第十八話 とある研究者-暗黒大陸誕生篇③
眠れない日々が続いたが、研究への没頭のお陰で酒は辞めていた。
月夜に癒しを求めて照らされていると、死霊モンスター対処に使用した魔力の回復がほんのり早まる。
…?そうだ、早まるのだ…。
魔力が枯渇していればいる程、私達の身体は魔力の回復が早まっていく。
自然にいる精霊の加護の影響が結果的に高まるから、回復力が高まると様々な文献には示されていたが…。
ずっと回復だと思っていたし、気にも留めない差だが…。もしかして我々は常に魔力を吸収している…?
あの小動物達は魔術なんぞ使ってはいない。つまり、枯渇している訳では無い筈なのだ…。
彷徨う魂は、眠りにつけないと魔力を吸う…。眠れず酒を飲んでいた私と変わらんな、と軽い一人苦笑いが溢れた。その後はっと気付いた。
魂は…ストレスの様なものを感じているのかも知れないと思い立ち。私は机に向かい仮定を元に推論を始めた。
ストレスが嫌で防衛本能として魔力を吸い…死霊モンスターへと変化しているのだとしたら…魂は元々死霊モンスターになるのが普通とも考えられる。
魂の崩壊も、ストレスに耐え切れず壊れたと考えれば合点がいく。
過去の実験では誰がどうやって崩壊を観測したのだろうか、疑問は湧くが終わった後で調べよう。
ストレスが無くなれば酒は辞められる、魂も魔力の吸収を辞め、崩壊も止まるかも知れないな。
問題は魔力を吐き出させる方法だが…どうしたものか。それに吸収量も違うから崩壊を防げたとしてもタイミングが分からない。
推論の中ですら壁は立ちはだかってきた。しかしそれを嫌がるものは研究者などに最初から成れない。
次の日、推論を発表し実験を始めると驚くべき事が分かった。試しに短時間、魂を死霊の箱に閉じ込めてすぐに魔力蓄積装置に繋げると、なんと微量だが魔力が蓄積されたのだ。
こんな短時間かつ少量で崩壊などしているのだろうか?数回のみ試して、量は違えど毎回同じ様な結果が出た為、実験を中断してチーム総動員で魂崩壊の観測方法を調べ始めた。
なるほど…これは厄介だ…。観測方法は教会の協力を得ていて、死霊モンスター発生の対策法を見つける為に行われていた。
こんな魔力の抽出の為だけに、悪戯に死霊モンスター発生の危険を冒す装置…ダメだ教会が許す気がしない。
せめてモンスター化の発生率を0か極僅かにしなければと話していると。その場いるほぼ全員が顔を見合わせて気付いた。
連続して実験をすると、明らかに死霊モンスター発生率は下がる。ならば中に複数の魂を入れて魔力の奪い合いをさせれば、モンスター化出来ないのでは無いか?
むやみに魂を消費したい訳では無かったので、それまでは複数の魂を同時に装置内に入れたりしていなかった。
過去の連続実験データから、この装置における安全圏は3体の小動物で充分との推定が行われ。
万一に備えて4体の小動物を死霊箱に入れ、毒を注射して放置する実験は行われた。
死霊モンスターは発生しなかった。
そして、箱の中にあった魔力を吸い尽くしたかの様に2回分以上の魔力が蓄積された。
建前を考えるのは機関上層部に丸投げする事にして、教会への協力要請を嘆願した。
数週間経ち、教会から聖女と聖女を守る教会騎士達が派遣されてきた。
まさか聖女様がいらっしゃるとは思わず、全員ガチガチに緊張しながら応対をした。
無様な応対にも関わらず、聖女様は和かに微笑んでくださり、皆の緊張も解れていった。
装置の説明と実物を見せたところで、聖女様が一瞬冷たい目を見せた気がした。
すぐ元の目に戻ったので、気の所為だろう…。と自分自身を誤魔化し、許可の下で実験を行なった。
4体の小動物達を死霊箱に入れ…今回は魂が崩壊しない様にかなり早めに魔力蓄積装置に繋いだ。
聖女様は悲しい顔を浮かべながら言葉を述べた。
聖女:「実験は…成功です…」
何故その様な悲しい顔をなさるのか、皆理解出来ず喜べなかった…。




