィーシ。最近、この子達は心が休まらなかったのだ。
二人の寝顔を守りたい。ティアはその場で浮いていた。




