第十一話 精霊に好かれた子供①
僕は生まれた時から精霊が見えていた。
土の大陸らしい場所に居た時は、チラホラ黄土色や茶色の精霊が飛んでいた。
彼等は僕が視線で追っている事に気付くと、驚いた様に動き、話し掛けてきて。退屈しないように代わりばんこに側に居てくれた。
だから僕は、あまり泣かない赤子だったんだと思う。
水の大陸に移り住んでからは、土の精霊はほとんど居なくなり、薄い水色から青色の精霊が偶に居るくらいだった。
水の精霊達は僕達にあまり興味が無さそうだったが、一人だけ僕に関心を示してくれた子が居た。
僕がスイと名付けたその子は、ずっと側に居てくれて友達になれた。
難しい言葉は分からなかったし、僕はそんなに話せなかったけど、スイは色々な事を教えてくれた。
周りの人が慌ただしくなり急に馬車に乗せられ、苦しみや怨嗟や混乱の混じった声があちこちから聞こえ始めた時、僕はスイと離れ離れになってしまった…。
馬車に居る間、姿は見えないがずっと聞こえてくる声が怖くて耳を塞いでいたが、お母さんにはずっと聞こえていたのだろう…。
だからきっと、僕よりずっと怖かった筈だ。僕より早く、声が聞こえなくなるのが分かった筈だ。
この島に住み始めて、この村に来るまでは精霊達は滅多に見えなくなっていた。そんな中で仲良くなったのが氷の精霊のティアだ。
精霊にも性格があるんだなぁ。と思いつつ。精霊様がここにも居る事を両親に伝えると、一瞬喜色に顔が染まったが、氷の精霊である事を伝えたら表情が固まった。
両親の話によるとこの世界には四精霊様が居るらしい。火・水・風・土の四つで、氷は無い。
そして僕達に加護や恩恵を授けてくださるのは土の精霊様で、土の精霊達以外は人間に手を貸してくれる事は無いそうだ。
ティアにも聞くと概ね間違って無いらしい。ただ氷の精霊様は居るし、知らないだけで他にも居るかもとの事だ。
氷の精霊様は若く、力もそんなに無い上、精霊の数も少ないのでこの島にはあまり魔力が満ちておらず強い生物も少ないらしい。
四精霊はこの島にも来たりするが、土の精霊は特に少ないとの事。
僕はこの話を誰かにする気が無くなった。そして精霊が見える事や話せる事は、両親以外には隠す事にしたのだ。
それから僕は、ティアとばかり話をして他人とはほとんど口を利かなくなっていった。
昨日は久しぶりに他人と話した。ティアがウルススという少年?を連れて来たらしいのだ。
姿も形も見えないウルススは昨日死んでしまったらしい。
声だけは聞こえるので、ティアと三人で話していると後悔や思い出話、特に幼馴染と家族の話題が多かった。
家族はとても優しく、何も返してあげられなかった事。レオ君という幼馴染は泣き虫で、でもいざという時強さや優しさが見える事。
悲しそうに、悔しそうに、少し楽しそうに、沢山話してくれた。
ご飯を食べてからもずっと話していると、夜遅くなっていた。お母さんに言われて寝ようとする直前に、土の精霊が来てウルススを優しく連れて行った。
結局、どこに連れて行かれたのか?といった疑問をティアにしていたらかなり遅くまで話していたみたいで、叱られて寝た。




