第十二話 精霊に好かれた子供②
僕はどうして、レオ君に精霊様の話をしたんだろう。
他人に精霊の話をしなければ、こんな事にはならなかった。てきとーに話をしていれば良かったのだ。
…多分ウルスス君の所為だ。彼があまりにレオ君の事を仲良さげに色々話していたから。ついレオ君と自分が仲良しだと、勘違いしてしまったのだ。
思い返してみると悪い事を言ったし、余計な事を言ったのは僕の方だと分かった。
僕はバツの悪そうな顔のまま、レオ君を見上げると泣きそうな困った様な顔が見えた。
フィーシ:「レオ…君は、ウルスス君の友達なんだよね…?」
これ以上余計な言葉を吐かない方が良いのに、僕は言ってしまった。
驚いたレオ君の視線はティアの方に向いたが、僕が話を続けた。
フィーシ:「昨日、ウルスス君が来たんだ」
言葉選びは大丈夫だろうか。僕はどうしたいんだろうか。
レオ:「いや、ウルススは昨日朝からずっと一緒で…その後は…」
レオ君の声色が震え始めた頃、罪悪感を強く感じ始めたが、だからこそ言葉は続けなきゃいけない。
フィーシ:「うん…その後亡くなったウルスス君をティアが…氷の精霊が連れて来てね…。 レオ君の話をしてくれたんだ。」
レオ君の顔は歪み、それでも目線を外さずに聞いてくれていた。
フィーシ:「本当にごめんって謝ってたよ。もっと早く逃げていれば、もっと上手く出来ていたら、柵なんか越えなければ皆を悲しませる事なんかなかったのにって。」
気付けばティアはどこかに居なくなっていた。
僕は泣きじゃくるレオ君からそっと手を離し、少し離れた場所で考え込んだ。
僕は何がしたいんだろう…。レオ君が心の中で自分を責め続けていたのが見ていられなかったのだろうか…。
亡くなった人は帰って来ないし、本人には真偽の分からない言葉を投げ掛けてどうするというのか…。
僕は膝に顔をくっつけて、声を殺して泣き出した。泣きたいのはレオ君の方だ…と思いながら。
どのくらい経っただろう。涙だけは止まったが、悲しみや後悔はこれっぽっちも消えない。それなのにお腹は空く…。
見上げるとレオ君は泣き止んでいた。僕が泣き止むのを待っていたみたいだ。
レオ:「ありがとうな…。教えてくれて…」
彼の振り絞る様な声が聞こえた。
少しだけ、お互いの事が分かった気がした。
一緒に食事を摂った。気まずかったし、言葉は交わさなかったが。
食べ終わってしばらくした後、ティアが戻ってきた。
ティア:「あ、ご飯まで食べ終わってる」
ティアは少し残念そうに、でも二人が泣き止んでほっとしてる様にも見えた。
僕がティアに視線を移すと、レオ君も目線の先を追った。僕は何も言わずに手を差し出し、レオ君も静かに手を取った。
ティア:「あー…ウルスス君はきちんと土の大陸の方に帰ったみたい。きっと向こうで土の精霊様達が良い方に扱ってくれるわ。」
レオ君はそっか…と少しだけ嬉しそうに声に出した。
レオ君はゆっくりと、ウルスス君の話をし始めた。
レオ:「ウルススはね…粗雑で力も強いし手加減も上手く出来ないんだ。でも真っ直ぐで、お父さんに肩車されて家に帰ったりするのが大好きで…僕はいつも羨ましかったよ。」
レオ君はそれから言葉を吐き出し続けた。誰かに聞いて欲しかったのかも知れない。誰かに知って欲しかったのかも知れない。
ウルスス君が、いつも引っ張ってくれた事。泣いてたら背中を叩いて励ましてくれた事。誰かを、皆んなを守れる戦士になりたがっていた事。
気が付けば皆泣いていた。枯れた筈の涙が溢れていた。
それでも、泣き終わった後は皆スッキリした顔になった。
レオ:「ティア、死んだ後…魂はどこに行くんだ?」
レオは、家に来た時よりずっと良い顔色で真っ直ぐティアに質問した。
ティア:「え…とね…、魂は自分の行きたい場所に…行ってね…。そこで眠って…いつか精霊になるの…」
ティアはまだ泣いていたようだ。




