第二十七話 魔術と冒険
ダメだぁ…。何度やっても上手くいかない。せっかく集中してきたと思って石を思い浮かべた時に、意識が石に向いてしまう。
何度目か分からない失敗で、落ち込んだまま目を開けると。目の前のお姉さんも目は閉じていて、日が高く登っていた。
見渡せば熱心な子供や、話を聞き逃すまいとする大人以外は皆どこかに行っていた。
お腹が空いてきたし、レオ君に声を掛ける前にお姉さんに挨拶しなきゃと思い。口を開こうとした。
…名前を知らない。いつも大体名前は相手が教えてくれるし、名前なんかすぐ忘れてしまうけど。
魔術の事を沢山教えてくれたお姉さんの名前を知りたい。誰かの名前を知りたいと思った事は、多分初めてだった。
魔術師:「…ん? ああもうお昼か、ご飯食べなきゃだね。私達は外で活動している時以外は大体ここに居るし、またおいでねー」
魔術師のお姉さんは優しく微笑みながら言ってくれた。
僕は小さな勇気を振り絞って声を出した。
フィーシ:「色々、教えてくれて、ありがとうございました。フィーシって、名前です。先生のお名前を知りたいです」
頑張った。僕は頑張って言えた筈だ。噛まなかっただけでも褒めて欲しいくらいだ。
魔術師:「フィーシ君ね、よろしくね〜。まだまだ先生っていう程じゃ無いけど、マギって名前だよ」
マギ先生は、カチコチになった僕の心を解すように、優しい声色で答えてくれた。
そこにレオ君が走ってきた。レオ君もお腹が空いているみたいだ。
レオ:「あ、はじめまして。レオって言います。フィーシの友達です」
マギ先生はレオ君に微笑みながら、返事をする。
マギ:「レオ君はじめまして〜。冒険者パーティーの魔術師のマギだよ〜。これからここに住むからよろしくね〜。また今度フィーシ君と一緒に来てね〜」
"はい、ありがとうございます"レオ君は頭を下げて返事をし、僕も遅れて頭を下げた。
レオ君は僕の手を引き、僕の家に帰る途中、足が止まった。
レオ:「…あれ?僕の弁当…無いよね…?」
どうしたんだろ、家に忘れてきたのだろうか?
フィーシ:「お弁当忘れたの?家に取りに行ったら?」
レオ:「いや、昼に誰も居ないし…僕鍵持って無いんだ…」レオ君の顔色はみるみる悪くなっていく。
フィーシ:「とりあえず一緒に僕の家に帰ろう、何か食べるもの余分にあるかもだし、僕の分を半分に分けたって良いんだから。」
レオ君は嬉しそうな申し訳なさそうな顔で感謝を述べて。また僕の手を引いて歩き出した。
僕は家に着くと、首から下げていた鍵を取り出して扉を開けた。レオ君は不思議そうな顔をしていた。
フィーシ:「ああ…これ? 僕はいつも鍵忘れちゃうからずっと首に下げてるんだよ」
食事場に着くと、ご飯が二人分置かれていた。書き置きを見ると、"フィーシとレオ君で食べてね、食べる前には手を洗うように"と書かれていた。
レオ君と僕は手を洗い、二人で並んでサンドイッチを食べ始めたのだ。
食べてる最中、僕達は今日冒険者の人達から聞いた話を交換し合っていた。
僕はレオ君が話してくれる冒険の話を聞いて、とても楽しかった。
僕はレオ君に魔術の話が出来て、とてもとても楽しかったのだ。




