第十話 残された子供③
"フィシー手を退けて!"
光が強まったり弱まったりしながら、光の塊は手から逃れようとする。
僕は混乱していた。白っぽくなっていた自分の腕は血を流す毎に赤みを増し、普段の色に戻っていくのが見えた。
そしてフィーシの濡れた目を見て、手を離した。
レオ:「ご、ごめん…」溢れた言葉はそれだけだった。
今度は僕もが、フィーシと目を合わせられなくなっていた。
多分、理由は二人とも違うが。
視線を落とし瞬きを何度かしていると、視界の端に透明な塊が見えた。
僕が熱いと感じた正体はこれだろうな…。
しゃがんで手に取ると冷たく…溶けていく氷だった。
何を言えば良いだろうか。何から聞けば良いだろうか。それとも、もう関わらない方が良いのだろうか。
時間に解決を求めるかの様に思考は大して進まない。
レオ:「ごめんねフィーシ…その子が何か危険なものなんじゃ無いかって、無理矢理連れ出そうとしたんだ。」
目線を上げ、居なくなっていた光の塊に視線を戻しながら声を発した。
フィーシ:「この子は精霊だよ…。見ての通り…」
フィーシは未だに手で何かを抑えていた。見えないだけで居るのだろう…。
ずっと僕には見えなかっただけで、あの部屋に居たのだろう。
レオ:「二人ともごめん、驚かせて。痛かったよな…」
自分の右腕と同様に赤く染まったフィーシの左腕を見て、胸の内がざわついた。
フィーシが右手でゆっくりした動作で僕の右手を優しく取ると、目の前にさっきの光の塊が見えた。
見ていると不思議な事に恐怖は薄らいでいく。
光の塊:「私もごめんね、痛かったよね…。」
バツの悪そうに謝る…精霊?に大丈夫だよ。と返した。
フィーシの左手と、精霊?が傷口に近付いていった。すると痛みは引いていき、血の流れた痕を残して傷が消えていく。
傷口が消えた事、フィーシの友達が精霊な事、氷の塊の事、聞きたい事は沢山あった。
自分の左腕を治しているフィーシを見ながら、僕は口を開いた。
レオ:「その子は何の精霊なの?」
フィーシが僕と精霊に視線を合わせ、何も話さずに居ると。
精霊?:「氷の精霊だよ。さっき拾ってたじゃん」
聞く相手を間違えた。人と話す事はあっても精霊と話した事は無かったからな…と自分を慰めた。
氷の精霊:「なんでずっと一緒に居たのに逃げ出すかな〜」ふわふわとした動きで、精霊は飛んでいた。
レオ:「そりゃ、急に見えたから…」
仕方ないじゃん。とは言わなかった。
今度バツの悪そうな顔をしたのはフィーシだった。
フィーシ:「僕に触ってるとね、精霊達の声が聞こえたり姿が見えたりするんだ」
少し変わった子…なんて朝に言われた気がしたが。どこが"少し"なのか問い詰めたくなった。
フィーシ:「驚かせるし、怖がらせちゃうし…期待させちゃうから…本当は誰かに触っちゃダメなんだ…」
フィーシの手が震えてるのが感じ取れた。
氷の精霊:「フィシーは悪くないよ。無茶な期待をしたあいつらが悪い」
どんな期待なんだろ…。
レオ:「驚いたけど、別に怖くは無いな…うん」
傷口は浅かったし、攻撃?には悪意や敵意では無くフィーシを守ろうとした意志が感じられたから。
精霊ってタイトルつけといて、十話目でようやく出てくる精霊。




