第十六話 とある研究者-暗黒大陸誕生篇①
私は自分が優秀だと思っていた。
小さい頃から大抵の事はすぐ出来たし、努力しなくても人並みかそれ以上に、努力したら周りを圧倒するくらいは出来た。
人付き合いは苦手だ…途中から私は自分の空間に閉じ篭りがちになり、勉学はほどほどに日々をだらけて過ごした。
一人だけで目の前の事に向き合いたい私は研究者を目指して勉強し、特に苦労せず3級・2級の基礎試験をクリアしていった。
周りで試験に落ちるものも沢山居たが、正直努力しなかった言い訳でもしているのだろう。くらいに考えていた。
1級試験を無視して、研究者の最高資格である国家の勅許研究者を志した。まあ何とかなるだろう…と。
そんなに甘くは無かった、天才達は一発で合格し、どんどん先に進んでいく。
自分は努力の仕方すら下手で、置いていかれるばかり…6年の勉強を経ても結局受かる事は無かった…。
2級でも、研究機関に所属して飯くらいは食える…。私はこれ以上周りに負担を掛けない為にも働き出した。
人付き合いが苦手で、失敗もするし、努力もあまり出来ない…勅許研究者を目指しているという面目すら潰れていった。
私は…自分の何が優秀なのか分からなくなっていた。まともに働く事すら、出来ていないのでは無いか、下らない疑問や無意味なプライドばかりに脳が支配されてるだけなのでは無いか。
かつての友人達は勿論、自分の上司である勅許研究者と同じ目線に立つ事すら…諦めた。
研究なら一人で出来る?分担や進捗の管理、報告、相談。どこが一人で出来るのだろうか。
人付き合いが苦手?それを言い訳にどれだけの努力から逃げてきた…。私は自分に人並み以下の烙印を押した。
同じ研究機関に勤めている同年齢の勅許研究者が…素晴らしいものを開発したらしい。
概要を聞いただけで、とんでもないものだと分かる…。
魔力を溜めて好きな時に取り出せる装置だ…。
これの大型版を作り自在に使えれば、一人の人間ですら精霊様と同等の魔術が行使出来るだろう。
自分は何だ…?ただ日々の研究のレポートを書き、まとめるだけ…。何もかもが違う、何もかも…。自分が天才でも秀才でも無い事は知ってはいたが…あまりにも…。
腐っていく自分を酒に酔わせ、泥の様に眠る日々が続いた。自分程度では国王様や精霊様…どころか誰の役にも立てはしない。
別に自分じゃ無くて良い…。自分がやらなければ回らない事なんか無い。そんな風に日々を過ごしていた。
ある日、天啓が舞い降りた。
あまり倫理観のある方法とは言えないが、昔の関係資料を読み漁り、魔力蓄積装置と合わせれば利用可能かも知れないと思った。
魔力問題が解決すれば、昨今問題になってきている人口増やモンスターによる人的被害などを解消出来るかも知れない。
私は度々寝食も忘れ、死霊に関する実験や資料読み込みに没頭した。
何度も失敗をし、スケルトンという低級の死霊モンスターを生み出しては消していった。
そして遂には完成させたのだ、自らの力で。
人やモンスターは死後、眠りにつく。
魂は様々な情報や感情を持つが、精霊様達の魔力の影響で、眠りについた魂は少しずつ浄化される。
そしていつの日にか1匹の精霊として蘇るのだ。
逆に眠りにつかせないとどうなるか?
魂は彷徨い、周囲から魔力を吸い、ある程度溜まると地からスケルトンやゾンビとして生まれる。
最初から魔力を持っていた魂などは、場合によっては上位種として生まれ出ずる。
もし魔力が足りないまま魂が崩壊してしまうと、溜めていた魔力は霧散していく。
この吸収と霧散を活用して、魔力蓄積装置に魔力を溜めるのだ。
幸いにも、霧散した魔力は精霊が運用可能だった為、思っていたよりすぐに形にできた。
こうやって、私は魂を犠牲にした魔力回収装置を完成させたのだ。
魂を崩壊させまくる装置、凶と出るか狂と出るか。




