第二十五話 魔術師と少年
魔術は自分の力で使える…フィーシは興味が出てきた。ティアみたいな事が出来るんだろうか!…と
フィーシ:「僕にも使える? 魔法みたいな魔術!」
私は微笑み、しかし少し困った顔をした。
魔術師:「んーとね、君に魔力が沢山あるか、君の魔力操作が上手ければ使えるかも?」
魔術や魔法に興味がある子は居るが、結局すぐ諦める。魔力が少ない子は枯渇してしまい結局ほとんど使えないからだ。
フィーシ:「どうやって確かめるの?!魔力…そうさって何?」興奮しているフィーシを見て、魔術師は困り顔になった。
魔術師:「じゃあ魔力量を見てあげるから手を出して?」魔力が仮に少なくても、手心を加えて喜ばせてあげよう。そう考えながら言った。
フィーシは辺りを見渡し、大丈夫そうだと思ったので手を出した。
この子の友達が居たら後で見てやるか〜。
私は優しくフィーシの手に自分の手を重ね、ごく僅かな魔力を薄く流し込むイメージで押し込もうとした。
…?少し驚いて量を少しずつ増やしていくが、一向に魔力が入って行かない。
子供の顔を見てもキョトンとしている。
フィーシ:「もしかして…無かった…?」
残念そうな少年を空いてる手で制止してそのまま魔力量を増やしていく。
並の魔術師でも、これだけ魔力を込めれば少しは動きがある。体内の魔力が動くだとか、防げず少し入り込むだとか…。
確かに私の魔力は総量的にはそこまで多くないが操作はかなりの方だと自負している。
覚悟を決めた。全力で魔力を侵入させようとする。額に汗をかき、表情も固くなっているだろうが、これは沽券に関わる問題だ。
…やめた。世界には常識外れな奴は居る。
剣聖やら英雄やら、化け物と張り合うのは時間の無駄だ。
敗北感と興奮の混じった感情を込めて、目の前の子供に教えてあげた。
魔術師:「あー…君の魔力はね。お姉さんじゃ見る事すら出来ないくらいいっぱいだったよ。」
少年は喜んだ。ジャンプして跳ねて。私の顔を見てもう一度喜んだ。
魔術が使えるかも知れない!というその興奮は私にまで十二分に伝わってきた。
にしても…どれだけ多いんだろうか。魔力操作が出来ないという事は、魔力の密度だけで私の侵入を防いだのだろうか…。
じゃあこの子が仮に魔力操作が出来れば…私の身体に魔力を容易に…。
怖い想像をし、振り払った。
この子が真っ直ぐ育つ事を祈ろう。剣聖と比べたらどっちが多いのか、いつか聞いてみたいものだ。
同じ島にいる剣聖のおじいさんを思い出し、笑って少年の頭を撫で回した。
フィーシは困り顔をしていた。
あまり触られて精霊を見られたら…と。
そっと身体を離すとお姉さんは何かを察して手を引っ込めた。
フィーシ:「あの、撫でられるのは嫌じゃ無いんですけど…。」僕が言い澱んでいると、お姉さんが笑った。
魔術師:「ごめんごめん、他の人に見られたりしたら恥ずかしいよね」
優しい勘違いをしてくれた魔術師さんに感謝した。
フィーシ:「魔力そうさってなんですか?」
魔術師:「魔力を好きに動かす事だよ〜溜めたり〜放ったり!」
僕はなんとなーく分かったが、どうやっても指から火を出せる気はしなかった。
魔術師:「君の場合はまず、ゆっくりでも良いから魔力を動かすところだね〜。本当は私が動く感覚を教えたかったんだけど…私じゃ無理みたい。」
お姉さんは少し申し訳無さそうに笑った。
魔術師:「自分で魔力を自覚して練習する方法ならあるけど、やってみる?」
僕が困った顔をする前に助け船を出してくれたお姉さんに、僕は再び感謝した。




