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精霊達の箱庭  作者: ヒヨコの小説家
1章 大きな過ち、小さな一歩

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第二十話 とある研究者-暗黒大陸誕生篇⑤

 侵攻は早期こそ上手く行っていたが、途中から旗色が大きく変わったらしいとの事だ。

 侵攻すればする程人間側の魔法は弱まり、一部の強者により戦線は保たれているものの、遅滞戦により人命をすり減らしているとの事。


 …だからこの装置が必要になった…と。

 人命の喪失に比べたら、軽いのだろうな…。と軍上部の思考を想像した。


 かつてのチームメンバー達が中核チームとして招集され、そこに軍から派遣されて来た研究者や勅許研究者が加わった。


 装置開発の遅れや、妨害など許されない環境だ。

 我々には装置開発を止める権限など無いのだ。


 魔力の効率的回収を建前に、魂の保全を第一に考えて元のチームメンバー達と死ぬ気で頑張った。

 頑張らねばどれだけの魂が失われるか、その数を計算したくも無かった。


 単純な設計故に耐久性向上や効率化、大型化はサクサク進んでいく、忌々しい事に集められた研究者は優秀だ。

 人命の損失を減らすという大義と正義に、彼等の目は曇っているのでは無いかとさえ疑った。


 遅々たる私の研究など比べるまでも無く早く実用化は進み、実地試験として大型の魔力回収装置と大型の魔力蓄積装置が、戦場に4機ずつ配備された。


 私を除いた元チームメンバー達や派遣されてきた研究者の一部は、その整備・運用に連れて行かれた。


 ひと段落した開発室は、少しずつ暇な時間が増えていった。

 …時間が少しずつ空く度に、嫌な妄想が頭を支配していく。


 もっとマシな方法で魔力を回収装置を作っていれば…。

 月光から魔力を得る様な、ああいう装置をもっと早く作っていれば、迫る食料問題を魔力で解決する手段があれば。

 侵攻しなくて済んだのでは無いだろうか、こんな忌々しい装置が使われず済んだのでは無いだろうか。


 私が生まれた時から頑張っていれば、その役に多少は立てたのでは無いか。こんな悲劇を生み出さずに済んだのでは無いか。


 平和や繁栄を求めて作ろうとした装置は、魂を脅して敵を討つ道具に成り果てた。

 共に明るい未来を見て、努力した仲間達はその手助けをさせられている。


 私の怠惰が、私が生まれてきた事が、全ての間違いなのでは無いか。



 私が食堂で、俯き、ただただ沈んでいると女性が話しかけて来た。

女性:「本当に嫌だよね、戦争も軍事利用も」


 誰だこいつは…私なんかに話し掛けてどうしようというのだ。顔を見上げると、どこか見知った顔があった。


女性:「そんな顔にもなるよね…アレス」

 目尻が赤い彼女は、隈と涙と無精髭で汚れた私の顔を見て名前を呼んだ。


 …ああ。魔力を蓄積する装置を作り、月光から魔力を回収する装置まで作った天才様だ。

 私の同期で、一発で勅許研究者になった天才様だ。


 私みたいなゴミが居なければ、自分の装置を軍事利用されなかったかも知れない…被害者だ。


アレス:「本当にごめんな…エルピダ…。お前は素晴らしいものを作ったのに……私…私なんかの所為で…」


 涙で視界が歪む中、彼女の顔がやつれているのが分かった。

 回収装置だけでは無く、蓄積装置だって大型化が進められている。彼女もまた軟禁状態なのだろう。


エルピダ:「そんな事は無い。誰だってより良いものを作ろうとしただけ。 貴方が居なければ、私は私の作ったもの達だけで、今回の戦争に参加させられたに違いないよ」


 戦争なんて無ければ良い。そりゃそうだ、誰だって殺したくも殺されたくも無い。

 軍事利用なんて無ければ良い。そりゃそうだ、誰だって自分の平和な研究を人殺しなんかに使われたく無い。


 だが現実に戦争は起きる。発端は生きる為か摩擦か欲か…だが大抵は生きる為、安全の為だ。

 安全を確保する為にモンスターを狩り、安全な場所に住んで数が増えて、更に安全な場所が必要になる。


 技術がどう進歩しようが、最終的には生存の為に争いは起きるのだ…。

 分かってはいる…だがやり切れないのも事実だ。


 戦争が嫌ならもっと単純な手がある。間引けば良いのだ。全ての生物が自ら減って、減った数のみ維持すれば争わなくても済むのだから。


 だが、自分や家族を間引かれたい奴なんかそうは居ない。

 間引くのを拒否した生物が世界を支配するだけの可能性だってある。


アレス:「私達は…正しかったのか?」

 答えなんて無い質問を彼女に投げ掛けた。

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