第二十八話 魔術と魔法
食事が終わっても、僕もレオ君もお互いに話を止めなかった。冒険の話と魔術の話を交互に話し合い。
ただただ幸せな時間が流れていた。
ティアが戻って来たのが視界に映ると、レオ君の手を握った。ティアにも話したかったし、仲間外れにしたりしたくなかったからだ。
フィーシ:「ティアおかえり〜。さっきね冒険者パーティーの人達に話を聞いて来たんだ!そしたらね〜…」僕の口は留まる事を知らずに話し続ける。
途中でレオ君が遮り、レオ君の冒険話が始まった。
昨日、否定された冒険をそれでも諦められない心と共に口から紡いだ。
ティアは二人の話を聞いていた。物凄く楽しそうに話す二人が羨ましく、輝かしく見えた。
昨日の事を謝らなきゃ、とティアは思った。
ティア:「昨日はごめんね。二人の話に水を差して、今日楽しそうに話してる二人を見て、謝らなきゃって思ったの…」
ティアは申し訳無さそうにしながら、レオ君にある事実を伝えた。
ティア:「レオ君、君が行きたい冒険ね…もしかしたらいつか本当に行けるかも知れないね。だって…船が一隻この島に着いていたから。」
ティアがとんでもない事を言った気がする。
僕もレオ君もしばらく時間が止まり、空気が空いた口を素通りしていく。
ようやく我に帰った僕達は、息を吸い、少しずつ頭に情報を入れていった。
船が着いた?いつ?どうやって…?僕の頭は情報に混乱させられていた。
レオ君も同じだろう。
この島と僕達の故郷である地の大陸は、とんでも無く離れている筈だ。水の大陸はとても上陸出来る状態じゃ無いだろうし、海には怪物達が居て安定した航海なんて出来ない。
僕達だって馬車の大移動で何十日か分からないくらい移動したらしいのだから。
理解は出来ないが、僕達は大興奮した。帰れるかも知れない。地の大陸に。行けるかも知れない冒険に。
ティア:「ただ一隻だけだから、まだまだ時間は掛かりそうだよ?」助けに来た訳じゃ無いだろうし、とはティアは言えなかった。
結局その後夕方になりお母さんが帰って来るまで、僕達はずっと語り続けた。
将来どうしたいとか、どこに行きたいとか、何を食べたいとか。
フィーシの母親はその姿を見て…誰にも気付かれないように目元を拭った。
フィーシの母親はずっと心配していたのだ、姿の見えない魂や精霊に振り回される息子を、あまり他人に関心の無い我が子を、時々未来を諦めた様な顔を見せるこの子を。
お母さん:「ほら、お話が楽しいのは分かるけどちゃんと家に帰りなさい。 また、明日も明後日もあるんだから」
お母さんがレオ君に伝え、僕達は家の外に出るまで話し続けた。
そして家の外で、大きく手を振りながら別れの挨拶をした。
僕には、今日の外の風景がとても色鮮やかに感じられた。
ティアは少し迷っていた。フィーシの魔力を動かしてあげるかどうかを、もし動かせばこの子は魔力の動きを感じる事が出来て、早く成長できる。
だがそれは、コントロール出来なければただの危険な力を動かし易くしてしまう。
まだ早い…この子の精神は幼いし、魔術や魔法でどんな事が出来るのかほとんど理解していないのだから。
ティアは、レオ君が帰っても楽しそうに話し続けるフィーシを見守り、いつか導いてあげる事にした。




