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精霊達の箱庭  作者: ヒヨコの小説家
1章 大きな過ち、小さな一歩

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第十九話 とある研究者-暗黒大陸誕生篇④

 実験の成功なんて、既にどうでも良かった。

 皆、神妙な面持ちで聖女様の次の言葉を待っていた。


 どれだけの時が過ぎただろう。1分?5分?いやもっと短いのかも知れない。

 緊張と不安の空気が流れ、口の中で舌が水を欲しがり動き始める頃。聖女様は再び口を開いた。


聖女:「この装置は確かに、魂を崩壊させず魔力を抽出・蓄積出来ています。 しかし、この装置を動かす為には結局命が奪われる必要があるのです。 そしてこの装置に無理矢理囚われた魂は…怯え、苦しみ、死霊になるか滅ぶかの二択を迫られる」


 聖女様は険しい顔で言葉を紡いだ。

聖女:「皆さんには分からないかも知れませんが、この装置から出たとしても魂は衰弱しきってしまいます。 魂が壊れるギリギリまで、死霊の残滓に囲まれた空間で、助かる道すら無いまま恐怖するのです。」


聖女:「貴方方は想像した事がありますか? 狭く暗く息苦しい場所に閉じ込められ、身体の体温が奪われ、誰にも発見されない様な場所で死んでいく命の気持ちを」聖女様は一呼吸を置いて、すぐに次の言葉を並べていった。


聖女:「貴方達は想像出来ますか? 生前の恐怖はそのままに、精霊様達に助けを求める事も出来ず、仲間同士助け合う事も自らの意志すら剥奪される。外に居る人間達のミスでこの世から消えるしか無い魂の絶望を」


 当然、研究者達の誰もがそんなものを正確に想像する事は出来なかった…。だがそれでも、時間が経てば経つほどに増える頬を伝う涙は止まらなかった。

 こんなもの存在してはいけない。私達は何を研究していたのだ。


 あっという間に魂を消耗させ、崩壊させる。こんなおぞましい装置をもう二度と稼働させる訳にはいかない。

 中の魂が小動物かモンスターかなんて関係無い、苦しまなくて良いものを必要以上に苦しめ続ける免罪符なんて存在しない。


 …自分達は…特に自分は…既に幾度もこの装置を使って魂を脅かしてきた。

 生まれた死霊達や消えていった魂達は、私をこの装置に入れたいだろうな…。そんな自分の結末を、私は想像していた。


 研究者一同、聖女様に感謝をお伝えし、この様な装置は二度と使われない様にする事をお約束した。


 私は魔力も、成功も、自分の行く末すらもうどうでも良くなっていた。


 私はチームリーダーとして、最後の仕事を始めた。私の所為で生まれた犠牲をせめて無駄にしない様に、この実験の顛末をまとめ研究開発の中止と、この様な禁忌の装置の解体、永久凍結を嘆願した。


 私は機関に休暇を願い出た。しばらく、休みが欲しくなったのだ。


 機関は私の嘆願と休暇の申請を受諾してくれた。


 …しばらく、本当に誰とも関わらなくなった。

 目を閉じる度に、苦しめた魂達の事が頭をよぎる。

 夢を見る度に、あの忌むべき装置に入れられる夢を見る。


 あの忌むべき装置は…私が作ったのだ…。作り出してしまったのだ…。

 逃れようの無い事実が、私の魂すら蝕むように感じられた。


 どうしてこんな事になってしまったのだろうか。


 私が次に機関に戻った時、魔力回収装置の実用化と軍事転用を命じられた。

 大慌てで上司に駆け寄り、撤回を求めた。


 上司は、筆舌に尽くし難い苦悩を帯びた顔を横に振った。

 "軍からの命令"なのだと、私が研究に明け暮れていた間に、引き篭もっていた間にこの国は水の大陸への侵攻を開始していた。


 "私がやらなくても"他の人が行うだけだとすぐに分かった。

 私からはもう、乾いた笑いすら出なかった。

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